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突然ですがブログ移転します

なんかはてなブログのほうが読みやすいデザインのブログが書けそうだなー、と思ったので こちら に移転します。過去記事とかはそのまま、このブログで読めるようにしておきます。よろしくどうぞ。
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レフ・トルストイ 『アンナ・カレーニナ』

年末年始にまとまった休暇をいただいたので、長い小説を。トルストイの言わずと知れた大クラシック、文庫本3巻で大体2000ページぐらいある大長編なんだけれども、凄まじく面白くて。トルストイ、すげー、と思った。解説によれば、ドストエフスキーやトーマス・マンも「完璧」、「非の打ちどころのない作品」と絶賛したという。わかる。長いんだけど、すげえ読ませるんだよ。不倫や事件、ロマンスの予感が仄めかされると、ちゃんとそのあとに、不倫や事件、ロマンスが起きる。「やだな、やだなー」、「怖いな、怖いなー」と読者をライク稲川淳二にさせるような仄めかし、煽りからの出来事(!)の繰り返しが次から次へと起きて、超面白い。 mstkさん(@mk_sekibang)が投稿した写真 - 2017 1月 3 5:32午前 PST 普段は、こんなメモを取ることないんだけども、あまりに面白くて、このブログを読んでくださってる方々、皆さんに本書を読破していただきたく人間関係をメモってみた。長いので序盤で諦める方いるかもしれないので、この図が役に立つと嬉しい。すげえいっぱい登場人物がでてきて、脇役も非常に愛らしいキャラが多いんだけれども、基本的なキャラクターは第1編に出てくる彼らだけ覚えておけば良ろしい。これプラス、アンナのダンナさんであるカレーニン(第2編から登場)。逆にさらに削るならば、薄く緑でマーカーを引いた、リョーヴィンとキチイ、アンナとヴロンスキーだけでも構わない。 わたしが素晴らしいな、と思ったのがさ、人間描写の巧みさ、細やかさと「悪人」が出てこないところで。この物語がはじまる一番最初のきっかけを作るオブロンスキーも、浮気はするは、大したことない役人のくせに身の丈に合わない散財を繰り返す困ったヤツなんだけれども、根は良いヤツで憎めないんだよね。アンナの夫、カレーニンでさえそう。出世と世間体にしか興味がなくて、愛を知らない冷徹な人物……として描かれて、半ば悪モノなんだけど、そういう正確になったのにも生まれ育ちの環境があって「んー、人にはなんか色々理由があるんだなあ……」みたいな同情を誘うの。 登場人物が敵味方に分かれて戦ってる、とかじゃなくて、一人一人が、みんな、それぞれの善意だったり、ポリシーがあって小説のなかで動いてて。ものすごい群像劇。それをざっくりとまとめる

2016年に読んだ本を振り返る

毎年恒例の振り返りシリーズ。  山本義隆 『磁力と重力の発見』  中川純男(編) 『哲学の歴史〈第3巻〉神との対話: 中世 信仰と知の調和』  アレクサンドル・プーシキン 『エヴゲーニイ・オネーギン』  谷川健一 『青銅の神の足跡』  ロード・ダンセイニ 『最後の夢の物語』  菊地成孔 『レクイエムの名手: 菊地成孔追悼文集』  平山昇 『初詣の社会史: 鉄道が生んだ娯楽とナショナリズム』  村上春樹 『女のいない男たち』  鈴木宣明 『図説 ローマ教皇』  梅原猛 『梅原猛著作集(4) 地獄の思想』  『集英社ギャラリー「世界の文学」(12) ドイツ3・中央・東欧・イタリア』  金井壽宏 『リーダーシップ入門』  ロベルト・ボラーニョ 『野生の探偵たち』  クリストフ・ポンセ 『ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎: ルネサンスの芸術と知のコスモス、そしてタロット』  沼上幹 『組織デザイン』  ニッコロ・マキアヴェッリ 『君主論』  辻静雄 『フランス料理の手帖』  モーリス・メルロ=ポンティ 『眼と精神』  フィリップ・K・ディック 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』  土井善晴 『おいしいもののまわり』  レイモン・オリヴェ 『フランス食卓史』  井筒俊彦 『『コーラン』を読む』  蓮實重彦 『映画狂人日記』  村上春樹 『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集』  ヨハン・アモス・コメニウス 『世界図絵』  ミランダ・ジュライ 『いちばんここに似合う人』  原武史 『団地の空間政治学』  岸本佐知子 『なんらかの事情』   辻調理師専門学校(編) 『辻調が教えるおいしさの公式 洋菓子』   湯木貞一 『新版 吉兆味ばなし』   ギュスターヴ・フローベール 『ボヴァリー夫人』   田口卓臣 『怪物的思考: 近代思想の転覆者ディドロ』   阿古真里 『小林カツ代と栗原はるみ: 料理研究家とその時代』  シモーヌ・ヴェイユ 『重力と恩寵: シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄』   ジョン・マンデヴィル 『東方旅行記』   土井善晴 『土井善晴さんちの「名もないおかず」の手帖』   なぎら健壱 『東京酒場漂流記』   内澤旬子 『世界屠畜紀行』   辻静雄 『うまいもの事

