長谷川町蔵 大和田俊之 『文化系のためのヒップホップ入門』

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文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
長谷川町蔵 大和田俊之
アルテスパブリッシング
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カルチャー系のライターと、アメリカ文学の研究者が対談方式でヒップホップについて語った本。「ヒップホップは音楽のジャンルではなく、ゲームの形式」という視点から、ラップでなにが歌われているのかがわからないからヒップホップが聴けない、みたいなリスナーに向けて、それを楽しむための予備知識をあたえてくれる。これはいわば、ヒップホップをテクストとして読み、解読するための指南本とも言える。同種の本に石野卓球と野田努がテクノについて語った名著『テクノボン』がある。あと、ブラックミュージックについて語った本、という雑なジャンル分けをしたら、松尾潔による著作『メロウな季節』『メロウな日々』と重なる部分も少なくない(もっとも、松尾による著作は、音楽 = テクストとして読むための指南書ではなく、音楽をストーリーとして享受するためのスタイルについて書かれたものだと思う。とてもメロウなやり方で)。

『文化系のための……』も良い本なのだが、個人的にハマらない部分があって、それはわたしが音楽をテクストとして捉えて、なにかを理解しようという態度から離れてしまっているからなのかもしれない。

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白洲正子 『きもの美: 選ぶ目 着る心』

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きもの美 (知恵の森文庫)
きもの美 (知恵の森文庫)
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白洲 正子
光文社
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妻からのオススメ本。着物に関する歴史や技術、そして着るセンスについてのあれこれ。人からセンスを憧れる文化人はいろいろいるけれど、「ホンモノ(あるいは伝統)を大事にしているタイプ(その導入が早すぎてスゴい人)」と「いろいろあって独自のセンスが尖りまくってカッコ良い人」に二分できる気がする。前者には伊丹十三がいて、後者には北大路魯山人や本書の著者、白洲正子がいると思った。

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速水健朗 『東京β: 更新され続ける都市の物語』

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東京β: 更新され続ける都市の物語 (単行本)
速水 健朗
筑摩書房
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東京のさまざまな街を舞台に描かれたフィクションを、歴史的な事実と照らし合わせることで、そのフィクションが街に投影する意味を探る本。

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新しいヘッドフォン買いました日記(JVCケンウッド HA-FXH30)

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ホントに恐ろしい正確さで1年と2、3ヶ月でヘッドフォンのコードを断線してしまうわたしだが、例によってまた断線させたので新しいのを購入した。JVCケンウッドのHA-FXH30。前回購入したHA-FXH20の上位機種にあたる。前のを購入した時は、FXH20とFXH30の価格差が2000円ぐらいあったのだが、リリースから1年半ほど経った(まだこのメーカーの1万円以下価格帯モデルでは最新機種)せいか、価格差が500円程度になっていた。

このメーカーの同一価格帯モデルはこれで4機種目となるけれど、毎度、コスパが良すぎてびっくりする。コードをすぐ断線させてしまうので、高価なモノは買いたくない、けど、そこそこ良い音で聴きたいユーザーには、猛烈にオススメしたい。FXH20とFXH30の違いは低音の出方。後者の方が低音に厚みがある。あまり低音がでるのは好きじゃない、という人はFXH20を選ぶべきだろう。正直好みの問題なので、500円余計に出すと良い音にありつけるわけではない。

使用上の注意点は(前回FXH20を購入したときにも書いたけど)、ゴムのイヤーチップのサイズが自分の耳の穴にジャストフィットさせないと、低音がカッスカスのヒドいものになること。

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ウラジーミル・ソローキン 『氷』

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氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)
ウラジーミル ソローキン
河出書房新社
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ソローキンと言えば、ひたすら卑猥な言葉の連続があったり、残酷描写が強烈すぎたり……ととにかく衝撃的な作風の小説家、という印象があるのだが、「氷三部作」と題されたトリロジーのうち1番最初に発表された『氷』を読んで、また印象が変わった。本シリーズについては、作者自身がスタイルを変えて、マジで小説を書いてみた的なことを言っているのだが、これまで読んだなかでは最も小説らしい、と思うし、かなり読みやすい。例のごとく暴力やセックスはかなりふんだんに盛り込まれているけれど、ものすごくちゃんとしている。少なくとも普通に線的に読んでいけば、物語でなにが起きているのかは、把握できる。

