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『Newton』8月号「大宇宙 宇宙はどれほど広いのか 宇の章」はスケールが大きすぎて恐くなる

Newton (ニュートン) 2011年 08月号 [雑誌] posted with amazlet at 11.06.28 ニュートンプレス (2011-06-25) Amazon.co.jp で詳細を見る 毎日スラッシュドットとかをチェックしながら毎月『Newton』を読んでいると、ネットの速度で入ってくる科学関連のニュースを2ヶ月遅れぐらいで『Newton』で深く解説してもらえるという事象に出くわすことがあり、そういうのが楽しくて読むのがやめられなくなってきます。「陶酔しない大麻」の実験にマウスで成功したり、一般相対性理論が提唱する「時空のひきずり効果」を実証するようなデータがとれたり、科学ニュースはにぎやかで良いですね。大特集は宇宙の広さについてですが、震災関連の記事も忘れられていません。今月号には3月11日の地震での海底の動きの更なる分析結果や、地震計の仕組み、また事故がおきた原発を廃炉するにはどのように仕事を進めなくてはならないのかを解説する記事がありました。 原発の事故処理は連日ニュースで報じられていますが、今回の記事は現場でのリアルタイムな対応のほかに今後の長期的な対応について詳しく、現場で作業をおこなう他にバックグラウンドでは様々な準備・研究・開発がおこなわなければならないことがわかります。事件は現場でばかり起きるわけではない、というか。スリーマイル島の事故でも、溶けただした核燃料を取り出しはじめてから、完了までに5年かかかっている。だいたい取り出しがはじまるまでに6年かかっているというのだから、まだバタバタしっぱなしの福島の状況がいつ次のフェーズに入るのか。もしかしたら、今いらっしゃる政治家の責任ある方々、電力会社の責任ある方々、社会の責任ある我々の一部は「次のフェーズ」に入るのを見届けられずに、一生を終えてしまうのかもしれません。とはいえ、科学の力は侮れません。活気的な除染技術とか冷却技術とかでてきたりしないかな、と期待してしまうのです。『Newton』ファンとしては。 さて今回の大特集ですが、30周年記念の2号連続大特集の第1弾「大宇宙 宇宙はどれほど広いのか 宇の章」(次号が『宙の章』)です。なにやら「宇」という漢字には「空間的な広がり」という意味があるらしく、広大な宇宙についてこれでもかと解説されています。ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影...

読売日本交響楽団第505回定期演奏会 @サントリーホール 大ホール

指揮:パオロ・カリニャーニ ピアノ:辻井伸行 《オール・ベートーヴェン・プログラム》 ベートーヴェン/歌劇〈フィデリオ〉序曲 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73〈皇帝〉 ベートーヴェン/交響曲 第6番 へ長調 作品68〈田園〉 音楽を聴く生活のなかで、ベートーヴェンの音楽を聴くことなんかめっきり少なくなってしまった今日この頃(MPBばかり聴いていたので)、こうして生でベートーヴェンの音楽に触れると改めて「ああ、ベートーヴェン、素晴らしい曲書いているな」と思わされてしまいます。言わずもがなの《楽聖》であるゆえに、良い曲を書いているのは当然、それは申し上げる必要もないことに属するかもしれません。しかし、そうした改めてこの音楽の価値を知らしめてくれるようなクオリティのライヴに出会える幸福をまず噛み締めなくてはならないでしょう。力強い音楽に心を揺らされてしまいました。 この日のマエストロ、パオロ・カリニャーニは、世界各地の歌劇場で活躍しているイタリア出身の指揮者。彼の演奏を聴くのはこれが初めてでしたが「世界には自分の知らない良い指揮者がたくさんいるのねえ」と感じいってしまうほど良い音楽の作り手です。カリニャーニは指揮台へと駆けるようにして現れ、ずいぶん勢いがある人だな、と思いましたけれど、そこで始められた《フィデリオ》は、シャープだが決して痩せてはおらず、それでいてとても情感豊かな音楽で。そのイメージはカリニャーニの颯爽とした姿と重なります。純ドイツ系の濃厚な音を響かせる読響のトーンもいつもとはちょっと違って聴こえました。なるほど、このオーケストラはこんな音も出せるのか、と感心しましたし、そういう一面を引き出す指揮者の手腕にも魅せられます。 中プロは辻井伸行のピアノで《皇帝》を。今この文章を書いているとき、すでにネットで公開されている彼に対する悪評を読んでしまって、自分の感想が書きにくいのですが、私はそんなに酷い、とは思いませんでした。彼のピアノを聴くのも初めての経験で、フジコ・ヘミングとか宮本文昭の娘さんとかそういう人たちと同じジャンルの人だと思っていたので、まったく期待してなかったのが逆に良かったのかな。もっと酷いのかと思ったら、まあ、大きな破綻もなく、かと言って大きな聴きどころもなく……。冒頭のピアノの独奏部分から「テンポ早っ」と驚きましたが、若...

