近代の科学者たちが、我々が生きる生物界や地球をどのように捉えてきたのかをオムニバス的に読める「科学史」の本として、刊行から30年以上経っていても現役の魅力を持っているのもスゴい。というか、30年前に日本の研究者でもない人がこれだけ科学史の研究書を読んでモノを書いていたことに驚かざるを得ない(やっぱり荒俣『先生』だなあ……と素直に感服した)。図版や魚類に対する筆者の愛情を感じさせる雑記的な記述から、ズバズバと歴史の話に入っていき、高いテンションで読ませ続けてくれるので全然飽きない。18世紀の博物学的著作から様々な図版が引用され、目にも楽しい本である。こうした図版を古い本から切り出したものをちょうど先日パリの蚤の市で売っているのを見ていて、本書を読んだら「アレ、買っとけば良かったかなあ」とちょっとだけ後悔してしまった。
個人的な関心としては、山田俊弘さんの博士論文『17世紀西欧地球論の発生と展開』とのつながりも感じた。本書で扱われているのは18世紀以降の話だが、それは山田さんの博論で論じられる時代のちょうど「後の話」として位置づけられるだろう。石を形成する成分を含む古代の海水からの結晶作用によって大地ができたと唱えた「水成説」と、地下の熱の作用によって大地が地上に噴出したと唱えた「火成説」とのあいだにおこった論争や、大地が複数回の天変地異によって作り替えられていったとする「激変説」と、天変地異ではなく水の浸食作用によって徐々に変化していったとする「斉一説」との論争が、簡潔にまとめられていて地質学史的な記述もちゃんとあるし、化石の話などはステノの業績への言及がないのが不自然な感じにさえ感じられる。この博士論文をもとにした本が出版されたら、もう一度本書を開いてみるのも面白いかもしれない。
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