ウラジーミル・ソローキン 『青い脂』

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青い脂
青い脂
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ウラジーミル・ソローキン
河出書房新社
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ロシア(というか世界の)現代文学の鬼才中の鬼才、ソローキンの『青い脂』を読む。翻訳がでたのは2012年でだいぶ友達の海外文学好きのあいだでは盛り上がっていたのだが、これはたしかにスゴい。わたしの貧しい読書経験のなかでも、もっとも「え、こんなむちゃくちゃな小説があって良いのか!?」と大変な衝撃を受けた一冊。

なにせ、冒頭から、なんだかよく分からない未来のテクニカル・タームと中国語とが混じった書簡として書かれており(核戦争後の未来の中国化されたロシア語で描かれている、という設定)、リーダブルな日本語に訳されているのにまるで外国語を読むような読書体験を味わうことになるし、物語の鍵となる「青脂」という謎の物体、これがロシアの文豪のクローンが作品を書くとクローン文豪の体に溜まる、という設定で、書簡のなかにはクローン文豪によって書かれた、トルストイやドストエフスキー、ナボコフらのグロテスクなパロディも挿入される。さらには、物語はタランティーノの『デス・プルーフ』ばりの凶悪さによって、突然に断絶され、全然違う話になる……という嫌がらせのような構成が続く……のだが、一時もページを繰るのをやめたくない、と思わせる強烈な吸引力をもっている。

お下劣で、グロテスクで、醜悪な拷問や性描写もサイコーであり、とくにフルシチョフ × スターリンの男色シーンは本作のハイライトのひとつ(この時点で、未来のSF的舞台からどうつながるのか謎に思う方がいらっしゃると思うが、本作、あらすじをどう説明しても嘘になる)。よくもまぁ、こんなことを思いつくよ、と半ば呆れながら読んでしまった。ちょうどソローキンが生まれた国の作曲家、プロコフィエフは「聴衆を驚かすことしか考えていない」と言っていたが、ソローキンもまた同じポリシーの創作者なのではなかろうか。

作中で試みられている言語実験的な試みは、巻頭に引用されたラブレーを彷彿とさせる。が、この作品のあらすじをどう説明しても嘘になるのと同様に、どのような解釈をしても嘘、あるいは本当になりそうな感じがあって、また、そこがサイコーなのだった。どんな批評も受け入れつつも、どんな批評も跳ね除ける、たしかなのは、これがサイコーに面白い物語だ、ということだろう……。おそロシアのおソローキン……。あんまり細かいことを考えないで、読んでいくと良いと思います(たくさん固有名詞がでてくるけれども、あまり気にせず読んで平気です)。

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