2009年に行ったライヴ・演奏会を振り返る

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  1. 庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@鎌倉芸術館 - 「石版!」

  2. 東京楽友協会交響楽団第86回定期演奏会@すみだトリフォニーホール大ホール - 「石版!」

  3. 読売日本交響楽団第480回定期演奏会@サントリーホール - 「石版!」

  4. BECK来日公演@NHKホール - 「石版!」

  5. 読売日本交響楽団第481回定期演奏会@サントリーホール - 「石版!」

  6. Ginger does 'em all@鶯谷What's Up - 「石版!」

  7. MAGMA 40th Anniversary Tour In Japan@Shibuya O-EAST - 「石版!」

  8. ヘルムート・ラッヘンマン オーケストラ作品展「協奏二題」@東京オペラシティ コンサートホール - 「石版!」

  9. 日本の電子音楽 @草月ホール - 「石版!」

  10. サントリー音楽財団創設40周年記念 サマーフェスティバル2009 特別演奏会 シュトックハウゼン<グルッペン> @サントリーホール 大ホール - 「石版!」

  11. 村治佳織が奏でるドイツ・ロマン派の夕べ@麻生市民館大ホール - 「石版!」

  12. ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール - 「石版!」

  13. YO LA TENGO @品川プリンス ステラボール - 「石版!」



 今年行ったライヴ・演奏会の振り返り。これが2009年最後のエントリになります。ライヴは上記のほかに、虫博士バンド(インセクト・タブー)のライヴを2本観ています。今年は現代音楽の熱いイベントが多くて充実していました。とくにシュトックハウゼンの《グルッペン》、黛敏郎の《涅槃交響曲》が生で体験できたのは僥倖でした。来年は読売日本交響楽団の定期会員になるため、ほぼ毎月サントリーホールに足を運ぶことになります。これが今から楽しみ。





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小室ファミリーを知らないものは不幸である

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 先日、我が家にid:murashitid:ayakomiyamoto、そしてid:Delete_Allという同年代2人、オッサン1人を招きまして、ちょっとした食事会を開いたのですが、そのときご飯を食べながら爆音で聴いていたのがglobeとか安室ちゃんとかで。これが(お洒落ぶって)モダンジャズだのボッサだのを聴きながら食事するよりもずっと盛り上がってすごく楽しかったのでした。小室哲哉は偉大だ……と思った。小室ファミリー全盛期のころすでに洋楽を聴き始め、ボンジョヴィからプログレへ……という中二病全開の青少年期を過ごしていた私にもしっかりと小室サウンドが焼きついているのです。



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エイベックス・トラックス (1996-03-31)
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 特に『globe』は、日本の音楽業界の最盛期のイケイケ感を幻覚させてくれるようで最高です。このアッパーな多幸感といったら、どんな懐メロよりも強度がありそう。しかし重要なのは、この幻覚を誰かと共有できる、ということなのでしょう。もしかしたら、いろんな意味で脚光を浴びている「ゆとり世代」には、この感覚が共有できないかもしれない……そう思うとちょっとした優越感さえ湧いてきます。この幻覚を共有できることが、iPodでもなく、Youtubeでもなく、テレビのスピーカーから小室サウンドが聞こえてきた時代を知るものの特権なのです。





  • 自家製ピクルス

  • 白菜の浅漬け

  • 水菜と豆腐のサラダ

  • 切干大根の煮物

  • カシューナッツとピーマンと鶏肉の炒め

  • 鯛めし



 ちなみにその日の食事会は以上のメニューを振舞いました。大好評だったので次はSPEEDを聴きながら手料理を振る舞う会を開きたいと思います。





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最近読んだ漫画について

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11人いる! (小学館文庫)
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訪問者 (小学館文庫)
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イグアナの娘 (小学館文庫)
萩尾 望都
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海のアリア (1) (小学館文庫)
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海のアリア (2) (小学館文庫)
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感謝知らずの男 (小学館文庫)
萩尾 望都
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 今年は萩尾望都の漫画を結構読みましたが、年末に追い込みをかけるようにしてまた一気読み。こうして一気に読んでみるとこの作家が、少年性や中性的なキャラクターのほかに、「親から愛されない子ども」や「何らかの問題があって人を愛せない人」といった題材を集中的に描いていることに気がつきます。その問題の解決がうまく物語化されているのだなぁ、と思いました。特に『感謝知らずの男』はその治癒の物語の連作集と言えるのかもしれません。どれも面白く読みました。





 あと諸星大二郎の『西遊妖猿伝』も読み始めました(半分ぐらいまで読んだ)。コミック文庫版で全10巻というかなり長大な作品なのですが(しかもまだ新シリーズが連載中)グイグイ引っ張るパワーがものすごくて一気に読めてしまいます。『西遊記』という原作があるとはいえ「玄奘法師が岩屋を偶然通りかかって……」というお決まりゴトを大幅に書き換え、さらには故事成語のストーリーなどをユーモラスに織り込みつつ、新しいサーガにアップデートするという驚異的な作品です。唯識などの仏教哲学などもセリフに登場してくるし、この作家の計り知れない教養が滲みでまくっていて、すげーぜ!



銀河鉄道999 (1) (少年画報社文庫)
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 さらに『銀河鉄道999』も読みました。メーテルに究極の母性を感じつつ、とにかく登場人物がはかなく死にまくるところには驚きましたが、各話の設定がとても面白かったです。





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オザケンの射程、とか

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LIFE
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小沢健二 スチャダラパー
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 この前、近所のブックオフで『LIFE』を買いました。音楽関係のブログでは、00年代の音楽総括! みたいな記事がせっせと書かれているのでしょうけれど、いまさら渋谷系のお話……とはいえ全然リアルタイムではなかったため、実はよく知りません。でも、久しぶりにこのアルバム聴いてみたら、記憶への定着力みたいなモノがハンパではないことに気がついて驚きました。リリースから15年も経っているのか……と思うとなんだか恐ろしいアルバムだなぁ……という思いが一層強まります。





 個人的な思い出話になってしまいますけれど、2004年ぐらいでしょうかね、自分がこのアルバムを一番繰り返して聴いてたの、って(大学二年生でした。この時点でリリースから10年経っている)。当時すでに歌詞の中に織り込まれた言葉のところどころに「古臭さ」を感じていたように思いますが「このアルバムは自分の青春時代の音楽として、深く心に刻まれるのだろう」という予感がありましたし、実際振り返ってみるとすごく懐かしい。すると、レイドバックしてやってきた90年代を過ごしてたんじゃねーか、俺は、という不思議な感じもしてきます。





 しかしながら、こういった体験をされている方って他にもいるんじゃないかな、と思うのですよね。少なくとも私の同年代の文化系の方々には、結構通じる話だと思うのです。そして、今回聴き直して気になったことといえば、リリースから10年経っても、リスナーの心を打つことができる“オザケンの射程距離”だったのでした。リリースから15年経った現時点でもその射程の範囲内にあるのか、どうか。昨年ぐらいから20世紀に活躍した大物たちが次々と亡くなり、ようやく“20世紀の終わり”を感じるようになってきましたが、もしかしたらオザケンの射程範囲外へと時間が進むこともまた20世紀の終わりを確認するためのマイルストーンになるのかもしれません。



ミニ・スカート
ミニ・スカート
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加地秀基 カジヒデキ
ポリスター (1997-01-29)
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 あと一緒にカジヒデキ『ミニ・スカート』も買いました。こっちはまったく思い入れとか一切ナシ。



週末には ドライブするのさ


週末には 中華たべるのさ


日曜日は 少しゆっくりで


日曜の夜 キスして二人は


別れるのさ 週末まちどおしいよ


(WEEKENDERS)



 こういう世界観のポップスって今あるのか? と思ってすごく感動してしまった。





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ウチのクリスマス・ケーキ

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 今年はサダハルアオキのヴァランシア。友達が食べていたのを一口もらったことはあったのですが、1ホールを惜しみなくパクパク食べてみたら「サダハルアオキは天才だ!」と足をバタバタさせながら食べたくなる美味しさでした。オレンジのムース→チョコレート生地→チョコレートムース→サクサクの生地のコンビネーションが絶品過ぎます。ムースのなかには味の濃いオレンジ・ピールがところどころ紛れ込んでおり、また、上に乗っているフランボワーズと一緒に食べると酸味が素晴らしいアクセントを加えてくれます。さすがにフランスの偉い賞を取っただけあるなぁ……と感心したのでした。





