先日、平岡隆二さんとお会いしたときにオススメされていた展覧会に足を運んだ。日本の浮世絵がフランスの印象派の画家に大きな影響を与えていることはよく知られている。この展覧会は、ボストン美術館を西洋絵画作品と浮世絵(また、日本の工芸品とヨーロッパの工芸品)を併置することで、和から洋への影響を浮かび上がらせる、意欲的な展覧会だった。印象派絵画はとても人気があるし、今回の目玉であるモネの大作《ラ・ジャポネーズ》はそれだけで人を呼ぶ作品だと思う。けれども、絵画の配置によって、批評的な視座をまじまじと見せられたことに、インスタレーションの妙を感じた。個人的には、焼き物や七宝による装飾が施された刀の鍔が、アール・ヌーヴォー、アール・デコにどれだけの影響を与えていたのかがわかる展示がとても印象的だった。日本の影響下にあるであろう、ブシュロン社のインクスタンドの豪華絢爛さはもはやビザールの域に達していて、とても素晴らしいと思った。
ところで、昨今、こういう日本から西洋へという影響関係は「西洋に影響を与えた日本はスゴい!」というネトウヨ的な美学によってのみ回収されてしまうのが問題にも思う。先日平岡さんに教えていただき、大変感心したのだが、北斎・広重といった有名な浮世絵作家が用いている印象的な「青」が、プルシアンブルー(ベロ藍)という舶来の顔料であったことを考えると「日本はスゴい!」と称揚されるその浮世絵も、海外との交流がなければ存在しえなかったかもしれない。一方方向の影響関係でなく、双方向的な影響関係で歴史を考える視座は、本展覧会の図録に寄せられた世田谷美術館の遠藤望氏による「循環する歴史観」と無関係ではない。過去の展覧会で言えば2011年の「南蛮美術の光と影」や「日本絵画のひみつ」と対にして見るべきものなのかも。
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