まぁ、魅力的なのは、本作の語り口ですよ。謎の3人の人物に拉致されたと思わしき2人の人物が、気に縛り付けられて、氷でできたハンマー(これが物語のなかで非常に重要なアイテムとなる)で胸を殴られる……というシーンからはじまるのだが、どういう話なのかさっぱりわからないのだ。とりあえず、暴力的だし、ソローキンっぽいな! とは思うんだが、小説のなかでなにが起きていて、氷のハンマーとかなんなのよ、みたいな感じになる。ただ、なんかあるんだな、という引きがものすごくて、読みながらグイグイと引っ張られる。このわけわからん話を読ませる力はスゴいな、と思ったね。ソローキン、これまではものすげえ変化球投手だな、と思わせといて、実はものすげえ速球も持ってるのかよ、みたいな驚きがあった。

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村上春樹 『村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン』

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村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)
村上 春樹 大橋 歩
新潮社 (2016-04-28)
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雑誌『an・an』で連載されていた村上春樹のエッセイ集を読む(このシリーズ、1・2巻を持っていた気がするんだが、我が家の本棚になかった。人に借りて読んだのかな?)。一本がとても短いので、ホントにサクッと読めてしまう。そして、毒にも薬にもならない。掲載媒体を考えているのか、ちょっとこのシリーズの村上春樹って、かわい子ぶってるよな、と思ってしまった。ジジイの年齢なのにね。

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ジョナサン・コット 『スーザン・ソンタグの『ローリング・ストーン』インタヴュー』

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スーザン・ソンタグの『ローリング・ストーン』インタヴュー
ジョナサン コット
河出書房新社
売り上げランキング: 78,487
わたしはスーザン・ソンタグの良い読者ではない。けれども、書店で見かけた本書の、アメリカの国旗をあしらった装丁にはとても強く惹かれるものがあった(人によっては楳図かずおを想起するかもしれないが。装丁は佐々木暁)。めちゃめちゃ書店で目立っていたし、これは自分ちの本棚に置いておきたくなるデザインだ。かっけえ。

1979年に一部が『ローリング・ストーン』誌に掲載さらたソンタグへのインタヴューの完全版が本書。改めてこの批評家こそが、ポップなものと、ハイソなもの(サブカルチャーとメインカルチャー)を分け隔てなく語り始めた人だったんだな、ということがよくわかる内容となっている。メインとなるテーマがあるわけではないし、内容は雑多、というか、散漫とさえ言えるかもしれない。

それに、ソンタグの入門書にでもないし(批評家の入門とは? という感じでもあるし)そして、ポップもハイソも、サブカルチャーもメインカルチャーも境界線が特別存在しないように思われる現代において、ソンタグのような批評を読む意味ってなんだろう、と思わなくもない。

ポップもハイソも分け隔てなく、と言いつつも、それはめちゃめちゃにハイソな人がポップなものも扱ってる、なんというか、偉い人が民草の世界に降りてきてありがたいことを言ってる、っつー感じはあって。そういうのは現代においても有効ではあるのだけれども、でも、ドストエフスキーも読むけど、ドアーズも好きよ、みたいな態度って、すっげえ今や普通じゃん。ベンヤミンも読むけど、デヴィッド・ボウイも好きだし、BABYMETALも好きよ、みたいなさ。

まぁ、でも面白いよね。パティ・スミスやテレヴィジョンをCBGBでリアルタイムで聴いて、ひたすら本読んで、ひたすらなんか書いてる人。今やありふれてるけども、6o年代・70年代にそういう人がいたことを確認することは、単純に、面白い、と思った。ソンタグの語り自体、曖昧で「◯◯は実は△△だ!」みたいな意味を言い切ることって全然してなくて、つねに「◯◯は△△、と読めるけど、別な見方もできるよね」とひたすら言い切らないんだ。言い切らないし、なにを言ってるかよくわからない部分も多々ある。

すっげえわかりやすい読み解き、のほうがやっぱり人気あるじゃん、いま。だから、この言い淀み体質っていうか、あくまで、そういう読みでしかないっすよ、っていうモヤモヤスタイルが良い、って感じる部分もある。

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ロバート・ウォルク 『料理の科学 1: 素朴な疑問に答えます』