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THE BLACK CROWES/Before The Frost

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Before the Frost/Until the Freeze
The Black Crowes
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 先日2009年に購入した新譜を振り返ったばかりですが、買いそびれていたザ・ブラック・クロウズの新譜をうっかり買いそびれていたことを思い出して、速攻購入し聴きまくっているワタクシは大うつけ者かもしれません。なぜなら、このアルバムの内容がめちゃくちゃ良かったからです。昨年のアルバム『Warpaint』も良かったですが、今度はそれを更に凌ぐ勢い。





 録音はよりすぐったブラック・クロウズのファンたちをスタジオに集め、すべてライヴで録ったらしいのですが、恐ろしいほどの完成度と演奏内容の濃さで「もしかしたら21世紀最強のライヴ・ロック・バンドはブラック・クロウズかもしれない……」と恐れおののきたくもなります。とにかく最高。しかもCDに同梱されているカードのシリアル番号をブラック・クロウズの公式サイトにある特設ページで入力すると、泣く泣くアルバム収録をあきらめざるを得なかったテイク(すべてCDに未収録曲)がまるごとダウンロードできる、という驚くべきサービスぶり。こちらの未収録曲には『Until the Freeze』というアルバムまでついていますから、ほとんどCD1枚のお金で2枚買ったようなお徳感。しかも内容まで最高のほうもCDに収録されている楽曲にまったく劣らないのですから、お前ら、絶対買ったほうが良いぞ! と鼻息荒く主張しておきます。



D


 基本的にはルーツ・ロック感全開、ハード・ロック化したザ・バンドのような骨太なロックンロール路線は前作を踏襲しているのですが、シングル・カットもされている「I Ain't Hiding」(上記動画の曲)のディスコっぽい感じとかも新鮮で良かったです(なんかこの曲、フランツ・フェルディナンドみたいに聞こえてクスっときました)。アナログも切っているみたいなんだけど、この曲がたぶんA面の終わりみたい。ここまでの構成も素晴らしくて、ロック・アルバムを聴く楽しみを存分に感じさせてくれます。



D


 第1曲目「Good Morning Captain」からこれですからね……(ヴォーカルのクリス・ロビンソンの格好がやりすぎで失笑してしまいそうですが)。あとアルバム中、ボトルネック奏法のソロがたくさんあるんですけれど、もうなんかウマ過ぎて脳からボトルネック汁が出た。





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ブーレーズのブーレーズを聴いた

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Boulez: Pierre Boulez Edition
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Pierre Boulez
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 引き続き*1、ピエール・ブーレーズ85歳&京都賞受賞記念CDセットのお話。本日はブーレーズ御大の作品を御大自ら指揮したモノを集めたセットについてです。ここには《ル・マルトー・サン・メートル》はもちろんのこと、ブーレーズの代表曲ばかりが集められているのですが、個人的には《弦楽のための本》が収録されているのが嬉しかったですね。この作品、私が初めて聴いたブーレーズの作品でして(当時高校3年生)、2002年にマウリツィオ・ポリーニが「ポリーニ・プロジェクト」という企画で来日した際のコンサートで演奏されていて、そのライヴの模様がBSで放送されていたんですが、これは……! なんなのだ……! という衝撃を受けた気がします。


D*2

 今聴いてもこの作品は良い曲だなぁ、って思う。今でこそ「西洋前衛音楽の絶対王者」みたいにブーレーズは考えられているような気がしますけれど*3、シュトックハウゼンやノーノ、クセナキスといった同世代に比べれば、その作風はかなりまろやかなものと言え、ロマンティックなものに聞こえます。《弦楽のための本》はその「まろやかブーレーズ」の象徴的作品のような気がし、そのまろやかさのなかに、20世紀音楽の始まりである新ヴィーン楽派との連続性を強さを感じてしまうのでした。「オペラ座を爆破せよ!」などという発言が有名なブーレーズは一見、ロマン主義に対する嫌悪感が強そうな風に思えるのですが、その内実は20世紀に活躍した作曲家のなかでもっともロマンティックな作曲家だったのではないか、と思えます。




 あと《儀式――ブルーノ・マデルナの追憶に》という作品を聴いて「へー、こんな曲も書いていたんだなぁ」と思いました。これはなんだかお経みたいな作品で、ギロやゴングやサンダーシートや太鼓といったリズム楽器がそれぞれズレつつも、同じリズムを刻む上に、長い声明のような旋律が重なっていくのが面白い。ブルーノ・マデルナ*4の追悼にふさわしい曲かどうかは分かりませんけれど、ブーレーズの作品にしてはかなり音数が少ない作品で、ちょっとした異色作なのかな、と思いました。ほかの作品はセリエル全開な音の密度の作品ばかりで結構聴く体力がいるのですが、ダンサブルな瞬間があって超カッコ良い。




*1ヴェーベルン、カーター、ヴァレーズ、ベリオを聴いた - 「石版!」シェーンベルクの声楽作品をモリモリと聴いた - 「石版!」


*2:《弦楽のための本》の自作自演映像。オーケストラはヴィーン・フィル


*3:長生きしてるから、偉そうだから、という理由で。たぶん


*4:マデルナの名前を聞くといつも「マデルナ危険」というダジャレを言いたくなるのは私だけではないでしょう





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2009年に読んだ本を振り返る

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 2009年も相変わらず雑多に読みました(小説を読む量はグッと減った)。プラトンを一気読みしたり、モリエールを一気読みしたり。自分のなかで「これを読むぞ!」とテーマを決めて気合を入れて読んだりして、気分を盛り上げるのが上手くなった気が。





 これは特に面白かったなぁ……っていう本を5冊あげると以下のようになります。



ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』 - 「石版!」


エルヴィン・パノフスキー『イコノロジー研究』 - 「石版!」


炭山アキラ『入門スピーカー自作ガイド』 - 「石版!」


ジークムント・フロイト『モーセと一神教』 - 「石版!」


フランセス・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』 - 「石版!」



 見事に一冊も小説が入りませんでした。『1Q84』すら。小説については年々読むものが偏ってきており、自分が知らないものについては読まないようになってきているし、読んでも「あんまり面白くないなぁ」とか思ってしまうようになっています。「常識は18歳までに得た偏見のコレクションだ」とはアインシュタインの名言ですが、そういうのを強く感じてしまったりする。





 あとアドルノの新刊や復刊が結構あった気がしますが、どれも買っていません。







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2008年に読んだ本を振り返る - 「石版!」





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2009年の新譜を振り返る

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 とりあえず、今年2009年に購入した新譜をブログからリスト・アップしてみたら以下のようになりました(再発モノなどは含まず)。





  1. SLY MONGOOSE/MYSTIC DADDY - 「石版!」

  2. 菊地成孔 南博『花と水』 - 「石版!」

  3. Caetano Veloso/Zii E Zie - 「石版!」

  4. SAVATH & SAVALAS/La Llama - 「石版!」

  5. BOMBAY BICYCLE CLUB/Always Like This - 「石版!」

  6. PRINCE/LotusFlow3r - 「石版!」

  7. SONIC YOUTH/The Eternal - 「石版!」

  8. にせんねんもんだい/Fan - 「石版!」

  9. WILCO/Wilco (the album) - 「石版!」

  10. 足立智美/初期作品&ライヴ音源集 1994-1996 - 「石版!」

  11. JUNK FUJIYAMA/A color - 「石版!」

  12. YO LA TENGO/Popular Songs - 「石版!」

  13. JIM O'ROURKE/The Visitor - 「石版!」

  14. 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール/ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ - 「石版!」

  15. OS MUTANTES/Haih...Ou Amortecedor... - 「石版!」

  16. ヒラリー・ハーン/バッハ ヴァイオリン・アンド・ヴォイス - 「石版!」



 こうしてみるとクラシックの新譜を1枚しか買ってない、っていうのがなかなか異様。あんまり新しいアーティストにも触れなくなってきているし、そもそも情報をチェックしていないので仕方がないのかもしれませんが。来年はもうちょっと積極的に情報を集めてみようかな、と思いました。





