大江 健三郎
講談社
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立派な小説だな、とは思うけれども、わたしは全然好きではない。というか、よくこんなことが書けるな、と思ってしまった。障害がある子供が生まれる、という作者の経験が本作にも投影されている。それで、主人公夫婦のあいだには、修復しがたい問題が生じちゃってるわけ。「愛は地球を救う」とか考えちゃっているようなテレビ番組制作者目線で言ったら、こういうのって「生まれてきた子供には障害があったけど、夫婦は、ファミリーは幸せです」みたいな物語として処理されるじゃないですか。でも、そうじゃないの。すっごいダメージを負っちゃて、とんでもないことになっちゃうの。それは、まぁ、正直だな、という気がする。どこまでが作者の個人的な経験かは知らないですよ、でも、当然、投影されてるんだろう、と読者は思うじゃない。でも、それは作者の個人的な経験、でありながら、その妻の経験でもあるわけ。もちろん、息子自身の経験でもあって。そういう自分だけのものでないものを、お話にしてしまうところって、どうなのよ、って思ってしまう。わたしがそんな作家だったら、妻はきっと辛い思いをするんじゃないか。
さまざまな痛みが書かれている小説だよなぁ、とは思う。政治的な闘争で挫折して傷ついてる、とかさ(その挫折には一切共感できないけども)。
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