Cambridge University Press
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主旨としては、印刷技術がで始まっても手稿・写本といったメディアは大変重要なものとして残っていて、それはルネサンスが終わっても続いていたよ、というもの。印刷技術はたしかにインパクトがあるイノヴェーションだったけども、印刷よりもマニュスクリプトのほうが手軽だったから、知識を伝えるメディアとして有効なものだったし、結構息が長かったんだよ、的なことを語っている。
印刷技術だと、同じものを大量に作って配るということには適しているけども、版を作るのにコストがかかるし柔軟性に書ける。たとえば大学のテクストが毎年変わるんだとしたら? でも、学生はたくさんいるのでみんなに同じテクストを配布する必要はある。その微妙なニーズに応えるために、パリ大学では、一年ごとに偉い人たちの審議にかけてテクストの変更部分をチェックして、承認が降りると、改訂があったページだけ写本で作り、学生たちに差し替えさせるというシステムを構築していた、とか書いてある。
この論考、ルネサンスの哲学史というよりかはメディア史である。思想家のなまでがでてくるのは、だれそれがこんなマニュスクリプトを集めていた、とかそれぐらい。しかしながら、修道院や大学、あるいは私設図書館のあり方の違いだとか、出版業者がオンデマンドから大量に作って在庫を持ってという現在の商売に近いあり方に変わる瞬間だとかを捉えているのが大変面白い。もちろん、メディチ家も重要な役割として登場します。
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