ロベルト・ボラーニョ
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主人公である作家たちは架空の人物なのだが、現実の人物もこの世界に迷い込み、そして作家の批評的な視線にさらされる。たとえば、アルゼンチンを代表する作家、コルタサルとボルヘスはこんな風に言及される。「コルタサルを非現実的で残忍であると酷評し、またボルヘスを、「カリカチュアのカリカチュアである」物語を書き、イギリス文学およびフランス文学のような「何度となく語られ、嫌というほど使い古された」今や落ち目の文学を材料に瀕死の人物を創作している」。
もちろん、この架空の世界に迷い込むのは、現実の文学だけではない。政治、経済、戦争、そして、サッカー。作家のシニカルな目で現実が弄ばれるようだ。なかでも、最高だと思ったのは、ボカ・ジュニアーズの熱狂的サポーターで、フーリガンを組織する作家が、ラテンアメリカのサッカーがヨーロッパのトータルフットボールに対抗する手段として、クライフやベッケンバウアーの暗殺を提案する、というところ。「デブ」というニックネームで呼ばれるこの作家は、危険人物として国際的に指名手配され、行方知れずになっているのだが、サッカー・ワールドカップが開催されるたびに沈黙を破って、スタジアムに姿を現わす……。
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