ドルフィーが「トラディショナル」だって!

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 元漫画家、元ハードボイルド作家で現在は日本の現代文学のフィールド(最近、沖縄旅行記を週刊誌に書いていましたが)で活動している矢作俊彦のエッセイ。処女長編『マイク・ハマーへ伝言』が大変面白かったので読む。


 エッセイは三部に分かれ、それぞれ普通のエッセイ、日活映画論(大部分は石原裕次郎に関しての)、タイ・アメリカ旅行記となっているのだけれど、どの部分でも鋭く心に刺さるような文章が展開されていて「男に生まれてよかったなぁ」と思いました。魚喃キリコのマンガが男女によって全く理解の方法が異なるように、私はこういった類の文章に対しても、性別によって全く異なる理解が生まれるのではないか、と思います。とくにアメリカ旅行記の後半、筆者がレイモンド・チャンドラーの小説のなかで描かれたバーを探して歩くところなどは、もはやエッセイの領域を超えている。こんなにカッコ良いエッセイは読んだことがない。


 個人的に痺れてしまうのは矢作俊彦からすれば、エリック・ドルフィーでさえも「彼の音楽が前衛であったことなど、私にとって一度もない。実験的であったこともない。絶えずトラディショナルだった」と言い切られてしまうところです。「何の?と問われれば流れ者(エクスパトリエート)の、と答えよう」。パリで客死したドルフィーをこのように表現した人は記憶にありません。どうも若死にしたミュージシャンには、悲劇としての崇拝めいた文章が多すぎますが、矢作の文章はなにかそれとは一線を画したものを描いている気がします。



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posted with amazlet on 06.10.06
Eric Dolphy
Verve (2003/03/03)






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