坂本邦暢 『アリストテレスを救え 16世紀のスコラ学とスカリゲルの改革』

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7/6(木)、7/7(土)に立教大学で開催されたシンポジウム『人知の営みを歴史に記す 中世・初期近代インテレクチュアル・ヒストリーの挑戦』での各発表の動画が公開されています。そのなかから二日目のトップバッター、坂本邦暢さんの発表『アリストテレスを救え 16世紀のスコラ学とスカリゲルの改革』を観ました(発表で使用されているパワーポイント資料はこちらでダウンロード可能です)。タイトルの勇ましさがすごいですが、メインになるのはユリウス・カエサル・スカリゲル(1484 - 1558)の霊魂論について。まずはスコラ学で主流であったアリストテレスの生命論について非常に簡潔な整理があり、そこからイタリアにおけるアリストテレス主義者の解釈(そこではジローラモ・カルダーノの学説が参照されます)、コレに対してスカリゲルはどのようにアリストテレスを解釈しなおし、アリストテレスを救おうとしたのか、というストーリーが展開され、解釈史・学説史の流れと、当時の社会的な文脈がクロスしながら進行していくのがとても魅力的でした。

北イタリアにおける大学では神学部の力が弱く、アリストテレスの書物を神学的にどのように読み解くかという主題はあまり重要に思われず、その代わり、アリストテレスを自然主義的に読み解く傾向が生まれました。そこでは有機体を形成する霊魂の働きが、土・水・火・空気という四元素の働きへと還元され、いわば物質主義的な生命論が活発になります。しかしこれでは教会が説いている「霊魂は不滅である」という法則が危うくなってしまう。霊魂の特権性を回復することが要求され、スカリゲルは霊魂の自律性を主張したのでした。それは同時に「アリストテレスを救え」という命題と重なっていた……発表の肝の部分を少しご紹介いたしました。詳しくは発表動画をご覧ください、と言うほかありません。日本ではほとんど無名と言って良い人物ですが、スカリゲルは「犬には犬の霊魂が、人には人の霊魂が」と生物それぞれに霊魂を設定したことは種の概念とも通じますし、発表の締めの部分は、スカリゲルの生命思想と20世紀のオートポイエーシス概念とを繋げて読む、というファンタジーをも想起します。

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オシテオサレテ(坂本さんのブログ。とても勉強になる記事が満載)
坂本さんの発表の文献表

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