Cambridge University Press
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引き続き『The Cambridge History of Renaissance Philosophy』を読む。3本目の論考はCesare Vasoliによる「The Renaissance concept of philosophy」。ルネサンス期の哲学についてかなりざっくりとした大枠をあたえてくれるもの。これからルネサンスの頃の哲学や思想を勉強してみたい、という人にはぴったりと言えるだろう。内容についてはかなり教科書的だし、扱われている人物も有名な人ばかり。論考の前半部分に書かれている、どうしてこの時代にグレコ=ローマンな古典に注目が集まったり、新しい文化がはじまったのか、という話が勉強になった。
そこには出版が急速に産業として発展したことや、そもそもアラビア世界で保存されていたギリシャの文献が西ヨーロッパに入ってきた背景もあるのだけれど、中世と言われる時代に支配的だった教会権力と、新たに生まれてきた市民たちのあいだで、知の世界における権力闘争みたいなものがあったんだな、と思う。こないだ読んだ『哲学の歴史』第3巻に書いてあったと思うのだが、中世において、自分の生まれた身分からランクアップ(立身出世)しようと思うなら、教会に入って必死で勉強して、偉くなるぐらいしか方法がなかった。だから、知の世界においても神学が最重要だったのは当然であろう。
しかし、13世紀後半から14世紀前半になると、商売で儲けて成り上がっていく人がでてくる。彼らにとっては別に神学にとか重要じゃなかったし、そもそも神学が難しくなりすぎて、手に負えないよ、ということになってくる。そんなことやって、なにになるんだ、と。で、代わりに求められるようになったのは、法律であったり、あるいは医学であったり、という実学的なものであり、さらには歴史とか文学とか生きるための道徳だとか文学的なものに目が向けられた。つまりは、難しいことじゃなく、役立つことや楽しいことが求められた、ということであろう。
ルネサンスには大きな知の変革があり、それは近代にも受け継げられていく。その変革には、知識人たちのあいだでたまたま古い文献を手に取った人が「うおお、なんだこのスゴい本は! 昔の人、すげえ」という発見もあったんだろうけども、社会的な要請として、そういう変化が当然であったのだな、ということがわかる。
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