というわけだから、リーダーシップ本みたいなのを期待すると普通に幻滅すると思うし、そういうのを求めてるんだったら、古典を読む必要って全然ない(日経文庫の『リーダーシップ入門』でも読みましょう)。当時のイタリアが置かれていた状態とか、西洋史をそこそこ知ってないと、あんまり面白くないんじゃないのか。組織をどういう風に動かすか、部下をどんな風に使うのか、みたいな話なら『韓非子』のほうがもっと直接的で役に立ちそうだ。
ただ、書いてあること自体は結構面白いと思うんだよ。マキャヴェリがサイコー!と褒めそやしているのは、チェーザレ・ボルジアという人で、この人はとにかく敵の親玉を支持している人を懐柔したり、自分に反旗を翻した人の連合をバラバラにして勢力を弱らせといて叩く、みたいな政治巧者だったりしたらしい。不幸にも権力者であった父親のローマ教皇、アレクサンドル6世が亡くなるのと同じタイミングで健康が悪化し、一挙に権力の座から転落していってしまうんだけれども(一説には両者ともに暗殺)、そういうのがなかったら、マジでサイコーだったのにさぁ、とマキャヴェリから振り返られている。
あと、敵の土地を占領したら徹底的に痛めつけるか、逆に徹底的に良い思いをさせて統治しろ、とか言ってたりする。中途半端が一番良くない、と。半端に痛めつけるとすぐ反乱を起こすから、やる時は徹底的にやっておけ、容赦すんな、みたいなのが、マキャヴェリのいう良い君主のあり方には含まれてる気がする(基本的には、君主 = 戦争の親玉、で敵との戦いにどう勝つのかが前提となっている)。
Amazonのレヴューでは、翻訳がクソと叩かれまくっている岩波文庫版だが、読みやすくはないけども、特別読みにくい日本語ではないと思う。「原文が透けて見えるような日本語」とはこういうのを言うのだろう。これにブーブー言ってる人は、漫画でわかる『君主論』みたいなものを読んでおけば良いのでは……という気さえする。まぁ、えらい先生のお仕事、ってこういうもんでしょう。
コメント
コメントを投稿