指揮=広上淳一夏休み前の読響定期は広上淳一による武満、バルトーク、リムスキー=コルサコフという濃い三本立て。中プロの《ヴィオラ協奏曲》ではベルリン・フィルの首席ヴィオラ奏者である清水直子がソリストとして登場し、豪華な一晩となりました。
ヴィオラ=清水直子
武満 徹:トゥイル・バイ・トワイライト (読響1988年 創立25周年記念委嘱作品)
バルトーク:ヴィオラ協奏曲
リムスキー=コルサコフ:交響組曲 「シェエラザード」 作品35
武満の《トゥイル・バイ・トワイライト》は、彼の作品のなかでもメジャーな部類に入る作品かと思いますが、読響からの委嘱作品であり、モートン・フェルドマンへの追悼作品だとはこの日初めて知りました。言われてみると、タケミツ・トーンだと思われていたものが、フェルドマンの作品を2倍のテンポで演奏したようにも聴こえるから不思議。バルトークについてはカシュカシャンによる録音で聴いていましたが、生で聴くとオーケストレーションが未完成のままバルトークが亡くなったのは残念だな、と思わされました。私は、ポートレイトから想像される、痩せた感じ、厳しい感じ、骨が透けて見える感じをバルトークの管弦楽作品に求めてしまっている。補筆によって完成されたオーケストラには、透徹さをあまり感じず、なんかコレじゃない感を受けてしまいます。
正直、前半の演奏はよくわからなかったんですよね。ヴィオラのソロは素晴らしく、ハスキーな声で歌う女性歌手的な音色が堪能できましたけれども。アンコールでは読響の首席ヴィオラ奏者である鈴木康浩とのデュオも披露してくれて大満足でしたし、このサプライズは普段聴いている読響のヴィオラ・セクションがいかに優れたものかを示していた気が。鈴木さんによるヴィオラは音を豊潤に響かせるタイプで、ヴィオラという楽器の魅力を清水さんとは違った角度から聴かせてくれる気がしました(あとむちゃくちゃ音がデカい)。でも、広上さんの指揮はよくわからなかった、っつーか全然ハマらなかった。
後半の《シェヘラザード》は良かったです。なんというかマニュアルシフトの国産RV車で山道をクルーズしてる感じ、というか。ド名曲、と言われていてもとにかくクドい音楽なので、CDすら持ってない曲なんですけれど(CD持ってても聴き通さなそう)、飽きない限りは聴いてて楽しいな、と思わされました、そう飽きない限りは……(飽きるんだよ!)。ここでの指揮は、リムスキー=コルサコフのオーケストレーションの良さ、というか、仕組みを余すところなく伝えてくれるものだったように思います。ラヴェルやリヒャルト=シュトラウスのようなバブリーな豊かさではないですけれど、劇的な効果を感じさせる仕掛けが随所に施されているんだな、となんかひたすら感心しました。
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