日本の電子音楽 @草月ホール

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プログラムA:テープ作品集「電子音楽の夜明け」


黛敏郎:《素数の比系列による正弦波の音楽》(1955)


黛敏郎:ミュージック・コンクレートのための作品《X,Y,Z》(1953)


諸井誠+黛敏郎:《七のヴァリエーション》(1956)


高橋悠治:《フォノジェーヌ》(1962)


真鍋博:『時間』(映像作品。音楽:高橋悠治。1963)


一柳慧:《パラレル・ミュージック》(1962)


武満徹:テープのための《水の曲》(能楽付。1960)


武満徹:《怪談》より<木>、<文楽>(1964/66)





プログラムB:テープ作品集「大阪万博へ」


柴田南雄:《電子音のためのインプロヴィゼーション》(1968)


松平頼暁:テープのための《アッセンブリッジス》(1968)


三善晃:《トランジット》(1969)


一柳慧:《東京 1969》(1969)


湯浅譲二:《ヴォイセス・カミング》より<インタヴュー>(1969)


湯浅譲二:《スペース・プロジェクションのための音楽》(1970)


湯浅譲二:ホワイト・ノイズによる《イコン》(1967)


坂本龍一:《個展》(1978)





プログラムC:佐藤聰明 作品集


《エメラルド・タブレット》(1978)


《リタニア》(1973)


《宇宙(そら)は光に満ちている》(1979)


《太陽賛歌》(1973)


 アリオン音楽財団の主催による「日本の電子音楽」を聴きに行く。半日以上ずっとその手の音楽を聴き続けるという、気合と根性が試されるイベントだが会場はほぼ満席。日本初の電子音楽である黛敏郎のミュージック・コンクレートのための作品《X,Y,Z》から、大阪万博というイベントと同時期に作られたテープ音楽を、マルチ・チャンネルで聴くプログラムA・Bは坂本龍一が選曲ということもあってか? 正直なところ、ここで坂本の名前が出てくることに「客寄せパンダ」以上の意味を見いだせないのだが*1、極めて聴く機会が少ない貴重な作品が聴けたのは良かった。





 今回初めて聴いたもののなかでは、一柳慧の《東京 1969》が特にカッコ良かった。落語の「時そば」に始まり、ベトナム戦争のニュース、そしてバキバキに歪められたロックや演歌などがコラージュされ、そして「時そば」に終わる、というとんでもない作品なのだが、音源があったら是非とも手に入れておきたいものである。ビートルズの「レヴォリューションNO.9」と、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「シスター・レイ」を足して二で割らなかった、ぐらいに素晴らしい。それから、初期のシンセサイザーの音は生々しく、ときに暴力的なところが魅力的だ、と再確認する。





 またプログラムCは、これもまた特別有名でも注目もされていないであろう作曲家、佐藤聰明の特集。彼の作品については、本日も演奏された《リタニア》の録音を聴いて「日本にこんなにも洗練されたミニマリストがいたのか!」と驚かされた覚えがあるが、予想以上に楽しめた。ディレイによってピアノのアタックと残響が滞留し続け、持続的なクラスターを形成し、河の流れのように響く。この効果が素晴らしい。また、暗闇のなかで演奏された彼のテープ作品におけるモワレのように蠢く音響も「早すぎたエレクトロニカ」 のようだった。





 純粋なテープ作品をコンサート会場で聴いたのは、二度目である。前回はシュトックハウゼンの演奏会で《少年の歌》だったが、ステージ上に人間が立たない「生演奏」に触れる感覚にはまだ慣れない。今回の演奏会では、テープに録音された音楽を(おそらくデジタル化して)リアルタイムに音の位置を操作するという形式を取り、この意味で「生演奏」は行われていたのが、戸惑いは隠せない。おそらくその戸惑いは、会場全体に共有されていただろう。テープ作品の終わりと共には拍手が起こらない。拍手は、会場に来ていた作曲家のために捧げられ、テープ作品とサウンド・ディレクションの「演奏者」にはプログラムの終了ごとに、儀礼的に行われるのみである。このような現象を見るにつけ、いかに現代のコンサート、というものが儀礼化されたものか分かるような気がする。




 言うまでもなくテープは順次にしか読み取られない。このような性質が音楽を、交響曲のような物語性へと縛り付けている。初期のテープ作品に感じられる展開の物語性については、メディアの特性が関連しているのではないか、などとも考えた。ちなみにこの演奏会は第二五回<東京の夏>音楽祭2009の一環としておこなわれた。この音楽祭、なんと今年で終了とのこと*2。毎年、楽しみにしていた音楽イベントだったので、終了してしまうのは残念である。




*1:そして坂本による作品は明らかに蛇足だ


*2no title





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