ステファン・グラビンスキ 『狂気の巡礼』

ポーランドの作家、というと、スタニスワフ・レム、ヴィトルド・ゴンブローヴィチ、そしてブルーノ・シュルツ、と一癖も二癖もある作家が思い出されるが、ステファン・グラビンスキもまた、その個性が記憶に名前が刻まれるタイプの作家だと思う。「ポーランド文学史上ほぼ唯一の恐怖小説作家」、「ポーランドのポー」、「ポーランドのラヴクラフト」と称される小説家の短編集を読んだ。 「恐怖小説」、といってもゾッとするようなスリルやホラーを感じるわけではない(この作家性に夢野久作を想起する読者もいると言う)。正直、そんなに怖くはない。けれども、どこか不気味であり、本書のタイトルにもあるような「狂気」をじんわりと感じさせる。 たとえば、この作家は、ある場所に怨念じみたもの、地縛霊じみたものが残っていて、それに主人公が影響を受けてヤバくなってしまう、という話をよく描いているのだが、それを単なるファンタジーや超常現象としてでなく、ある種の特殊な心理的作用として、まるで科学的に説明できるもののように説明しながら書いている。この描写がとてもネチネチしていて、危ない雰囲気を余計に煽る。 荒木飛呂彦とか諸星大二郎が描くモダンホラーに通ずる不気味さがあって良いし、あと本書は装丁もとても良い。正直、そこまで好きな作家ではないんだけれど、めちゃくちゃ雰囲気がある本に仕上がっていて、書店で見つけて「ああ、これは面白そうな本だな、買わなきゃいけないんじゃないか」という気持ちにさせられてしまった。

平本久美子 『やってはいけないデザイン』

デザインについて学んだことは一切なくても、センスが皆無でもホワイトカラーな会社員をやっているとチラシだの、資料だの「デザイン」をする機会は必ずやってくる。そんな機会に延々と上司にダメだしされたり、自分が作るものってなんかイケてないな……となんだりした人は多いと思う。わたしもその一人。本書は、素人がやりがちなイケてないデザインの事例をたくさんあげて「どうしたら良い感じになるのか」の知見を授けてくれる大変良い本。難しい理屈は一切なし、仕事の行き帰りでサクッと読めて、明日から「イケてないデザイン」を作れそうな気分にさせてくれる。 正直、インターネットでデザインに関して調べたらでてくるような話しか載ってない、とも言えるのだが、会社員は調べる時間を金で買うべき。会社のデスクにでもしまっておいて、困ったときに開けるようにしておきたい。「社会人1年目に読む本リスト」(そんなものがあるとしたら)のなかにも入れておきたい一冊だ。 これを読んでわたしもイケてるデザインの資料を作って女の子にモテたい! 「紺野さんの作る資料っていつもオシャレですよね!」と言われたい! けれども、会社員人生は複雑で、こういうのを読んでイケてるデザインのものを作っても、上司のセンスが壊滅的でせっかく作ったものをダサくするよう命じられることも多々あるのが悩みどころだ。

アルフレッド・ベスター 『虎よ、虎よ!』

SFのド古典。当ブログでなんども書いているとおり、SFというジャンルにあんまりハマれないわたしであるが本書は、さすがに「すげぇ本だなぁ……」と思った。ガンダムみたいな宇宙戦争時代に 『Watchmen』 をやっている感じ、というか。これが60年前の小説ですか……。

湯木貞一 『吉兆味ばなし 2』

高級日本料亭、吉兆の創始者、湯木貞一による語りを集めた本。『吉兆味ばなし』の1巻については 『新版 吉兆味ばなし』 という形で手に入りやすくなっているが、その続刊については新版が出ていない。「和食」が世界遺産になっているんだから「和食」を文化(そして芸術)にまで高めた第一人者による本ぐらい、もっと手に入りやすくなっていてしかるべきであろう……と難しい顔になってしまうぐらい良い本。季節ごとの食材について語り手があれこれ語る、その繰り返しで、春になれば筍だし、秋になれば松茸、と語ってることが毎年季節ごとに同じなんじゃないか、と思うのだけれども、その繰り返し、季節の循環が、和の時間感覚なのかも、とも思う。読んでいて、ああ、春が、夏が、秋が待ち遠しいなぁ、という気持ちにもなる。