Domenico/Cine Priv〓

で、また、MPBの新譜をご紹介。家計を直撃するリリース・ラッシュですけれども、こうして欲しいモノ(というか購買が義務付けられているように錯覚させられてしまうモノ)がポンポンと出てくるのはとても幸せなことだと思います。 本日はドメニコ・ランセロッチの新譜『Cine Privê』について。アルバムタイトルは「映画の略奪」という意味だそうです。1972年生まれのミュージシャンで、モレーノ・ヴェローゾやペドロ・サーなどと同じブラジルの新世代と呼ばれている人だそうです(《新世代》というほど若くはない気がしますが)。このあたりのミュージシャンはみんなカエターノ・ヴェローゾとどこかでつながりを持っているのですが、ドメニコもカエターノの『Noites do Norte』に参加しています。本作ではそうした関連ミュージシャンたちが大集合。モレーノ・ヴェローゾも、ペドロ・サーも、カシンも、アドリアーナ・カルカニョットも、そして何故かグレン・コッツェ(Wilco。この人、いろんなところで名前を見るなぁ……)も参加していて大変パーソネルが賑やかです。 グレン・コッツェが参加しているから、というわけではないですが、どこかシカゴのオルタナ・バンドっぽい雰囲気も感じられる気がします(なんかシー&ケイクみたいじゃない?)白昼夢みたいなふわふわしたサウンドが聴いていてとても気持ちよくて、ドメニコも特別歌唱力があるわけじゃないのだけれど、ぼんやりした感じの歌声がそういう音の雰囲気と調和している。本作に全面参加しているペドロ・サーのギターも変幻自在でさまざまに楽しませてくれます。 diskunion: DOMENICO / CINE PRIVE

