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METALLICA『Death Magnetic』




デス・マグネティック
メタリカ
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 メタリカの新譜。結成から30年近く経った今尚、メタル界のトップ・ランナーであり続け、ロックの殿堂入りを果たし、そろそろ「メタル・オブ・ゴッド」の名を授かっても良いんじゃないか、という感じの大物バンドとなっているわけだけれども、常に自分たちの音楽を現代風にアップデートさせているところが今回も素晴らしい。これは伊藤政則も泣いて喜ぶに違いない……という出来である。もうなんかグルーヴ感がツェッペリンみたいになってて吹っ飛んだ。

 録音では今回のアルバムから参加の新メンバー、ロバート・トゥルージロの存在感も強烈で、バンドの密度のさらなる高まりも見逃せない――ヴィジュアル的にも、中東系っぽい人、ヨーロッパ出身の人、典型的なアメリカ人、さらに南米系の人……雑多な感じになっている。個人的な印象に過ぎないけれど、メタルという音楽は極めて白人性の強い音楽だと思っているので、現在のメタリカの雑多感はかなり異色な気もする*1。ちなみにトゥルージロ加入の経緯は、こちらのドキュメンタリに詳しい。



メタリカ 真実の瞬間
メタリカ 真実の瞬間
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 とにかくこのアルバムは爆音再生熱烈推奨。音が異様な音圧で作りこんであるので、ヘッドフォン自体が振動するぐらいの音量で聴くと脳からなんか出る。普通そこまで音量を上げると細部がよく聴き取れなくなりそうなんだけど、ちゃんと聴き取れるので「金のかける部分がすごい!」とも思った。




*1:これに勝るのは、ヴォーカルが黒人というセパルトゥラ(ブラジルのメタル・バンド)ぐらいだろうか





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