スラヴォイ・ジジェク
筑摩書房
売り上げランキング: 159,494
筑摩書房
売り上げランキング: 159,494
秀逸だな、と思ったのは、アメリカの急進的右派ポピュリストたちが、どうして自らの利益になる政策を支持できないのか? その不合理な選択について分析しているところ。これを単にポピュリストたちが愚かだからだ、とか、彼らを支配する階級がイデオロギーをすり替えて洗脳しているからだ、とかいうだけでは不十分である、とジジェクは言う。これはイデオロギーへのフェティシズムである、と切って捨てているのは気持ち良ささえある。あと、ベルルスコーニへの評価とかすごく笑った(人間らしさの道化の下に隠された冷徹さ、そしてそれはプーチンと似てる、とか)。
批判理論とラカン派が悪魔合体したら、キレキレができちゃいました、的なそんな感じで読んでいたが、まあ、これも「伝わらない本」「届かない本」であるのだろう。ジジェクがどんなに人間的な社会を標榜してプロレタリア独裁によるコミュニズムの実現を夢想していても、それは彼が批判する人々(例えば、ポピュリスト)は見向きもしない。ゆえに、彼の批判や批評を、社会への精神分析だとするならば、治療は見事に失敗するだろう。じゃあ、一体誰がジジェクを読んでいるのか。ジジェクの声は誰に届いているのか、と考えてしまうのだが、やっぱり、こういう本を読んで「(政治活動とかするわけじゃないけど)面白い」と思う人なんだろうな、と思う。ポル=ポトとかに真っ先に虐殺されちゃうような層、というか。
コメント
コメントを投稿