谷川健一『魔の系譜』

魔の系譜 (講談社学術文庫 (661)) posted with amazlet at 11.06.19 谷川 健一 講談社 売り上げランキング: 296648 Amazon.co.jp で詳細を見る 私が谷川健一の『魔の系譜』に出会ったのはまったくの偶然で、ブックオフの100円コーナーにて「なんか面白そうな本ねえかな~」と目を皿のようにしていたところなのだった。タイトルからして物々しさが満載だけれども、日本の呪術や天狗といった伝承を媒体としながら日本の裏精神史を描き出すものすごい面白い本です、コレ。「諸星大二郎の元ネタみたいな本だな……」とか思いながら読み進めていたんですが、実際、諸星大二郎も谷川健一からの影響について告白しているのだとか。まあ、出てくるわ、出てくるわ、露骨なパクリ元が……(もちろんそれらは諸星大二郎流のアレンジが加えられて漫画化されるわけですが)。一年神主、隠れキリシタン、常世の国……といったキーワードにピンと来た方々は、なるほど諸星大二郎のアイデアの源泉はこれだったのか~、と確認するためにも一読をオススメいたします。 さて、この谷川健一先生、在野の民俗学者ということですが、その解釈はちょっとこじつけっぽかったり、突っ込み待ちを狙ってるんじゃないか、と疑われるところがあり、問題を感じなくもない。例えばこんな具合。「イナゴに蝗の字をあてるのは、イナゴが虫の王と畏怖されるほどの害を及ぼすからだと、私は勝手に解釈している」(P.187)。勝手に解釈しちゃうんだ……! と思わず半笑いになってしまいますけれど、そういう飛び方をしているからこそ余計に面白い。ラテンアメリカの作家の小説を読んでるときに「なんて想像力をしているのだ、この大陸の人たちは」と驚愕しながらページをめくるのと同じぐらい驚きがあります。もちろんそれは谷川先生がとりあげる題材そのものに、そうした力があるからなのですが。不遇の運命を辿った崇徳天皇が地獄に落ちて、天狗になり、後鳥羽天皇、後醍醐天皇とともに天狗軍団を結成していたり、平将門が反乱をおこそうとしたとき京都では蝶の大群が現れて人々を驚かしたり……異次元レヴェルのファンタジックな事象には事欠かない。本書を読むと、日本のマジックリアリズムを発見できる、と言っても過言ではありません。 前述の崇徳天皇については明治天皇が即位した年に、公式に鎮...

Caetano Veloso e Maria Gad�/Multishow Ao Vivo

MPBのリリース・ラッシュがとまりません。先日『zii e zie』のライヴ盤/DVDをリリースしたばかりのカエターノ・ヴェローゾが、昨年、若手女性ミュージシャンのマリア・ガドゥとおこなったデュオ・ツアー最終日の模様を収録したCD/DVDをリリースしています。マリア・ガドゥがデビューしたのは、2年前、まだ24歳だそう。先日ご紹介いたしましたアントニオ・ロウレイロもそうですが *1 、今のブラジルって恐ろしい才能がポンポンでてきてどうなっているのだ、アレか、これはブラジルだけじゃなくてBRICsに目を広げていったらもっとスゴかったりするのか、とよくわからない気持ちにさせられます。私が購入したのはDVDで、収録曲と値段はCDと変わらないのだけれども、DVDにはこのDVDのメイキング映像がおまけでついてくる。このメイキング映像がなかなか面白くて、カエターノとマリア・ガドゥがお互いに音楽的影響について訊ねあうところなどが興味深いです。日本語字幕はないものの、英語字幕はついているので多少英語ができるならば楽しめるかと。「17歳でジョアン・ジルベルトを聴いて何もかもが変わってしまった」と語るカエターノには胸が熱くなります。 マリア・ガドゥのパフォーマンスに触れるのはこれが初めてですが「歌姫」というよりかは「野生児」という表現が良く似合う、天性のミュージシャンだと思いました。なんというか「ロック姉ちゃん」風の勢いがある。彼女が座る椅子の脇には、赤と白のワイン、それからチェイサーの水が注がれたグラスがそれぞれ3つ置かれていて、局間にそれを飲みながらライヴを進めていくのですが、エネルギッシュでややハスキーな歌声は、時間が経つごとに伸びやかになっていく。DVDは最初にデュオがあって、マリア・ガドゥのソロがあって、またデュオがあって、カエターノのソロがあって、最後は再びデュオで……という構成でおこなわれますが、マリア・ガドゥのソロで気分が高まっていく様子が映像からヒシヒシと伝わってきて面白い。でも、それが演出的じゃないんですよね。そこがやっぱり観ていて気持ち良いし、この24歳はすげーな、と思いました。 しかし、カエターノ御大の深みには彼女の天性も圧倒されてしまう。マリア・ガドゥのソロが終わったあとのデュオで、カエターノが入ってきて歌いだしたとき「やっぱり、この人は全然違う」と思わされるの...