 今年一番驚いたのは15のムタンチスの新譜でしょうか。「新譜出したらしいよ」と聴いて「えーー! マジで!!」と叫びました。内容も良かった。カエターノ・ヴェローゾの新譜も良かったし、ブラジルのベテラン大御所ミュージシャンの活躍が嬉しい年だったのかも。ウィルコ、ヨ・ラ・テンゴ、ソニック・ユース、ジム・オルーク、プリンスと言った大好きなアーティストの新譜が聴けたのも良かった。どれも傑作だった気がするし、なんか順位がつけられないな。あえてベスト1を選ぶなら、やはりヴェローゾ御大の新譜だろうか。



ジー・イ・ジー
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カエターノ・ヴェローゾ
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  • 関連エントリ


2008年に買った新譜を振り返る - 「石版!」





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ヴェーベルン、カーター、ヴァレーズ、ベリオを聴いた

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Webern & Varese: Pierre Boulez Edition
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 引き続き*1、ピエール・ブーレーズ85歳&京都賞受賞記念CDセットのお話。今日はヴェーベルン、カーター、ヴァレーズ、ベリオの作品を収録したものを聴きました。6枚組(仕事が暇になったので家に帰って音楽を聴く生活を続けているのです)。これは雑多なまとめられ方をしたものだなぁ……という感じで、正直「現代音楽モノで、ハンパな枚数になっているのを抱き合わせて売ってやれ! 安ければ買うだろ!」という目論見しか感じられません。が、それはさておき廃盤になっていた(作品番号が付いているもののみ、ですが)ヴェーベルン全集がこの値段で手に入るのはお買い得感がありますし、買ってしまったのでした。まんまと乗せられてしまっているぜ!





 ヴェーベルン全集はご丁寧に作品番号順に並べられており、なんだかお勉強みたいですが、久しぶりにドップリと聴いてみたら、とにかくあっという間に次の曲に行ってしまうので(ヴェーベルンの曲は一曲一曲がとても短いのです。グラインドコアみたいに)、大して印象らしいものが浮かんでこなかったりもするんですが、最後のほうでやたらと音質が悪い演奏が始まった! と驚いてライナーノーツを開いてみたら、1932年のヴェーベルン指揮による演奏が収録されていて「うほっ!」となったりしたのでした。彼が演奏しているのは、自身の編曲によるシューベルトの《ドイツ舞曲》。これが結構ヘタクソな演奏で(録音技術が貧弱だったせいで、弦楽器の人数が少なく、音程やアンサンブルの乱れがすごくわかる)和みます。演奏様式は19世紀的、というか。たっぷりとルバートをとって大変にロマンティックなものとなっています。バリバリの前衛音楽家だったのに、指揮は普通だ! というヴェーベルンのギャップにやられました。




 カーターについてはよくわかりません。カーターの作品は昨年のピエール=ロラン・エマールの演奏会*2で聴いたことがありますけれど、そのときは対位法といったクラシックな技法に準拠しつつ、複雑なテクスチュアを鳴らす人……みたいな印象を抱きましたが、ここに収録されている《3つのオーケストラのための交響曲》もそんな感じ。ライナーノーツによれば、ニューヨークの詩人、Hart Crane*3の生涯にインスパイアされた作品らしいです。「3つのオーケストラによる複雑な相互作用は、巨大な都市の通りで生きた彼の生涯を示唆する」とかある。そんなことよりも、1908年生まれのカーターがどこまで生きてるのかに意識がいってしまいます。最近、101歳になったばかり。オスカー・ニーマイヤーと競争して欲しい。




 ヴァレーズの作品は以前にリッカルド・シャイーの全集*4で聴いたことがありました。このエドガー・ヴァレーズという人は、西欧音楽史上初のパーカッション・アンサンブル作品を作ったり、電子音楽に手を出してみたり、あと、フリー・ジャズなんかにも興味を持っていたみたいで、アート・ファーマーやらテオ・マセロを集めてフリー・ジャズ・セッションを企画してみたり*5……とエピソードが豊富です。久しぶりに聴いたら、やっぱり面白くて。ストラヴィンスキー《春の祭典》の剽窃みたいな作品もあるのですが、新しい音の探究心の強さみたいなものが垣間見えるような気がします。例えば、新しい楽器の使用にしてもそうで、1928年に開発されたオンド・マルトノを1932年にはすでに使用しています(《エクアトリアル》)。





 ベリオの作品集には、《セクエンツァ》からの編曲シリーズである《シュマン》などを収録。これはなかなか手ごわい相手でして、ベリオが書いたような20世紀の現代音楽を今後、どのように処理しなくてはいけないのか(20世紀が生んだゴミ(失言か?)として処理されても致し方が無かろう……)ということを考えてしまいます。連続する高速トリルや複雑なパッセージ、あるいは息の長いフレーズが様々に折り重なり、多層的な音響を生み出していく様子はとても面白いのですが……うーん。《セクエンツァ》全曲を聴きなおしてみたい気にもなりましたが、ちょっとベリオって私には難しいのかも……。簡単な作曲家ってなんですか、と問われたらそれはそれで困りますが。




*1シェーンベルクの声楽作品をモリモリと聴いた - 「石版!」


*2ピエール=ロラン・エマール来日公演@東京オペラシティコンサートホール - 「石版!」


*3:誰?


*4:永らく廃盤でしたが、これも今は手に入りやすくなったみたい


*5:このエピソードは村上春樹訳、ビル・クロウによる『さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 』に載っています





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YO LA TENGO @品川プリンス ステラボール

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Popular Songs
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Yo La Tengo
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 ヨ・ラ・テンゴの来日公演を観に行きました。すごく楽しかったし、良いバンドだなぁ……って何度も思って、会場にいたたくさんのお客さんのなかでそういう感想が共有されていそうな感じがします。観ている間に「なんでこんなにロック・スターっていうイメージから程遠いバンドのライヴにこんなにたくさんの人が来ているんだろうなぁ」って思ったりもしたんですが(見た目的に、典型的なナード + 冴えないコンビニを経営している夫婦みたいだし)、なんかバンドのなかに存在している“つたなさ”みたいなものに宿命的に惹かれてしまうのかな、とか思った。ステージングなんかはもう大御所らしい安定感だし、フィードバック・ノイズの操作なんかも超カッコ良いんだけれど、どっかにつたない部分が残ってしまっている。でも、そうであるからこそ、いつまでも聴いていたいバンドであるような気がするのですね。観れば観るほど、不思議なバンドだなぁ……って思います。



D


 アンコールは2回。で、2回目の1曲目は「Sugarcube」で、なんか感極まってちょっと涙が出ちゃいました。一気に脳内でPVの映像が再生されちゃったりして。





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トマス・ピンチョン『ヴァインランド』登場人物リスト

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ゾイド・ホィーラ:主人公。ヒッピーの生き残りで元サーフロックバンドのキーボード奏者。今は精神障害者のふりをして年金をもらうことで生計を立てている。


