千松 信也
新潮社 (2012-11-28)
売り上げランキング: 11,085
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昨今、クマが人を襲った、とか、人里にでてきた、なんていうニュースが多いじゃないですか。ほかにもシカやイノシシが増えすぎちゃって、農家の人が困ってる、とか。ああいうニュースに触れると「人間が環境を壊してるからだ」とか、人類反省モードになる人が多いけれども、この本は別な視座を与えてくれる、と思う。シカだの、イノシシだのを狩る猟師が減ってるから増えちゃう。だから「害獣」が増える、という視点だ。
なぜ、猟師が減るのか、というと、高齢化、なんだけれども、さらに、なぜ高齢猟師ばっかりになってしまうのか、というと、これはもう要するに、猟師は儲からないから、なんだよね。獣を狩っても、ちゃんとした流通ルートがない。いくら合理的に狩っても、売れないから、狩ってもしかたない。だから、猟師は大変なばっかりで儲からない職業となり、奇特な人や趣味の領域に押し込められてしまう。これが合理化されたら、害獣問題なんか一気に解決するのにね、と思う。
ただ、本書の著者は、そうした合理化からは全力で逃げている人だ。そもそも猟師で生計を立てていないし、猟師は素晴らしい職業だから広めたい、と思っているわけでもなさそうだ。ただ、こういう生き方もあるよ、こういう暮らしぶりもあるよ、という世界を覗かせてくれる。それは、もちろん「一般的な生活」とは異なるものだろう、けれども、その「一般的な生活」に馴染めない人、というのも世の中にはいるわけで、そういう人がたまたまこういう本と出会って、ああ、こういうのもあるのか、と思って楽になったら素敵だよな、と思う。
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