村上春樹 『職業としての小説家』

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職業としての小説家 (Switch library)
村上春樹
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今年も「今年こそノーベル文学賞か!?」とニュースで騒がれていた小説家による初の自伝的エッセイ。本書にはこの作家が考える小説家としての資質や書き方についてのアイデアが詰まっているのだが、既刊のエッセイやインタヴューですでに語られたことと結構重複感がある。それだけこの人はずっと同じスタイルでずっとやってきた、ということなのであろう。こうしてまとまった形で、作家の考えが出されると晩年期みたいであるが、これからも面白い小説を書いてくれ〜、と思う。

重複感がある内容でありながら、おや、と思ったのは、作家がこれまで受けてきた日本の批評や文学界でバッシングに近いもの(こんなのは文学じゃない、だとか)に対して、自分はどう思ってきたか、についてこれまでで一番はっきりと書かれている点だ。これまでの本だと、なにを言われても気にしないで過ごしてきた(なにを言われても読者はついてきてくれたし)とスルーしてきた風に言ってきたと思うんだが、今回特に海外で自分の本の本を出すためにいろいろ尽力したことについて「日本であれこれ言われて、ちょっと頭にきてやってやろうじゃねえか」と思って進めた、的なことが書いてある。

作家は海外進出にあたって、エージェントを見つけ、翻訳者と熱心にやりとりし、売り込みもやった、と営業努力をかなりしたみたいである。こんなことこれまで書いてたか? と思ってちょっと驚いてしまったね。村上春樹の小説が海外で読まれていることについて、海外でも受容されるような普遍性みたいなものがあるんだろう、と思ってきたが、なんだ、営業努力もあったんじゃん、勝手に読まれてったわけじゃないのね、と気付いたのだ。そんな海外向けの営業をそれまで日本の作家のだれがしてたんだ、と考えるとおそらくだれもしてないだろうし、実際にそれで成功したのもスゴい。

それにしても、なぜ、この人の小説って嫌われるんだろね。批評家だけじゃなく「今年こそノーベル文学賞か!?」というバカ騒ぎについて「こんな人が評価される意味がわからない。全然良くない。バカみたい」みたいに言う人がいるじゃないですか。自分がわからないものに対してそういう風にクサすって、相当に子供じみた行為だと思うんだけども(そしてわかっていて『ゴミ』っていうのと、わからなくて『ゴミ』っていうのとでは全然違う)。その嫌われポイントがいまいちわからない。あと海外の読者にも「ハルキ・ムラカミ? あんなものはメルドーだ」って言う人がいるのかな。村上春樹大好きな海外読者の声ばかり聞くけども。

なお本書の刊行時に、紀伊国屋書店が買い占めて、それを他書店に供給するという「反Amazon」的な流通戦略がちょっと話題になっていたが、なんか普通にAmazonでも買えるみたいである。

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