プレーリィ:ゾイドの娘。14歳。


スライド:プレーリィの同級生。


バスター:元きこりバーのマスター。


ヴァン・ミータ:ゾイドのいたバンドのベーシスト。ゾイドとは腐れ縁の仲。


ヘクタ・スニーガ:麻薬取締局捜査官。テレビ中毒にかかって精神がイカれている。


ラルフ・ウェイヴォーン・ジュニア:キューカンバー・ラウンジ(通称〈キューリ〉)の支配人。父親が裏社会の人間でその権力で良い暮らしをしている。


イザヤ:プレーリィのボーイフレンド。60年代カルチャーが好きなパンク少年。


スコット・ウーフ:ゾイドのいたバンドのヴォーカル兼ギター。


フレネシ:ゾイドの元妻。何かヤバいことになっているらしい。


デニス・ディープリィ:ヘクタが入院している病院の医者。


エルヴィッサ:山の上に住んでいる。ゾイドの車を借りた。女。


トレント:ゾイドの家の近所に住んでいる。ダットサンをキャンパーに改装した。詩人兼画家。


RC:御霊川(ファントム・クリーク)沿いにあるザリガニ料理のお店の亭主。


ムーンパイ:RCの妻。


ティ・ブルース:「蒸気のロバ」のシェフ。


リックとチック:ボーン・アゲン自動車改造工場のオーナー。


エウセビオ・ゴメス:通称“ヴァート”。合法性の疑わしい牽引トラック・チームの片割れ。


クリーヴランド・ボニフォイ:通称“ブラッド”。合法性の疑わしい牽引トラック・チームの片割れ。


ミラド・ホッブズ:風景造成会社の株主。元役者。


ブロドウェン:ミラドの妻。


ブロック・ヴォンド:ワシントンの連邦検察の偉い人。酒と涙と辛苦の月日をゾイドに与えた張本人」。


アーニィ・トリガマン:ヘクタの相棒。


バーバ・ハヴァバナンダ:プレーリィのバイト先「菩提達磨ピザ寺院」の夜の店長。


サーシャ・ゲイツ:フレネシの母。筋金入りのアカ。


グレッチェン:アシッド・ロックのクラブ「コジミック・パイナップル」のウェイトレス。ポリネシア人に扮している。


文茂田武(タケシ):カルマ調整師。ゾイドに救われた経験がある。


フラッシュ:フレネシの現在の夫。


ジャスティン:フレネシとフラッシュの間にできた子ども。


ハッブ・ゲイツ:フレネシの父親。元海軍に所属していた。第二次大戦後はハリウッドの照明主任。思想的にはノンポリ。


ジェス・トラヴァース:サーシャの父親。組合活動員だったが反対勢力の仕組んだ事故で下半身不随になる。


クロッカー・“バッド”・スキャントリング:ジェスを下半身不随に陥れた人物。雇用者協会のまわし者。


ユーラ:ジェスの妻。組合員に囲まれて育った。


エディ・エンリコ:ジャズ・バンド「ホンコン・ホットショッツ」のリーダー。ユーラをバンドのヴォーカルとして雇っていた。


ウォラス:ジャスティンの友達。


バービー:ウォラスの母。


ラルフ・ウェイボーン・シニア:大金持ち。娘の結婚式のためにイザヤのバンドを雇った。


ジェルソミーナ:ウェイボーン・シニアの娘。


ビリー・ゲロー:イザヤが所属するバンド、ヘドーズのリーダー。


レスター:ヘドーズのリズムギター。


カーマイン・トルピディーニ:「2トン」のニックネームをもつ大男。ウェイボーン家の用心棒。


ヴィンセント:ウェイボーン・シニアの息子。ウェイボーン・ジュニアの弟にあたる。


ダリル・ルイーズ・チェイステイン(DL):フレネシの親友。日本で闇の忍術を学んだことがあるくの一。タケシのパートナーでもある。


シスター・ロシェル:東洋の深遠なる教えを守る忍びの女の会、くの一求道会のシスター。忍術の使い手。


ゲアハルト:くの一求道会でひどい料理を作る料理人のひとり。


ムーディー・チェイステイン:DLの父親。不良少年だったが軍に入隊し、終戦直後にDLを設けた。大戦後は日本でも勤務。


ノリーン:ムーディーの妻。夫の暴力に耐えつつも、夫の上司と浮気をしていた。


昇(ノボル):パチンコ屋でDLを見かけ師匠に紹介した男。


猪四郎(イノシロー):DLの師匠。闇の暗殺忍術を極めた男。DLには自らが開発した残忍な技のすべてを授けた。


ロベリア:白人奴隷として誘拐されたアメリカ人女性。


輪々爪(ワワヅメ)教授:タケシの恩人であり、〈輪々爪生命&非生命〉の代表取締役。


稔(ミノル):タケシの昔なじみ。政府おかかえの爆弾除去の専門家。かつてタケシと輪々爪生命の調査員として一緒に働いていた。


沓下さん:タケシとミノルの思い出話に出てくる人物。魂の救済を求めてチベットに来ていた。


織丹(おるに)医師:輪々爪生命&非生命の診療所の医師。デス・タッチ(一年殺し)をかけられたタケシを診察した。


御前野加々代:タケシの前妻で女優。TVドラマ『オカシナおかしなベビーちゃん』に出演していた。


オーソ・ボブ・デュラーン:「死んでいる、みたいで、ちょっと違う」シンデルロのひとり。


ティ・アン・トラン:ヴァートとブラッド牽引商会の3人目の相棒であるヴェトナム人女性。


ゴーマン・フラッフ:ジャングルの伝説的な金融ブローカー。ヴェトナム戦争中、ヴァートとブラットへとティ・アン・トランの後見人としての責任を遺贈し、死亡。


ウィード・アートマン:1984年にはシンデルロになっているが、かつてはサーフ大学の学生運動の指導者を担った大学教授だった。「ロックンロール人民共和国」がカリフォルニア州から分離独立を宣言する際も活躍したが、ブロックとフレネシの活動によって失脚した(らしい)。


シスター・メアリ・シレル:プレーリィと一緒にくの一求道会で料理を作る人。


ミセル・ロ・フィント:プレーリィと一緒にくの一求道会で料理を作る人。イタリア人の主婦。


双子さん:プレーリィと一緒にくの一求道会で料理を作る人。


マニュエル:車の修理改装屋の店主。DLのトランザムに「車遁の術」をほどこす。


ラウール:タケシの事務所にいるハイテク冷蔵ロボ。


ディッツァ・ピスク・フェルドマン:かつてフレネシとDLが所属していた「60年代映像ゲリラ部隊」<24フレーム/s>の天才映像編集者(ユダヤ人女性)。妹のズィピとともに行動していた。


ハウイ:<24フレーム/s>のメンバー。広報担当を担っていた(たしか)。


ミラージュ:<24フレーム/s>のメンバー。グループの星占い担当。


クリシュナ:<24フレーム/s>のメンバー。編集作業中のBGM選曲担当。


スレッジ・ポティート:<24フレーム/s>のメンバー。


レックス・スナヴル:サーフ大学における学生運動の主要メンバー。「ボルシェビキ・レーニン・グループ・オブ・ヴェトナム」なる過激派集団のたどった運命を研究していた。


ジンクス:ウィード・アートマンの元妻。


モウ:ウィード・アートマンの子ども。


ペニィ:ウィード・アートマンの子ども。


ウィリス・チャンコ:ヴァインランド郡のシェリフ。大麻取締りに燃える男。


カール・ボップ:元ナチスの空軍士官。ドラッグ撲滅のための航空偵察部隊を指揮していた。


ラリィ・エラズモ:ディスカウント歯科チェーン「ドック・ホリデー」を成功させた医者。シルデルロのパーティに顔を出していた。


チキータ:「ドック・ホリデー」の受付嬢。


イルス:「ドック・ホリデー」の衛生士。


エリオットX:BAAD(Black Aflo-American Division)の参謀長。レックスが大事に乗っていたポルシェ911を奪った。


ロスコ:ブロック・ヴォンドの部下。


レフティ:ゾイドが所属していたバンドのドラム。


レナード:フレネシがプレーリィを出産したときの助産夫。


ウェイド:サーシャとハッブ(フレネシの両親)にガレージを貸した人物。


ドッティ:サーシャとハッブ(フレネシの両親)にガレージを貸した人物。


ロン:ブロック・ヴォンドの策略によりゾイドが逮捕された際に、ゾイドを痛めつけた。


ウェンデル・“ムーチョ”・マース:『競売ナンバー49の叫び』の主人公、エディパの夫だった人物。『競売ナンバー……』に登場したときはLSDをキメすぎたスキゾなラジオDJだったが、『ヴァインランド』登場時はセレブになっている。


トリリウム:ムーチョの豪邸でゾイドと出会う女。


ヒューゴ・スプランクニック:コカインのやりすぎで鼻がおかしくなったムーチョを救い、ドラッグ道から回心させた耳鼻科医。


クレア:サーシャの従姉。ヴァインランドに住み着くシンデルロに少し詳しい。


チェ:プレーリィの旧友である不良少女。彼女の祖父母がウェイドとドッティである(らしい。それにしてもすごい名前。ウェイドとドッティも左翼だった、ということだろうか)。


フルール:チェの友達。


フェリペ:ヘクタ・スニーガの義理の弟。ヘクタに62年型ポンティアック・ボンネビルを貸す。


シド・リフトフ:ヘクタとアーニィ・トリガマンと組んで、フレネシを主人公とする映画を撮ろうとする男。彼もヤク中。


デビ:ヘクタの元妻。テレビ中毒の夫に嫌気が差し離婚を迫った。


ロイ・イッブル:フラッシュの担当だった連邦捜査官。


アーマ:イッブルの秘書。


エルムハースト:弁護士。民事RICO法が自分のキャリアの役に立つとにらみ、無償でゾイドの相談に乗る。


デレク:サーシャが拾ったヒッチハイカー。ブリティッシュ・パンク風のファッションに身を包んでいる。


ジェイド:プレーリィのいとこ。


エース:ハッブ・ゲイツの相棒。


ドミトリ:ハッブ・ゲイツの相棒。


アレクセイ:ソ連から密入国してきた「ビリー・ゲローとザ・ヘドーズ」の大ファン。彼の口からウラジオストックでザ・ヘドーズが大人気であることが伝えられる(ビンにつめて海に流したカセットテープがウラジオストックに流れ着いたらしい)。



