菊地原 洋平
勁草書房
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占星術を使った予言書の執筆や医術など、もちろん現代の科学的な視点から見れば、パラケルススがおこなった「魔術」の実践は、怪しげなモノに映るに違いない。けれども、一方で彼は自らの魔術を「自然をくまなく探求すること」とし、「神から与えられた事物の本質」としての知識を理解することを目的としていた。この「魔術」の概念は、おそらく一般的な「魔術」という言葉が持っているイメージ(魔法陣を書いたり、気味の悪い色の液体が煮えた大きな鍋で薬を作ったり……)とは大きく異なっている。むしろ、現代の科学的な態度とそう遠くないのでは、と感じるのではないか。怪しげなイメージがつきまとうパラケルススの業績を辿ることによって、怪しげな魔術のイメージの書き換えを迫るところに大きな驚きがある。
本書では、パラケルススの魔術概念とメランヒトンの自然哲学概念(関連エントリー:デザイン論の源流はどこにあるのか(メランヒトンのデザイン論について))との近さにも気づかされた。世界を理解することによって、神を理解する、というデザイン論者としてパラケルススを理解しようとすると、彼の学究的な態度ももっとスムーズに理解できそうである。
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