時期的には、ちょうどリュミエール兄弟によって「映画」が発明されてから100年経つか経たないか、映画産業が不況っぽい感じの時期だったらしく、日本の劇場もガンガンに減っていて「映画が都会の特権的な文化(!)としてしか生き延びられなくなっているこの時代」と筆者は評している。いわゆる単館系のハコが都会に集まって、都会に縛られた文化を形成した時期、と言えるのだろうけれど、その単館系の映画館がここ数年でバカスカ閉館している今になってこうした文章に触れるのはなんだか趣深いものがある。
筆者が言う「ハリウッドの二度目の死」についても触れておきたい。この当時のハリウッドを筆者は、昔と違って映画関係者が増えすぎたので、増えすぎた関係者を食わすために大作映画が必要だ、でも、そういう大作映画はもうハリウッドの二度目の死に直結している、ヤバい、と警鐘を鳴らしている。のだが、現在も大作は作られ続けているし、ハリウッド映画は死んではいないようである。その読みの不正確さを嘲笑うわけではない。人を食わすために、大作映画が必要だ。この視点は、今でも、そうだよな、映画「産業」って言うからにはそういうことが必要だよな、という気づきをあたえてくれる。
タルコフスキー、武満徹、黒澤明、淀川長治といった人物への追悼文も注目に値するけれども、個人的に最もサイコーと思ったのは、カサヴェテス論。ここ数年、劇場で上映されるときにはなるべく行くようにしてる監督なので、よく語られている内容がわかる。それだけの話なのだが、読むと同じ映画が見たくなる、そういう文章。ブルーレイのボックス、買っちゃおうかな。
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