 完成しました。上記のリストをファイル化して共有できるようにしました。








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シェーンベルクの声楽作品をモリモリと聴いた

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Schoenberg: Pierre Boulez Edition 2
Pierre Boulez
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 ピエール・ブーレーズ85歳&京都賞受賞記念ってことで一挙にブーレーズのCDが格安セットで再発されています。私もそのうちのいくつかを買いましたが、今はシェーンベルクの声楽曲を中心に集めた6枚組のセットを聴いています。未完の歌劇《モーゼとアロン》や(実は聴いたことが無かった)初期の大作《グレの歌》などが目玉なのですが、他にも色々と聴き所があってオススメです。特に初期と晩年の声楽曲を収録したディスク1が個人的には驚きの連続でした。初期の《地には平和》は《室内交響曲》第1番と同様の不思議な和声感が素晴らしい作品ですし、最晩年の《三つの民謡》は憑き物が落ちたような清廉な調性音楽で、とてもシェーンベルクの作品とは思えないほどです。このような“美しい作品”を経由することによって、またシェーンベルクの音楽の聴き方が変わってきてしまいそうなほど衝撃を受けました。あと、優れた対位法の感覚を持つ作曲家だったんだなぁ、と改めて思いましたね。アドルノは「シェーンベルクを理解できない者は、バッハを理解できない」とか言っていましたが、やっぱり一理あるんだなぁ、とか。





 これに対して、ディスク2はバリバリの無調/12音音楽時代の声楽曲が収録されています。聴いていて面白いのは、とっても美しい《三つの民謡》の後に書いた《千年を三たび》、《詩篇第130番》、《現代詩篇》ですね。これらがほぼ同時期に書かれていたとはホントに信じがたいことでしょう。シェーンベルクのこういう傾向をアドルノは、後期のベートーヴェンと重ねて考えていたようです。その部分を引用してみます。



ゲーテが老年の特性と認めた「現象から段階的に身を引くこと」は、芸術の概念においては「素材の無差別化」である。後期ベートーヴェンにあっては、意味を失った慣習により作曲の流れが首をすくめながら進められるのだが、これらの慣習はシェーンベルク後期の諸作品における十二音技法と似たような役割を果たしている。(中略)厳格なる音楽は、社会に抵抗し、社会的真理の代表となる。これに対して迎合的な音楽は、社会がその偽りにもかかわらずいまだ所有している音楽への権利を認めるのだが、それは社会が偽なるものとしてであってもたえず再生産され、生きながらえることにより、客観的にそれ固有の真理の要素を提供しているのと同様である。(中略)素材の無差別化はこの両者の要求の間を縫うように一体化させることを可能にする。調性もまた全体構成に従事することとなり、後期シェーンベルクにとってはもはや、何によって作曲するかは決定的なことではなくなっている。作曲方法がすべてとなり材料が何も意味しなくなった人間には、過ぎ去ったもの、また過ぎたものであるがゆえに消費者の束縛された意識に開かれたものをも、自由に使うことができるのだ。(『新音楽の哲学』P.171-173)



 ちょっと引用するつもりが長くなってしまいました(そして、ここだけ引用してもあんまり意味がなさそうな感じがしてきました)。まず「アドルノが後期ベートーヴェンをどう考えていたか」について補足したいところですが、それについてはこちらのエントリを参照してください。さらに第2の補足をすると、アドルノは12音技法時代のシェーンベルクをあまり評価していなかった、というのが重要です。「無調の時代はあんなに自由だったのに! 12音技法を初めてからのシェーンベルクは技法に囚われている! 自由になるつもりが逆に疎外されてる!」というのがアドルノの言い分です。改めてみるとザ・批判産業ですね。これらを踏まえると引用した部分は、晩年のシェーンベルクは「素材の無差別化」されたことで、技法の縛りから開放されて、再び自由を手に入れた! 万歳! という風になります。





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集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#3 カルペンティエール『失われた足跡』『時との戦い』

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失われた足跡 時との戦い (ラテンアメリカの文学 (3))
カルペンティエール
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 集英社「ラテンアメリカの文学」第3巻は、キューバのアレッホ・カルペンティエールの長編『失われた足跡』と、短編集『時との戦い』を収録しています。『失われた足跡』のほうは今年に入って読んだばかりなので飛ばしました。感想はこちらに書いてあります。今気がついたんですが、このシリーズの巻数って作家の生年順みたいですね。1、2巻は1899年生まれのボルヘスとアストリアス。で、カルペンティエールが1904年。世代的に彼もまた「マジックリアリズムの先駆者」のひとりであります。どうでも良いですが、お顔が優しいジャバ・ザ・ハットみたい。





f:id:Geheimagent:20091214200755j:image:left(←カルペンティエールのお姿。晩年かな?)で、短編集『時との戦い』なのですが、うーん……これは微妙なところ。短編集の表題は、表題作となっている作品があるわけではなくて「時」というテーマをめぐって様々な手法を凝らしながら書いた作品を集めたコンセプトを指し示していると思うのですが、同じようなテーマで書いていたボルヘスと比べると幾分落ちるかな、と。長編はものすごく面白かったのですが、天は二物を……と言ったところでしょうか。今際の時から胎児まで逆に時間が進行する伝記(ベンジャミン・バトンみたいだ!)やら、様々な民族に残っている箱舟伝説の主人公が「洪水」のときに一同に会していた! というコントみたいな話やら様々で多彩ではあります。ただし、イマイチ決め手にかけるように思いました。





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クセナキス 管弦楽作品集

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クセナキス:管弦楽作品集(HMV)


 昨日、楽しみにしていたヤニス・クセナキスの管弦楽作品を集めた5枚組ボックスセットが届いたので、もりもりと聴いています。このボックスセットには、「とくダネ!」でも紹介されたという大井浩明のピアノ独奏によるピアノ協奏曲、《シナファイ》の録音などが含まれており、また、クセナキスの実質的デビュー作となった《メタスタシス》(1954)から90年代の作品まで満遍ない選曲となっています。中心となっているのは70・80年代の作品のようですが、クセナキスをがっつりと聴いてみたい、と思っている人にはちょうど良いセットなのではないでしょうか。


D*1


 実のところ、これまで私もクセナキスの作品を集中的に聴いた経験がありませんでした。「ル・コルビュジエの元アシスタント」で「数学やコンピュータを使って作曲」し、「第二次世界大戦中に拷問を受けて片目を失明」し、「大編成のオーケストラを使用」して、「すごく複雑で演奏が難しい曲を書く」人。こういったイメージばかり(というか知識)が先行していたのですね。今回ボックスが届いて聴き始める前も「さて、どんなわけがわからん曲が入っているのだろうか……」とドキドキしていたのですが、聴いてみると割合聴きやすい曲が多くて、それがまず驚きでした。スコアが真っ黒になっていそう……という印象はやはり強く感じるのですが、意外にポップ、というか。





 特に80年代の作品は、ダンサブルだとさえ思ってしまう。基本的には、大編成のオケを使用して凶悪かつ圧倒的な音響を構築する、という視点は揺るぎないようなのですが、時折、ペンタトニックのメロディらしきものが現れたりして驚かされます。そのなかでも《シャール》という1983年の作品は超カッコ良いですね。この曲の中では、もう混沌としか言えないほどポリリズムと不協和音でグシャグシャになる箇所があるのですが、そこがツボ。この部分をクラブで聴いてみたい。




*1:《シナファイ》の映像





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ピエール=シモン・ラプラス『確率の哲学的試論』

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確率の哲学的試論 (岩波文庫)
ラプラス
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 18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍したフランスの科学者、ピエール=シモン・ラプラスの本を読みました。本の解説によれば、この人は数学者としてとても有名で、とくに確率論においてはそれまでの確率論を統合しつつ発展させ、古典的確率論を体系化した、という大きな業績をあげた人だそうです。そのほかにも天文学でも大きな業績をあげている。まぁ、なんだか大変立派な方なのですが、自身の業績よりも「ラプラスの悪魔」やポケモンの名前の方で知られています。



