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最近聴いた旧譜




南米のエリザベス・テーラー
菊地成孔 カヒミ・カリィ 内田也哉子
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 なかばメモ的に最近聴いた旧譜について書き残しておく。まずは菊地成孔の『南米のエリザベス・テーラー』について。このアルバムが、公式なもので菊地と大友良英が共演している最後の録音だろうか。大友は『DEGUSTATION A JAZZ』でも聴くことができるプリペアド・ギターを演奏しているが、この壊れた美しさが素晴らしい。収録されている楽曲では「ルペ・ベレスの葬儀」がとても好きだ。



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 ピアノが刻むリズムを、三連で分解し、その分解された音符の上を自由に動いていくサックスとバンドネオン、そしてコントラバスの主旋律の、ハマらなさ、が刺激的である。「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」名義での最新作『記憶喪失学』と比べると、ソリッドなところに欠けるのだが、これはこれで良い。また、『記憶喪失学』では作曲者としても名を連ねている(『南米のエリザベス・テーラー』ではストリングスの編曲をおこなっている)中島ノブユキの対位法的な作曲技法と、菊地成孔の和声法的な作曲技法との違いを比べるのも面白いかもしれない。菊地成孔の楽曲は、装いこそ、クラシカルなものなのだが、構造的な密度において、本当にクラシカルなものとはまるで別物であることが如実にわかる。



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 それからロキシー・ミュージックの初期作品三枚も聴いた(こちらは、会社の上司から借りたもの)。このバンドについては高校時代に『Avalon』を聴いたほかは「初期にブライアン・イーノが在籍していた」という知識だけで止まっていたのだが、実に面白いバンドだ、と思った。まず、デビュー作から枚数を重ねるごとにどんどん音楽が洗練されていくところが面白い。





 デビュー作は、キング・クリムゾンのオリジナル・メンバーでもあるピート・シンフィールドのプロデュースで、初期クリムゾンを彷彿とさせなくもないのだが、そういったプログレ感独特のダサさ、もっさり感はセカンドの『フォー・ユア・プレジャー』では皆無。さらにブライアン・イーノ脱退後(入れ替わりにエディ・ジョブソンが加入)のサード『ストランデッド』では洗練されたポップ感が大爆発しているのであって、最高だ。はっきり言って、初期二作に参加していたイーノの存在とは、このバンドにとって邪魔なものだったのではないか、とさえ思えてくる。やはりブライアン・フェリーの妖しいダンディズムが全開になってからが良い。





 ファーストの一番最初の曲ではビートルズやワーグナーの有名なフレーズをパロディ的に楽曲に組み込んでいることが「ロックの脱構築」、「マッシュアップの先駆け」などと評価されているそうだが、これは明らかに褒めすぎだろうと思う。第一、ファーストはアンディ・マッケイが演奏するリード楽器がヘタ過ぎて萎える(シンセによって、音色を変調させてようやく聴くに耐えるレベル、というヘタさ。アルバート・アイラーをインポテンツにしたような不甲斐なさだ)。とはいえ、ブライアン・フェリーの特徴的な細かいヴィブラートを用いる発声は、ファーストの時点で既に完成されていて、聞き逃せないところではある。60年代イギリスの女性アイドル歌手がこういう歌い方をしていた印象があるのだが、この技術は「ノン・ミュージシャン」でも簡単に習得できるものなのだろうか。



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 ブライアン・フェリー、面白い顔すぎ。





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