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料理の科学〈1〉素朴な疑問に答えます
ロバート・L. ウォルク
楽工社
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アメリカの化学の先生が、食品をめぐる素朴な疑問(たとえば「魚はなぜ、生臭いのか?」だとか)にひたすら答える本。帯には「「なぜ」がわかれば、料理はもっと楽しくなる!」とあるけれども、個人的に、それはどうだろうか、と思った。むしろ、気づかされるのは、なぜ、つまり、料理だとか食品をとりまく原理的な世界と、実際に料理を味わう感覚的な世界は、完全にリンクしないのではないか、ということだ。料理にまつわる俗説・通説の数々を本書は「(化学的には)実は意味のないもの」として説明しているのだが、感覚的な世界、舌の世界では「意味」が発生してしまう。

たとえば、塩について扱っている部分。著者は「挽いた瞬間に揮発性の高い香りの成分が飛ぶコショウとちがって、塩は挽きたても、挽いてから時間が経っていても、基本的には同じもの。味に変化はないハズ」というようなことを書いている。「へぇ、そうなんだ〜」と多くの人は思うだろうけれど、でも、挽きたての塩のほうが「ありがたい」と感じる気持ちは変わらないんじゃないか。つまり、化学的には同じ物質であっても、挽きたての塩と、そうでない塩は、別なものとして我々の感覚を刺激するのである。

そういう意味で、本書における化学的な説明は、料理の文化的な側面にまったく触れずに、そのまったく触れないものを際立たせているように思われる。我々は化学的に説明可能な物質を食べているのではなく、化学では証明できない意味を食べているんだな、とか思うんだよ……とやや批判的な調子で、本書を紹介したが、へー、みたいなトリヴィア知識は満載で、とても勉強になった。これまで勝手に思い込んできた誤解が解ける記述(赤身の肉の赤は、血の赤じゃない! とか)もたくさんある。化学の知識がなくても全然読める。

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いとうせいこう 『ボタニカル・ライフ 植物生活』

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ボタニカル・ライフ―植物生活 (新潮文庫)
いとう せいこう
新潮社
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ずいぶん前に友達に勧められていたのだが、読めていなかった本(最近ドラマ化されていたそうで、文庫本も復刊されていた)。「植物生活」というサブタイトルどおり、著者がベランダであれこれ植物を育てる「ベランダー」の営みを綴っている。かく言うわたしもここ数年、ベランダで野菜や果物、多肉植物を育てるベランダーなのだった。
Masatake Konnoさん(@mk_sekibang)が投稿した写真 -

Masatake Konnoさん(@mk_sekibang)が投稿した写真 -
同じベランダーとして本書の記述は共感できるものが多かった。とくに「ベランダにやってくるもの」、「ベランダに連れて帰ってくるもの」という感じ。で、植物を枯らした時に、命が去っていく感覚、みたいなのが書かれていて、ああ、わかる、と思った。

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カルロ・ギンズブルグ 『裁判官と歴史家』

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裁判官と歴史家 (ちくま学芸文庫)
カルロ ギンズブルグ
筑摩書房
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1972年のミラノでルイージ・カラブレーシ警視が何者かに射殺される。犯行は、被害者が取り調べ中にアナーキストを殺したと主張する左翼活動家や極右主義者による報復かとみなされたが、具体的な容疑者が固まらないまま、16年の時が流れる。そして、1988年。激しく反カラブレーシ・キャンペーンを展開していた新左翼グループ《継続闘争(Lotta Continua)》の元メンバー、レオナルド・マリーノが警察に出頭し、カラブレーシ暗殺に関わったという供述を始めたところから事件は急展開する。

暗殺はグループの指導者たちによって計画・支持されたものだ、というマリーノの供述にもとづき、警察は、殺害を委託した男2人と実行犯の男を逮捕する。このなかに歴史家、ギンズブルグの親友、アドリアーノ・ソフリがいた。ギンズブルグは、この事件の裁判の記録を事細かに読み直し、歴史家として一冊の本を上梓した。それが本書『裁判官と歴史家』だ。

