イグナチオ・デ・ロヨラ 『霊操』

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霊操 (岩波文庫)
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イグナチオ・デ・ロヨラ 門脇 佳吉
岩波書店
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イエズス会を創設したイグナチオ・デ・ロヨラがまとめたカトリック式瞑想の本。体を動かす「体操(exercicios corporales)」に対して、精神を働かせて整える「霊操(exercicios spirituales)」がある。これを通してロヨラは、神秘体験を得て、神の意志を見出すことができるとしている。訳者は、禅宗系の学校で禅の修行を取り入れた教育を受け、そこからイエズス会で洗礼を受けた人物。かなり詳細な解説がついていて、そこでは霊操と禅との共通点を指摘しながら、現代の日本人に理解しやすいものとしている……ようなのだが、本文よりも解説のほうが長いぐらいなので、ちょっと本文が入ってこない感じがする。

ともあれ、なかなか内容は面白くて。ロヨラは4週間にわたる霊操のプログラムをかなり細かく作っていて、一週目の何日目には、こういうことを心に思い描け、と具体的な指示が書き連ねられられている。たとえばキリストの受難の場面を想像せよ、だとか、聖母マリアのことを考えろ、とか。ロヨラは人間の想像力を一種の舞台として考えていて、そこに聖書の場面を設営するように指示している。そして、霊操者はただ、その舞台を眺めるだけでなく、まるで自分がそこで体験するかのように心を動かすことが必要なのだ。整えた心のなかに、入っていく、というこの入れ子構造がとても興味深く思ったし、桑木野さんの著作も思い起こさせる。

訳者による改題部分にあるロヨラの伝記的記述も面白かった。もともと騎士の家系に生まれて、バリバリの騎士道教育を受け、絶世の美女とうたわれたカルロス5世の妹、カタリーナに仕えることを夢見て、戦争で戦ったりしてたらしいんだが、あるとき戦いで大怪我を負い、それをきっかけに騎士道から宗教道に路線変更をした、とある。憧れの美女を考えているときは、考えているあいだはずっと良いんだけれども、考えをやめたときにものすげー寂しくなる。けれども、キリスト教のことを考えると考えをやめたあとにも寂しくないし、めっちゃ晴れやかになる! みたいな感じだったんだって。

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