Adriana Calcanhotto/O Microbio do Samba

O Microbio Do Samba posted with amazlet at 11.06.16 Adriana Calcanhotto Pid (2011-05-10) 売り上げランキング: 42896 Amazon.co.jp で詳細を見る 最近めっきり南米の音楽に傾倒している私ですが、本日もブラジルの女性ミュージシャン、アドリアーナ・カルカニョットの新譜について書いていきます。彼女の音楽に触れたのは2年ほど前に発表されたアルバム『Maré』 *1 が初めてでしたが、これも長らく聴き続けたアルバムで、本作もそうした愛聴盤となる予感がギュンギュンとする一枚。アルバム・タイトルを日本語にしたら「サンバの微生物」ということになるでしょうか? 前作が彼女にとってのボッサ解体・再構築なのだとしたら、本作はサンバ解体・再構築、といったところ。サンバと言っても極彩色の世界ではなく、そこはアドリアーナ・カルカニョットの音楽。やや翳りのある音の独特な質感は健在です。近くにいるのに、ものすごい深いところにいるような重力を捻じまげるポップ・ミュージック、というか。こうしたコードの音楽が単なるイージー・リスニングとして処理されてしまうのではなく、強い主張をもって響いてくるような感じが素晴らしいです。そこにはやはり言語の特性もあって、先日のアート・リンゼイのライヴのときも思いましたが *2 、ポルトガル語も勉強したいなぁ、と思いました。 *1 : Adriana Calcanhotto/Maré - 「石版!」 。アート・リンゼイのプロデュース作 *2 : Arto Lindsay・大友良英 @Music Duo Exchange - 「石版!」

面影ラッキーホール/typical affair

ティピカル・アフェア posted with amazlet at 11.06.13 面影ラッキーホール Pヴァイン・レコード (2011-06-08) 売り上げランキング: 722 Amazon.co.jp で詳細を見る 面影ラッキーホールというバンドについてはもはや「裏クレイジー・ケン・バンド」だとか「知る人ぞ知る」といった形容をしなくとも「ああ、あのヒドい歌を歌う人たちね」と伝わるほどの認知度を誇る存在となっているかと思われます。知らない人はいますぐYoutubeの以下の動画をご覧ください。大音量で! ご覧ください! コレに心を掴まれた人は、新譜「typical affair」発売時のインタビュー記事を読んで深すぎる発言に心を震わせたら良いと思います。 [ototoy] 特集: 面影ラッキーホール『typical affair』配信開始 & インタビュー 「ドラマや映画のようなきっかけなんて無いんですよ、人の人生に。」、「日本人の平均って免許証の更新会場にあるなって思うんです。」、「自信がないから、俺の話を聞けなんてとても思えない。そう思える奴ら全員頭おかしいよ。恥知らず。」と名言が爆発しすぎている。私もココまで、醒めきっている人たちだとは思っていませんでした。トラックリストの異形感溢れるタイトルも圧巻。 1. ラブホチェックアウト後の朝マック / 2. セカンドのラブ / 3. ゆびきり / 4. ゴムまり / 5. 背中もよう / 6. 今夜、悪魔は天使に負けない / 7. 涙のかわくまで / 8. SO-SO-I-DE(LIVE at EAST) ここでは、彼女がいる男ばかり好きになる女性だの、夫が塀のなかで《お勤め》をして帰ってきた女性だの、息子を新しいオトコに虐待死させられる女性について歌われます。アルバムタイトルの「typical affair」(直訳すれば、典型的な事柄)とはまるでかけ離れているようですが、こうしたことはあくまで面影ラッキーホールのリスナー層にとっては典型的な事柄ではないのであって、どこか別な階層ではありふれていて、典型的な事柄なのでしょう。ちょっと遠くにあるように思われるリアルを描いているこの感じは『闇金ウシジマくん』とも重なるかもしれません。