ジーン・ウルフ『独裁者の城塞』(新しい太陽の書 4)

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独裁者の城塞 新しい太陽の書 4 (ハヤカワ文庫SF)
ジーン・ウルフ
早川書房
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 いよいよ「新しい太陽の書」4部作の最終巻、単身北へと進み戦場へとたどり着いたセヴェリアンは、兵士の死体を「調停者の鉤爪」の奇蹟によって復活させたり、ペルリーヌ尼僧団に助けられたり、またもや時空を超越した存在と出会って世界について教わったりするのだが、最終的には独裁者の脳髄をセヴェリアンが食べる、という儀式によってセヴェリアンが新しい独裁者となったり、自分の生まれの秘密を知ったりし、そして新しい太陽を求める旅にセヴェリアンが旅立つ(セヴェリアンたちの冒険はまだはじまったばかりだぜ!!――ジーン・ウルフ先生の次回作にご期待ください)……というなんとも言えないエンディングを迎えて、個人的には拍子抜けだった。SFってこんな感じで良いの? こうした小説をあまり読んだことがないものだからわからないのだが、ジーン・ウルフが書いている中世哲学まがいの、あるいは量子論的な存在論・時間論が物語上、はったり以上の機能をもっていないように思われてしまう。なのだが、あんまり笑えないしねえ……せめてピンチョンみたいに面白おかしく書いてくれれば良いのに。物語がセヴェリアンのご都合に合わせて進行するのも、セヴェリアンは次世代の独裁者となることがあらかじめ決定されていたためであり、かつ、超越的な存在であるクリーチャーたち(過去・現在・未来のどの時間にも偏在する神的な存在)もそれを知っていたからセヴェリアンを助けていたのだ! という具合に予定説的な説明がなされているのも「じゃあ、これまでの長い話は全部茶番みたいなものじゃんか!!」とか思った。テクノロジーの記述なら『Newton』読んでいたほう良いと思ったし、哲学っぽい話ならそりゃ中世哲学の本を読んだほうが楽しいですよ、たぶん。というわけで「新しい太陽の書」より面白い本として以下の2冊をオススメします!!






神を観ることについて 他二篇 (岩波文庫)
ニコラウス・クザーヌス
岩波書店
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 追記(本当はこんな風にツマラナカッタ!みたいなことを書くつもりじゃなかったのだ。しばらくして書こうと思ったことを思い出したので書いておく)しつこいようだが私にとってのこの作品は『ナウシカ』と似たような設定をもったもののように思われ、かつ、対照的な終結部をもっているようにも感じられた。人によって作られしものが神的な振る舞いをおこない、そして、実は背後にはかつて存在していた人類によって敷かれた運命のレールのようなものがあって、登場人物たちはそれに翻弄される。いわば世界がかつての人類にプログラミングされたかのような世界観。このプログラミングが「予定」なのである。かつての哲学者たちが問うたように、こうした予定のもとでは人間の自由意志が問題とされるだろう。セヴェリアンとナウシカが対照的であるのは、この問題に直面したときの選択が真逆であるからだ。セヴェリアンは予定へと順応し、それに従ってプログラムを遂行しようとする。しかし、ナウシカは予定を拒否することで自らの自由意志を尊重しようとした(ナウシカが予定外の存在、となることにより、それらのプログラムは消滅してしまう)。私が好ましいと思えるのはやはりナウシカのほうだ。圧倒的な存在である神が立てた予定によってすべてが決められた世界は、あまりにも甲斐がない、と思う。




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