コンドルセ
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言葉や火は神によって与えられたものではない。それらは理性によって開発された人類の「道具」として描かれる。過去の人間たちも、我々と同じ「理性」を持っていたはずで「こうすればもっと便利なのでは?」、「これ使うと良いんじゃない?」なんて利便性や得なことをを選択しながら生きていたハズである、という人間観があるだろう。コンドルセにとっては宗教もある種の社会的機能を果たす道具である。こうした合理的な選択をする生き物として描かれた人間や社会の機能の描写には、経済学や社会学の源流を読み取れる。
人類史を10期に区分したコンドルセは、その最後の第10期に「人間精神の未来の進歩」を置く。これはコンドルセが考えた未来のユートピアについての記述だ。理性によって、社会的な善が計算され、そして人間はその善が最大となる選択をおこなう。この選択を可能とするために彼は教育を重要視する。
コンドルセがこのなかで女性も男性と同じように教育すべきであるとしている点も興味深い。「女性は男性と同じ能力をもってはいるが、その程度は低く、あらゆる能力のうちで第一のもの、すなわち天才に育てられることはできないし、男性とすべて同じ才能をもってはいるが、発明の才能はないと考えられて来た」(第2部 P.358)。コンドルセは、こうした「女性は男性よりも劣っている」という説に異議を唱え、教育によって女性も男性と同様に社会の発展に寄与する発明ができるようになるだろう、と言う。功利主義的フェミニズム、とでも言うべきだろうか。女性の社会進出が、社会的な善に寄与する、という意見を持っていた思想家が18世紀に存在していたことは、ちょっとした驚きだった。
翻訳は戦後間もない頃におこなわれたものだが、日本語はそれほど古くなっておらず、旧字体の漢字が使用されていることを除けば、読みにくい部分はない。読んでいて、我々が生きる現代の「社会観」であったり「人間観」との強い連続性を感じることができるし、面白いですよ。
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