ソフリの無実の主張をギンズブルグが確信するに至ったのは、裁判の記録に残された数々の矛盾である。マリーノによる供述もいたるところにチグハグな部分があり、裁判所で証言をおこなった警察関係者もなにかを隠しているらしい。事件現場に居合わせた人々が裁判所に呼ばれ、証言をおこなうが16年の歳月によって記憶はおぼろげになっており、ハッキリとしない。ソフリが有罪だ、と確定的に示す証拠は明らかに足りていない。にも関わらず、裁判所はソフリに有罪判決として、禁固22年の刑を下す。裁判所がまるでなにかの都合に合わせたかのように証言を解釈し、あらかじめ予告されていたようにも見える有罪判決に、歴史家は自らのキャリアの出発点である魔女裁判を重ねている。

ジャーナリスティックな一冊、としても読めるのだがギンズブルグはただ単に陰謀すら想起させる権力の働きを告発するばかりではない。記録を読み、解釈をおこなう裁判官と歴史家の非常によく似た仕事を比較しながら、両者の仕事に含まれる性格をくっきりと浮かび上がらせていく。そういう意味では、本書も『チーズとうじ虫』と同様に、歴史学の方法論について書いた本として読むことができるだろう。

なお、ソフリは一貫して無実を主張し続け、最高裁まで争ったが(マリーノの主張の矛盾を明らかにする証拠が新たに提出されたにも関わらず)判決は覆らず、2012年に刑期を終えている。

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辻静雄 『うまいもの事典』

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うまいもの事典 <辻静雄ライブラリー2> (辻静雄ライブラリー 2)
辻静雄
復刊ドットコム
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名著『フランス料理の手帖』に引き続き、辻静雄ライブラリーの2巻『うまいもの事典』を読む。魚、肉、野菜、デザート、チーズ、ワインというジャンルごとに、食材の名前が並び、フランス料理を中心とした調理法や歴史的なトリヴィアを紹介している。「この食材ならリヨンにあるレストラン◯◯の△△が絶品だ」とか「これを食べるならワインは◯◯(ハチャメチャに高級なモノ)」とか、あんまり役に立たない、ともすれば、単なる薀蓄大開陳本と受け取られそうだし、まぁ、実際のところ、そうなのかもしれない。「ヴィシソワーズはフランス料理じゃなくて、アメリカで生まれたモノ」とか、「かぼちゃという名前は室町時代にカンボジアから日本に伝えられたところからきている」とか、思わず、人に話して煙たがられたい知識がちりばめられている。

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内澤旬子 『世界屠畜紀行』

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世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)
内澤 旬子
角川書店(角川グループパブリッシング)
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世界でどんな風に屠畜をおこない(つまり、家畜を殺し)、食べているのかを追ったイラスト入りのルポ。屠畜の現場に対する興味に突き動かされているだけでなく「なぜ、日本においては屠畜に関わる人々に対する差別があるのか?(そして、それは他の国にもあるのか?)」という著者の問題意識がこの本の根底を貫いている。屠畜から食文化だけでなくその国の文化全体そして、取材した人々から国に流れている雰囲気のようなものを捉えているのがすごいと思ったし、職業差別の問題から社会構造についてもシャープに描いている。

家畜を殺して食べるのは「可哀想」と考える人たちがいる。多くの日本人は、動物可哀想主義への共感がある、と思う。そういう考え方、理解できるよ、と。でも、多くの人は、わかっていながら、うまい、うまい、と言って、動物の肉を食べている。「どうして可哀想なのに、食べられるの?」と、そのへんのジレンマというか、矛盾した部分を突かれるとみんな答えに窮してしまうハズだ。なかには「家畜は、苦しまないように殺されているから問題がないのだ」とか言う人もいるかもしれないけれど。

ただ、そういう「動物が可哀想」という考えも、数ある文化の一つだということを本書は教えてくれる。家畜を殺して食べるのは、その生命を「活かすこと(活用すること)」だから良いことだ、なにかのためになるのは功徳の一種であって、動物たちにとっても良いのだ、と考える人たちがいる。この動物可哀想主義とは真逆の考え方は、わたしたちの生活を相対化してくれる。要するに動物可哀想、って、動物に対する感情移入であって、動物を人間みたいに扱って考える人間様中心主義のひとつなんだよな。

日本の屠畜現場では、芝浦屠場を取材しているのだが、わたしたちが食べている牛や豚はこうしてお肉になるんだなぁ……すごい技術だなぁ、と大いに感心させられた。名著です。

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