フランセス・A・イエイツ 『世界劇場』

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世界劇場 (晶文全書)
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フランセス A.イェイツ
晶文社
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1969年に発表されたイエイツの『世界劇場』を読む。読みはじめるまで知らなかったが、本作は『記憶術』(1966年)の続編的な位置づけで、『記憶術』で示唆されたロバート・フラッドの記憶術の記述が、シェイクスピアが劇作家として活躍した失われたロンドンの公衆劇場「グローブ座」の謎を解き明かす鍵なのでは……というアイデアを膨らませた中篇である。『記憶術』もまた『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス主義の伝統』と大きく繋がっている作品なので、この3冊は連作と捉えられるだろう(『記憶術』と『ジョルダーノ……』については、当ブログで過去に詳しくまとめた。連載記事のまとめページを参照のこと)。なので、3作を順番に読んだ方がイエイツが立てた大きなストーリーは把握しやすいかもしれない。

ルネサンス建築における理論家としての最重要人物、レオン・バティスタ・アルベルティは、共和政ローマ時代の建築家、ヴィトルーヴィウス(ウィトルウィウス)の理論書を再評価し、自身の建築理論書に反映させた。この建築理論をルネサンス後進国であるイングランドに輸入したのが、建築家、イニゴー・ジョーンズである……という通史にイエイツは、イニゴー・ジョーンズの登場の背景に存在した知的な動きの存在を書き加える。

ジョン・ディー、ロバート・フラッド。前者はルドルフ2世とも交流をもち交霊術などでも人気を博した錬金術師、後者はパラケルスス医学を実践した医師、どちらも生存していた頃から「詐欺師」「いかさま師」という批判を受けてきた人物である。イエイツは、この2人が作り上げた知的風土があったからこそ、イニゴー・ジョーンズは登場できた、という。イニゴー・ジョーンズに先駆けて、ジョン・ディーやフラッドらが、数学的計算によって導かれた「すべての芸術や科学の基礎をなしている比例(プロポーション)と均整(シンメトリー)の理論」を用意していたのだ。また、イエイツはイニゴー・ジョーンズの建築理論、とくにストーンヘンジの調査から、魔術・占星術の影響を読み解いてもいる。建築史、演劇史、思想史、さまざまな流れがひとつのストーリーになっているのは、イエイツの著作を読む面白さだ。

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