ある知性が、与えられた時点において、自然を動かしているすべての力と自然を構成しているすべての存在物の各々の状況を知っているとし、さらにこれらの与えられた情報を分析する能力をもっているとしたならば、この知性は、同一の方程式のもとに宇宙のなかの最も大きな物体の運動も、また最も軽い原子の運動をも包摂せしめるであろう。



 これが有名な「ラプラスの悪魔」についての、ラプラス自身による記述ですがこれはこの本の冒頭のほうに出てきます。あらゆる物事の法則を知っていて、あらゆる物事の情報を持っていて、それらを分析することができる知性があるならば、ソイツはなんでも分かっちゃうので、未来も予知できちゃうであろう……というのが彼の主張です。この考えは、後の量子論の研究によって否定されてしまうのですが、今なお魅力的ですね。ラプラスの思考は、超越的な理性を想定したもの、と捉えることができますし、彼が確率に執着していたのも、その理論によって物事の法則を帰納的に導き出し、そして超越的理性に近づこうとしたのではないか、とも考えられます。このあたりの動機はパノフスキーによるスコラ学に対するコメント「明瞭化のための明瞭化」に近いのかもしれない。





 結構、頭を使わなければ理解できない箇所が多いので、本当に時間がある人向けの本ですが、丁寧に読めば読むほど面白いです。高校数学、あるいは各種試験で登場する確率の問題のネタ元みたいなものがよく分かったりします。サイコロやコインはもちろん、つぼの中にある色のついた玉といった例、このような言い回しは19世紀から変わらないものなのだなぁ……といったところが感慨深い。確率論の研究成果によって、なんでも予測できるようになる! という過信みたいなものを感じたりもするのですが、その点も含めて興味深く読みました。科学でなんでもできるようになる! といった典型的な近代理性の誇大妄想感を感じる本でもあります。





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回鍋肉

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R0010563


 豆板醤(トウバンジャン)と豆鼓醤(トウチジャン)を間違えたが、気にしないで作った。美味しかった! 同じ間違いをしている人は他にもいるらしい。





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ヒラリー・ハーン/バッハ ヴァイオリン・アンド・ヴォイス

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バッハ:ヴァイオリン&ヴォイス
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 ヒラリー・ハーンといえば、昨年のシベリウスとシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲の素晴らしい録音が記憶に新しいですが、今年も新しい録音を聞かせてくれています(日本盤は8月に発売されていたようです)。今回はバッハのアリア集、それも独奏ヴァイオリンが歌唱に伴うオブリガート楽器として活躍する曲を集めたアルバムです。比較的若い演奏家が、このようなアルバムを出すことはかなり稀有な例でしょう。ヴァイオリン協奏曲のポピュラーな楽曲については既に録音を一通り終えてしまった、というのもあるのかもしれませんが、やはり目の付け所が違うセレクトには演奏を聴く前から驚かされました。今後のクラシック演奏家界隈は、彼女のように自己プロデュース能力に優れた演奏家が活躍するのかもしれませんね。





 演奏ももちろん素晴らしいもので、ヒラリー・ハーンの芯の強い音色でキビキビと演奏されるヴァイオリンは、この季節の凛とした空気にとてもマッチしているかのように思われました。また、クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)とマティアス・ゲルネ(バリトン)の歌唱も実に素晴らしい。豊かな歌声の旋律とヴァイオリンの旋律との対話は、まさにポリフォニー音楽としてのバッハの音楽を聴く愉しみというものが結晶化したかのような演奏であります。これを室内オーケストラ、チェンバロ、オルガンによる伴奏や通奏低音が支えているのですから、バッハの音楽のなかに三位一体的な世界観を錯覚したくもなります。





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集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#2 アストリアス『大統領閣下』『グアテマラ伝説集』

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大統領閣下 (ラテンアメリカの文学 (2))
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 集英社「ラテンアメリカの文学」第2巻には、グアテマラの作家、ミゲル・アンヘル・アストリアスの『大統領閣下』と『グアテマラ伝説集』が収録されています。巻末の解説によればアストリアスは、ボルヘス(アルゼンチン)やカルペンティエール(キューバ)らと同世代。彼もまた「マジックリアリズムの先駆者」とされているそうです。ガルシア=マルケスやフエンテス、リョサと言った才能が爆発的に羽ばたき始めるのは1960年代に入ってからのことですが、アストリアスの作品には「マジックリアリズムの先駆者」という評価に相応しい、“ラテンアメリカ文学の形式”の原型のようなものを強く感じました。『大統領閣下』は、1970年代になって多く書かれている「独裁者小説」(ガルシア=マルケスの『族長の秋』がその代表と言えましょう)のオリジナルでしょうしね。





 『大統領閣下』は、ある晩に悪名高い一人の大佐が狂犬病にかかった乞食の手によって殺されるという事件からはじまります。大統領はこの事件を自分の地位を脅かす革命因子を根絶やしにするためのキッカケとして利用しようとします。その陰謀によって将軍、ミゲル・カラ・デ・アンヘルと、穢れなき少女、カミラの運命は翻弄されていく。独裁政治と政治的な腐敗を暴き出すジャナーリズム的なまなざしが、シュールレアリスムを経由した筆致と混ざり合うことによって、特別に力強い文学作品へと昇華されているように思いました。腐敗したシステムという悪がどのようにして、ひたむきな善を叩き潰していくのか。このテーマは今日的にも意義深いものでありましょう。





 『グアテマラ伝説集』はアストリアスの処女作だそうです。この仏訳がポール・ヴァレリーに絶賛され、アストリアスはヨーロッパの文壇で一躍脚光を浴びることになるのですが「まぁ、こんなのがいきなり現れたら、そりゃあ驚くだろうなぁ……」という異教感漂う作品でした。南米大陸にヨーロッパの文明が流入する前に繁栄していた文化と、流入以降のキリスト教的な文化が混合して成立した神話の特殊性は、シュールレアリストでなくとも喜んだに違いなく、現に私も大変面白く読みました。エキゾティックなだけに留まらない異世界を覗かせてくれる。



グアテマラ伝説集
グアテマラ伝説集
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 なお、『グアテマラ伝説集』は最近岩波文庫からも出ています。





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『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』

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Michael Jackson’s This Is It - The Music That Inspired the Movie
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 最終日のせいか郊外のシネコンでもほぼ満席……という状況でマイケル・ジャクソンの映画を観ました。面白いとか面白くないとかではなく実に感慨深い映画だったと思います。終演後には拍手が起こっていて(自分はしませんでいたが)、会場をあとにするほかのお客さんの声も熱くて、改めてキング・オブ・ポップの訴求力みたいなものを感じてしまいました。もう死んだけど。そう、もうMJは死んでるんだよ! ということで後味があまりよくありませんでした。スクリーン上で奇怪なほどシャープな動きをする白い50歳とは思えない動きをしていて、声も結構出ている。観る前は痛々しい姿を予想していたのですが、圧倒的な現役バリバリ感を示している。だからこそ、マイケル・ジャクソンの“急死”の重みが一層感じられてしまいます。私は死んだから/死んでから、再評価をおこなう、といった行為を好みません。この映画に贈られた拍手は生前の彼に贈られるべきものであった、と思いますし、さらに言ってしまえば彼が非常に苦しい時期にあった頃に贈られるべきものであった、と思います。少々ナイーヴ過ぎるしれませんが、私はこの映画に対して、素直に拍手をすることはできませんでした。そんなに思い入れがあったわけでもないですし(好きだったけれど)。





 いきなりブツクサと続けてしまいました。繰り返しますが、スクリーンに映る「圧倒的な現役バリバリ感」のマイケル・ジャクソンはすごかったです。まず、彼の周囲に配置された若いダンサーとはまるで異質な動きをしているのがすごい。マイケル・ジャクソンと若いダンサーたちの動きがシンクロしていても、中心にいる白い50歳の動きはあきらかに違っている。まるでその白い人の周りだけ地球の重力が5分の1ぐらいになっているんじゃないか、っていう軽い動きをしています。別な言い方をすれば、筋力を感じさせない動き、とでも言えましょうか。たしかに、若いダンサーたちは男女問わず、すごく厚くて、重そうな鍛え上げられた身体を持っている。そのなかでMJだけが薄っぺらくてヒョロヒョロして、異様に白い。映画のなかで、その彼が黒人のマッチョな女性ダンサーと絡むシーンがあるのですが、これはとてもすごかったですね。なんかホントにこの人はピーターパンだったんじゃないか、っていう軽さ。ダンスという身体表現において、どういったことがすごいのか、に関しては知りませんけれども、あの異質さには驚かされました。





