ひさしぶりにプラトンを読む。これで岩波文庫のなかのプラトンの著作はすべて読んだだろうか。正直『法律』の下巻とかはかなりいい加減に読み飛ばした記憶しかないけども。
『メノン』本文は100ページ弱とかなり短い作品ではあるのだが、それだけに対話はかなりすっきりした印象があり、変な回り道をしないで読める。魂は不死であり、知識とは魂のあいだにすべて学んだもの、人間の学習とは生きているあいだにそれを思い出しているだけ、という想起説の例も数学的判断から導きだされるなど、とても分かりやすい。「徳は教えられるのか」というところから議論が始まって「徳とは!?」という風に議論は進むので、なんだか自己啓発本のごとき紹介がなされているけれども、読んでも具体的に「徳とは!?」は分かったりしないので注意。
この対話篇では、プラトンが考えた「事物そのもの」への到達の出来なさが表現されているように思われ、その議論の流れこそが重要に思われた。ソクラテスはメノンに対して「徳って何だ。徳そのものについて教えてくれ」と請うのだが、メノンはことごとく失敗してしまう。例えば「さっき君は正義は徳の一部だ、と言ったけど、今は徳のことを正義をもって良いことを得ること、とか言ってるじゃん! 正義は徳の一部なんじゃないの!? それ徳そのものに対する説明じゃないじゃん!」と怒られたりする。
正直、プラトンのソクラテスに言わせていることの嫌らしさと言ったらないのだが、こうした、一部から全体へと到達できないところはイデア論と繋がって読めるような気がしました。
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