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『Newton』6月号「未曾有の大震災」は、ものすごい良い仕事




Newton (ニュートン) 2011年 06月号 [雑誌]

ニュートンプレス (2011-04-26)



『Newton』には先月号でも震災の速報記事が掲載されていましたが、6月号では本来予定されていた特集を延期して「原発と大震災」特集が組まれています。日本がアジアに誇る科学ジャーナリズム誌が、今回の震災に取り組んだ本気がヒシヒシと伝わってくる内容でかなり素晴らしいモノだと思います。特集は第1章「 超巨大地震はこうしておきた」、第2章「徹底分析 福島第一原発事故」、第3章「次にひかえる超巨大地震」に分かれています。なかでも第2章は原子力発電所の仕組みや事故原因、チェルノブイリでの事故との比較、放射線の人体に対する影響……などなど今回の特集では一番力が入っている感じの部分に思えました。Twitterなどで魑魅魍魎みたいな人がゴチャゴチャ言っている原発・放射線関連の情報に不安を煽られている人には第一にオススメしたいです。





アマゾンのレビューでは「一方、原発事故の分析は、イラストがきれいという点以外は連日メディアで報道されてきた程度の内容で、特に新しい発見はありませんでした」という声が寄せられていますが、連日メディアで報道されてきた部分がうまくまとめられているのだとしたら、記事としての価値があるでしょう。速報性の高いメディアでは、なんだかよくわからないかったり、説明不足になってしまう部分がここではフォローされているように思われますし、毎日入ってくる情報を誰もがうまく処理できるわけではありません。図説や写真入りでわかりやすく解説してくれる記事はとても有用だと思いました。多くの人にとって、不安なのは結局のところ、放射線によって人体にどういう影響がでてくるのよ? という部分だと思いますが、この点はQ&A方式になっていてかゆいところまで手が届く感じ。





しかし、もっとも恐ろしいのは第3章。タイトルからして、もうすぐ超巨大地震がくるぞ……という恐怖感を煽ってきますが、そうした予知・予想的な部分については確かなことがあまりいえない感じだそうで、具体的な感じではありません(また、今回の震災で日本周辺のプレート・断層の状態が大きく変わっているため、これまでの研究結果を洗いなおす必要があるのだそう)。しかし、そうした超巨大地震が起こったときに考えられる災害の恐ろしさが大々的に説明されます。高速地すべり、スロッシング、富士山噴火、火炎旋風……などゾクゾクする感じ。煽るだけ煽って解決策の提示などはないので、投げっぱなしジャーマンみたいですが、心の備えはムダではないでしょう……と思いました。





次号も予定していた特集を延期して「これだけは知っておきたい 原子力と放射能」という特集になるとのこと。放射能の“適切な怖がり方”を探る内容もあるらしく目がはなせません。





追記


「事故ってない原発でも停止してから解体するのに、30年以上かかる」というのを今回の特集で知りました。原発の耐用年数は30年ぐらいでしたっけ? その利益を享受するのと同じぐらいの年数を、解体するのにかかるのね。最近ネット上では原発反対の声が各所で大きく叫ばれていて、それに対して「そんなこと言っても、超エコな発電システムがあるわけじゃないじゃん。実際、反対しちゃって良いの? 今、反対することによって、将来得られるメリットを失うことにならない?」と考えていました。





なので反対にも賛成にも安易には加担できないな(よくわからないから)と思っていたのですけど、耐用年数と同じぐらい解体に時間がかかるのを考えると、今原発を使ってメリットを得ることで、後々の人にメリットと同じ年数分の負債みたいなものを負わせることになるのだね、と思いました。耐用期間30年の原発が運用されはじまった時点で、20歳の息子さんがいる50歳(寿命が80歳)の人がいたとするなら、その息子が50歳になったときに原発は停止され、自分は死んでその後のことは知らんぷりできるけど、息子はあと30年間原発が解体できるようになるまでの時間を生きなくちゃいけない。その息子が20歳でこどもを作ってたら、孫の世代が50歳になるまで原発の解体は終わらない、という「親子三代まで呪ってやる!」みたいなお話を考えれば「現状では仕方ないから原発を使いましょうよ」とも迂闊に言えない気がします。





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