ジーン・ウルフ『警士の剣』(新しい太陽の書 3)

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警士の剣(新装版 新しい太陽の書3) (ハヤカワ文庫SF)
ジーン・ウルフ
早川書房
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 セヴェリアンとドルカスは目的地であるスラックスという地方都市にたどり着く。そこが「城塞」を追われたセヴェリアンが死刑執行人として、また監獄の管理者としての任務地だった。ここでセヴェリアンは人々に恐れられつつも、それなりに高い地位と権力を約束された生活を送るはずだった。しかし、安住は長く続かない。セヴェリアンの愛人であったドルカスは、セヴェリアンの生業と根本から結びついている「死」を目撃することによって、自分がどこからやってきたものなのかについての記憶を取り戻し彼の元を去ってしまうし、セヴェリアンは自分が殺すはずだった人物を逃してしまうことによってその安定した地位からの失墜を余儀なくされる。ここから再びセヴェリアンの遍歴がはじまるのだ。行くあてを失った彼は「北」で長いあいだ続けられているという戦争に参加しようと目論んで旅を続ける。 訂正 続巻を読んでいたらセヴェリアンが「ペルリーヌ尼僧団」を探して北へ向かうよう「独裁者」に命ぜられていたことを思い出す。それでもそれが忘れさられるぐらいだから、動機がよくわかんないんだよな……。





 しかし、この旅の動機がはっきりとしない。ドルカスがスラックスを離れたのは、自分がやってきた場所(帰るべき土地)へと帰還する、という明確な目的があった。これとは対照的にセヴェリアンの旅を続ける理由は見えてこない。「なんとしてでも生きつづけたい」だとか「最愛の人を守るために……」とかいった強い意志が感じられないのだ(なんといってもセヴェリアンの最愛の女性は、記憶のなかにしか存在しない、という理由もあるのだろうが)。にも関わらず、セヴェリアンのもとには世界の謎を知る人物が次々と現れ、そして、セヴェリアン(と読者)にウールスという世界の秘密を授けて去っていく。こうした行き当たりばったりにさえ感じられるセヴェリアンの性格には、「すべてを記憶している」にも関わらず、自分の出自については一切知らない、という要素の影響が強く感じられた。





 また、セヴェリアンの性格描写に関して言えば読者の理解を拒むように書かれているのでは? と感じられる箇所も少なくない。旅の途中でセヴェリアンは、自分と同じ名前をもつ少年と一緒に旅を続けることになるのだが、この少年があまりにもあっけなく死んでしまうと、セヴェリアンもまたあまりにもあっけなく少年を忘れてしまったように振舞ったりする(すべてを記憶しているのにも関わらず!)。セヴェリアンは少年の父親を名乗り、少年はセヴェリアンを父親と呼ぶ。ふたりの旅路の過程は、とても美しく心温まるものとして描かれているのにも関わらず……。




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1 件のコメント :

  1. いつも楽しく観ております。
    また遊びにきます。
    ありがとうございます。

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