 あと(多少ネタバレになってしまいますが)「Smooth Criminal」用に撮影された映像のなかで、MJがハンフリー・ボガードと共演しているところもなんだかじーんときてしまいました。すごく映画的な世界のなかにいた人だったのだなぁ、と改めて思ったりして(「Beat It」も『ウェスト・サイド・ストーリー』だったわけですし)。





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アルノルト・シェーンベルク 《ピアノ協奏曲》

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 内田光子が演奏しているシェーンベルクの《ピアノ協奏曲》が、下記エントリで紹介している映像の関連動画としてあがっていたのでこちらも併せて紹介しておきます。前にも紹介したことがある*1下記のインタヴューのときの本番みたいです。いつごろの演奏なのかは依然として不明。でも、本番の映像を見てみると内田光子が結構若い。そしてインタヴューのときよりキレイに見える(顔はかなり崩壊してるケド……)。



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 作曲されたのは1942年。シェーンベルクは1951年に亡くなっているので晩年の作品と言って良いでしょう。この作品の5年ほど前に書かれている《ヴァイオリン協奏曲》と同様に、物語的に進行する緩-急の流れがあり、(シェーンベルクの作品のなかでは)かなり馴染みやすい部類のものではないでしょうか。古典的な音楽作品にあるようなダイナミズムを強く感じます。テンポが速い部分は歌舞伎的にカッコ良いですし、アダージョの危うい美しさにもゾクゾクしてしまいます。これもまた20世紀の音なのだなぁ……ロマンティック……。



シェーンベルク:ピアノ協奏曲
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イーゴリ・ストラヴィンスキー 《詩篇交響曲》

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D*1


D*2


 久しぶりに《春の祭典》を聴きだしたら、自分がおどろくほどこの曲の細部について記憶していることに驚き、それから面白くなってきてストラヴィンスキーの作品をいろいろ聴きかえしました。ついでにYoutubeで映像を探してみたら《詩篇交響曲》の映像がアップロードされておりましたので紹介しておきます。1930年に作曲された新古典主義時代の作品。宗教音楽をハイセンスな書法をもってパロディ化したような曲ですが、厳粛さと遊びの要素の不調和がとても面白いです。とくに第二楽章の奇怪なフーガの響きといったら、ウソ臭さが全開で最高。これもひとつの《異化作用》とでも言えるのでしょうが、この危うい美しさのなかに「ザ・20世紀」といった感慨を感じなくもありません。



ストラヴィンスキー:詩篇交響曲/ブーランジェ:詩篇集

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*1:第一楽章・第二楽章


*2:第三楽章





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Mahavishnu Orchestra/Visions of the Emerald Beyond

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Visions of the Emerald Beyond
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 Dirk_Digglerさんにいただいたジャズ/フュージョンの音源を淡々と紹介していくよシリーズ。本日はマハヴィシュヌ・オーケストラ、1975年の大名盤『Visions of the Emerald Beyond』。これはもうすごかった。ジョン・マクラフリンってこんなに上手かったのー……と尻の毛まで抜かれそうな気持ちになったし、これまで結構、イギリスのテクニカルなジャズ・ロックを聴いてきたつもりではあったけれど、もうそんなの比べ物にならなくて、本業ジャズの人が本気を出すととんでもないプレイヤビリティを発揮するのだなぁ……と思いました(マクラフリンはイギリス出身のミュージシャンではございますが)。ギターと対峙するジャン=リュック・ポンティのヴァイオリンも異様に熱くて、とにかく音がぎっしりと詰まった変拍子ジャズ曼荼羅。





 いまではイナたい感じがするオリエンタリズムと異教感が満載なんですが、それもジョン・コルトレーンから続くジャズ界の伝統なのか……と思えばまた良し。これと同時期にコルトレーンの死によって天啓を受けた男、クリスチャン・ヴァンデによるマグマがフランスに存在していたことを考えると非常に興味深いものがあります。マハヴィシュヌ・オーケストラのサウンドと、マグマのサウンドには驚くほどよく似た部分がある。どちらのバンドもリーダーは、物心ついた時には既にバップの全盛期、青年に達する頃にはロックが生まれており、一流ミュージシャンの仲間入りする時期にはほとんどジャズは下火になっていた……という境遇を持つ、ジャズが生まれた国ではない土地に生まれたジャズ・ミュージシャンなのですから、彼らが似たように「異教」を志向したのは当然のことだったかもしれません……とインチキな分析を試みたくもなります。



D





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クエンティン・タランティーノ監督作品『イングロリアス・バスターズ』

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 タランティーノの新作を観てきました。楽しみにしていたんですが、期待と予想をはるかに上回る傑作ではないでしょうか。以前、蓮實重彦が「『デス・プルーフ』を見たときは、立ち上がって拍手をしたくなった」と語っていましたが『イングロリアス・バスターズ』もそんな感じ。息を飲む緊張感と崩れ落ちたくなる爆笑に襲われ、大満足で劇場を後にしました。最高! 爽快! 観た後に風邪が治りました!(マジで)





 ラブレーを直前に読み終えていたこともあって、ぼやーっとミハイル・バフチンの「カーニバル文学論」のことを思い起こしていたのですが、映画の最後に仏壇返し的にやってくる、全部ブチ壊しての大団円は、まさにカーニバルそのもの、というか。様々な伏線を緻密に交差させながら「えっ、これどうなっちゃうの? 大丈夫なの?」と観客にスリルを与えつつ、その意図は、最終的なカーニバルの舞台の用意でしかない、という思い切りの良さに大拍手したくなります。劇中、プロパガンダ映画を観ながらナチの人たちが大騒ぎする、っていうシーンがあるのですが、私もそんな感じで大騒ぎしたかった。ウオーッ! とかバカみたいに叫んだりしてね。





 あと暴力描写も良くて。それも、スプラッター的な大盤振る舞いじゃなく、鈍くて「それは痛い……痛い……」と目を背けたくなるような痛みの描写のさじ加減が。バットで撲殺されるシーンなんかの鈍さなんか特に良かったです。バットを大きく振りかぶって、スイングすると、耳の辺りに直撃。「首ぐらい吹っ飛んじゃうのかな」と思いきや、そうじゃなく、重い衝撃音がして、打たれた人が倒れるだけ。ここでハッとするのですね。鈍い暴力のリアリティを感じてしまう。大盤振る舞いのなかに、そういったシーンが何点か含まれることによって、なんか映画全体の暴力が引き締まって感じたかもしれません。





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フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル 第四の書』

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 昨年から待ち望んでいた『ガルガンチュアとパンタグリュエル』新訳の第四巻を読みました。この『第四の書』が書かれる前に、パンタグリュエルの部下であるパニュルジュという登場人物を主人公としたスピンオフ作品『パニュルジュ航海記』がラブレーとは別人の手によって刊行されていたそうです。今で言う二次創作みたいなものが、四五〇年以上前のフランスには既に存在していたことを考えれば、なんだか「二次創作はポスト・モダンの云々」といった分析が脆くも瓦解してしまいそうですが、ラブレーが“ポスト・モダン先取り感”を強めているのは、別人の手によって書かれた二次創作のストーリーをパクッてこの『第四の書』のなかに取り入れてしまっているところでしょう。このような話はセルバンテスにもありましたから、特段珍しくもないのかもしれません。『ガルガンチュアとパンタグリュエル』自体、当時のフランスに流通していた伝承譚『ガルガンチュア大年代記』を元に書かれたものですから、そもそも二次創作っぽいところがある。





 前巻である『第三の書』では、パニュルジュは結婚するべきか/しないべきか、をめぐっての大論争がメインとなっていましたが、『第四の書』はその問題の結論をつけるために「聖なる酒びん」のご託宣を授かるための船旅に出ましょう! という始まり方をします。しかし、一筋縄にいかないのがラブレーなわけで。フタをあけてみると「聖なる酒びん」のことなど忘却のかなた。様々な島を巡っては、妙ちくりんなキャラクターや怪物がでてきて大騒ぎ……。風刺と下ネタのオンパレード。結局、最後まで「聖なる酒びん」にたどり着くことはありません。ラブレーと言えば教科書に載るぐらい古典視されている人物ですが、その実体は、解読不能な言葉遊びも頻発し、ジョイスとピンチョンが束になっても適わないような恐ろしい小説を書き残したトンデモないオッサンなのでした。ピンチョンや莫言を読むなら、まず読むべきはラブレーではないのか、と私は思います。ポスト・モダン小説で注目される手法のほとんどが『ガルガンチュアとパンタグリュエル』には含まれている。





