アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『すべては消えゆく』

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すべては消えゆく (白水uブックス―海外小説の誘惑)
アンドレ・ピエール ド・マンディアルグ
白水社
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 (ブログに記録しているところによれば)およそ一ヶ月半ぶりに小説を読む。しばらく小説に遠ざかっていたのは「小説ばかり読んでいるとバカになる」と思っているからなのだが、久しぶりに読んだら「やっぱり、小説って面白いよなぁ……バカで良いよ、もう……」などと思ってしまう。それは一重にマンディアルグの筆力によるものであろうが。そう、マンディアルグである。フランスの幻想小説の大家の最後の長編を読んだのだ。これは、三島とダンテとジョイスをごちゃまぜにして、それをものすごく込み入っていながらも美しい文章で書き下ろし、かつ、官能小説すれすれのエロティックな描写を挿入したというとんでもない作品だった。話の筋として大した話ではない――ユゴーという初老の男性が地下鉄に乗ったら、車内で化粧をする美女に出会い、その美女に導きのままにパリを練り歩き、さらには異界的な官能の館へとたどり着く……そして……――のだが*1、主人公の妄想アクセル全開さ加減が最高で、自然に私はこの初老の主人公に対して、id:Delete_Allというブロガーの姿を重ねてしまいとても面白く読めた。ということで、id:Delete_Allに全力でオススメしておくが、きっと彼ならばこれを自分の小説として読んでくれるだろう。



「われわれのダンスはもう十五分以上も続いているし、わたしがこの遊戯の導き手だとはいいながら、込みあげはじめた溶岩をもうこれ以上抑えることができそうにない。これを最後の一滴まで飲みほすことがお前の役目、いや、それこそお前の二股かけた職業の務めであり、お前がわたしという補佐を得て、祭祀を司るつもりがあるというのなら、お前の務めに女神ケレスの大祭司の役をつけ加え、長い日照りのあとに雨を降り注がせる儀式を執りおこなうことにしよう」



 なんという過剰なメタファーであろうか。しかしながら、この表現の意味するところは隠喩に用いられた言葉の本来の意味を乗り越えて、性的な意味をやすやすと伝えてしまう。このとき、不思議なのは表現を表現する「字面」そのものが性的に思えてくることだ。実のところ、官能小説、というジャンルの小説に触れたことは無いのだが、そのジャンルにおいて用いられている隠語の数々にしても、もはや字そのものが性的に読めてしまう。「蜜壷」あるいは「恥丘」という風に(それにしても、なぜこのような隠語には画数が多くてカッコ良い漢字が用いられているのだろうか)。以上はデリダ的に考えられるべき問題であり……云々、えーっと面白かったです。




*1:モチーフの変奏などは大変面白い。むちゃくちゃに洗練されていて、構造がすごくよくわかる





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