ユーリ・バシュメットの映像集

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 Youtubeにユーリ・バシュメットの映像がアップされている。現代のヴィオラ奏者のなかで、最も人気があり、そして最も甘い音を出す人として知られる演奏家の演奏をこのようにして観られるのは大変喜ばしいことである。


 現在は自らモスクワ・ソロイスツという弦楽グループを主宰し、そこで指揮活動も行っているバシュメットだが、アップされている映像の多くがモスクワ・ソロイスツとの演奏会の模様。「自分で組織したグループを、自分で指揮をして、自分でソロをとる」……ってまるでマイルス・デイヴィスのようだけれども、演奏はやっぱり素晴らしい。硬質な表面のなかに、艶のある芯を持った太い音色はこの人にしか出せない特別なものだと思う。



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 特にこの映像。演奏している曲はパウル・ヒンデミットによる《葬送音楽》。イギリスの国王だったジョージ五世の葬儀のために作曲され、ヒンデミットが自ら初演をおこなった曲である(彼はヴィオラ奏者でもあった)。色彩を欠いたモノトーンの瞑想的音楽を、しっとりと歌い上げていく。普段は濃厚な表現を多用するバシュメットがここで見せる抑制は、幅の広さを感じさせる表現である。素晴らしい。また、ここまで『ヴィオラのために書かれた』ということを実感させる曲も珍しい、とも思う。



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 もうひとつ聴いてもらいたいのはソフィヤ・グバイドゥーリナのヴィオラ協奏曲(こちらはモスクワ・ソロイスツとの共演ではない。指揮はセミョン・ビシュコフだろうか)。グバイドゥーリナは一時期アルフレート・シュニトケや、ギヤ・カンチェーリなどとともに“ポスト・ショスタコーヴィチの作曲家”として紹介されていた旧ソ連出身の女性作曲家。この作品は、その先輩格にあたるドミトリ・ショスタコーヴィチへのオマージュも含んでいる(ところどころに彼のイニシャルから取られた『D-Es(S)-C-H』の音形が用いられている)。


 バシュメットの超絶技巧がとにかくすごくて、楽器がブッ壊れそうな感じなのだが、それ以上に感心してしまうのはグバイドゥーリナの音楽を追いかけていくカメラワークの上手さ。ヴィオラの下地に、様々な楽器の音色が重ねられていく様子をとても細やかにカメラが追いかけていく、その解説的な視線が面白い。


関連エントリ

本当はカッコ良いヴィオラについて - 「石版!」*1




*1:今回紹介した音楽のCDなどはこちらで取り上げました





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