 てっきりこの巻で完結かと思っていたら、偽書の疑いが強いらしい続編『第五の書』も翻訳されるのだとか。これも楽しみになってまいりました。







  • 関連エントリ


フランソワ・ラブレー『ガルガンチュア』(ガルガンチュアとパンタグリュエル) - 「石版!」


フランソワ・ラブレー『パンタグリュエル』(ガルガンチュアとパンタグリュエル) - 「石版!」


フランソワ・ラブレー『第三の書』(ガルガンチュアとパンタグリュエル) - 「石版!」





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Grover Washington, Jr./Winelight

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 Dirk_Digglerさんにいただいたジャズ/フュージョンの音源を淡々と紹介していくよシリーズ。本日はグローヴァー・ワシントン・ジュニアの『Winelight』(1980年)。ジャケの感じが今見ると池袋とか新宿駅構内でワゴン・セールされてるCDみたいですが、このアルバムに収録された「Just the Two of Us」はグラミー賞を取ったらしいです。超スムース ≒ 深夜のFMっぽい ≒ っていうか、ジェットストリームっぽい(高度一万メートルの風……)。とはいえ、マーカス・ミラーとスティーヴ・ガッドというテクニシャンの人がガチガチに演奏を固めてるので、簡単にスムース・ジャズ(笑)と言い捨てられないのでした。



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 これを聞きながら夜景の見えるバーとか行ってみたい……なんとなくクリスタル……。すべての言葉がカギ括弧でくくれそうな世界だ……。





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Herbie Hancock/Sextant

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 Dirk_Digglerさんにいただいたジャズ/フュージョンの音源を淡々と紹介していくよシリーズ。本日はハービー・ハンコック、1973年のアルバム『Sextant』について。これはすごくブッ飛びましたね。ハービー・ハンコックといえば「誰かが既に出したアイデアを洗練させて、グラミー賞を取ったりする商売上手なブッディスト」というイメージがあったんですが、こんなにキレキレでヤバいポリリズム・ファンクをやっていた時期があったとは知りませんでした。一曲目からシンセサイザーを引き倒し、リズム・ボックスを導入……新しい機材を使うのが楽しくて仕方がないような暴れっぷりが最高です。ハービー・ハンコックが、“アガパン期”のマイルス・デイヴィスにもっとも接近した瞬間なのかもしれませんが、それでいてキチンとまとまりがあるからとても聴きやすい。



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ザ・男の料理 ステーキ

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 仕事がキツかったので、ガッツリいきたくなった。





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集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#1 ボルヘス『伝奇集』

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 先日、インターネットで古本情報を検索していたところ、集英社の「ラテンアメリカの文学」シリーズ全18巻が手ごろなお値段で売っていたのに出会ってしまい、引越し前かつ金欠*1にも関わらず、購入に至ってしまった私です。でも、出会ってしまったんだから仕方ないよねぇ……と自分を納得させて、律儀に一冊目のボルヘスから読んでいます。『伝奇集』。岩波文庫から鼓直訳でも出ていますが、こちらは篠田一士の訳。篠田訳のほうが、現代語っぽい印象がありました。収録作品も微妙に違っている。この版だと『伝奇集』、『エル・アレフ』、『汚辱の世界史』が入っています。これらの収録作品は以下の本でも読めます(訳者はバラバラ)。



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 篠田訳の『エル・アレフ』だけが、この本でしか読めない……はず*2。まぁ、そんなにこだわりはないですが。巻末の訳者解説は結構おもしろかったです。「十九世紀の小説をある程度読み、それを理解してからでないと、二十世紀の小説なんかはわかるはずもないなどという、迂遠な教条主義は、いまの若い読者にはないようだ。これこそ、文学作品の本当の読み方で、つまらないエセ歴史主義の虜になって、小説を読んだところで、なにが獲得できるというのだろうか」だそうです。





 『伝奇集』は結構、自分で小説を書くときに露骨にパクったりしているので、手元においてパラパラめくったりすることが多かったのですが、久しぶりにガッツリと読みました。そこでふと思ったのは、ボルヘスの描くイメージというのは、ほかのラテンアメリカの作家と比べるとちょっと違った位置にいる、ということです。「ラテンアメリカの作家はイメージが豊かだよね」と先日、ある人がコメントしていて、なるほど、と感じたことがあったのですけれど、それはガルシア=マルケスやリョサには言えることかもしれないが、ボルヘスにはちょっと当てはまらないのかもしれない、と思うのです。ガルシア=マルケスやリョサの想像力がイメージを豊かに、具体的に描くのに対して、ボルヘスのイメージは具体的な形をもたない。つねに抽象的であり、形を持つことを拒否するかのようにさえ感じられます。もっとも、《時間》や《無限》といった形を持たないものについて書いているので当たり前なのかもしれませんが。




 ボルヘスの作品がもつ「わけがわからない感じ」とはひとえにこの抽象性に所以しているといえるでしょう。《無限の迷宮》といったモティーフを彼はよく作品のなかで用いているのですが、文章自体が迷宮的であり、まさに迷宮について書かれた迷宮のような作品といった態をなしています。そこで、ボルヘスの作品を「わけわかんねーな!(ゲラゲラ)」という感じで楽しむのもありなのですが、さまざまな哲学の古典的著作物に触れたあとで読んでみると、少しは彼が何を書こうとしていたのかわかるようになる、と思う。ショーペンハウアーへの言及が多いので、ちょっと興味を持って読んでみようかとも思いました。ボルヘス先生は、図書館に勤めて読書と執筆を仕事にしていた、という知識大好きな変態野郎なので、私のような凡夫では彼の大海のごとき知識に及ぶことなど、死ぬまで適いませんでしょうが。それでも最近読んだジョルダーノ・ブルーノの著作*3は、とっかかりになってくれたように思います。





 ボルヘスが《無限》について書いた作品のなかで、傑作だと思うのはこの本にも収録されている『アレフ』という作品です。この「アレフ」という言葉、カバラでは「無限にして純粋な神性」、集合論の世界だと「全体は各部分に全く等しいという超限数」なんだとか。タイトルが即ちテーマとなっているのですね。作品の主人公はボルヘス自身で、頭がおかしーんじゃねーか、と噂される男が住む館の地下で「あらゆる角度から見た世界中の場所が、まじり合うことなく存在する場所」=《アレフ》に出会ってしまう……というお話。ボルヘスは「ホントかよ?」とか思いながら、地下室に向かうんだけれど、ホントに出会ってしまう。そこでボルヘスは次のように語る。



今や、この物語の名状しがたい核心に達した。そしてここに、わたしの作家としての絶望がはじまる。あらゆる言語は、対話者がある過去を共有すると想定した上で行使する符号のアルファベットである。とすれば、わたしの小心な記憶がほとんど包摂し得ない無限の《アレフ》を、どうすれば他人に伝えられるだろう?



 そりゃあんた作家なんだから頑張ってよ……とか思わなくもないですが、頑張った結果、彼は彼が《アレフ》のなかに見たものをただひたすら列挙していく羽目に陥ってしまうのです。そこで無数のイメージが乱反射する。でも、《アレフ》は無限だし、ボルヘスも無限のものをみてしまったから、それらのリスト化はあくまで限定的なものに過ぎない。語りつくせてしまうのであれば、それは無限ではないのですから――と、こうして書いてしまうと大した話ではない気がしてきましたが、無数のイメージが読み手のなかに呼び起こす捉えどころのない感覚が、《無限》の本質を表すのです。





 あと、今回はこういった知的遊戯のような作品ばかりではなく、ボルヘスは、男っぽいガウチョ小説もたくさん書いているんだなぁ、とも思いました。そういうのを気にして読んでいると、意外に数がある。酒場で、タンゴで、何かあったらすぐナイフで決闘! というマッチョな世界のなかに潜む落とし穴的ホラーみたいな作品が多くて、面白いです。




*1:通帳の数字がマイナスになってる


*2:なんで、そんなことを知っているかと言うと、全部持ってるからです


*3ジョルダーノ・ブルーノ『無限、宇宙および諸世界について』 - 「石版!」





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