仏文はエロいという幻想を打ち破るために#3

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孤客―ミザントロオプ
モリエール 辰野隆
岩波書店
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 「フランス文学は本当にエロいのか」を検証するためにフランスの古典文学を読んでいます。第三回は再びモリエール。『いやいやながら医者にされ』とタイトルから笑いを誘う喜劇が面白かったので読んでみました。『孤客―ミザントロオプ』は、『人間ぎらい』というタイトルでのほうが有名か。


 「真の愛は仮借なきところに生まれるのです」などと真顔で言ってしまうほどに頑固で実直な青年アルセストが、どういうわけか浮気もので色んな男に色目を使ってしまう歳若い未亡人に恋をしてしまい……というストーリーですが人間模様がとても面白かったです。17世紀のフランスでは貴族警察署なんてものがあることを知りましたが、劇中のように「自分の作ったソネットを褒めなかった」なんて理由で訴訟沙汰になっていたとしたら状況からして笑えます。


 未亡人がまた「八方美人」もいいところで、登場する男性の人物は大抵この女性に騙されて痛い目に会っているのが痛快。まぁ、最終的には未亡人もちょっと懲らしめられるんだけど、個人的には「騙された!」なんて批難するほうがよっぽど体裁が悪いんじゃないかと思います。むしろ世の中の女性はもっと男を騙すべきでしょう。相手のことなんて一切考えず、高価な装飾品を強請ったりすれば良いんだよ!男なんてみんなバカなんだよ!!しかし、この劇で最も救われないのは主人公で、これは本当に面白い。最初、超マジメな人物として現れるアルセストは、後半どんどん人間性がちぐはぐな感じになってきてそれが人間っぽくて良かったです。町田康(だったと思います)が「フィクションの登場人物は、物語に都合が良いように実際の人間性から隠蔽されているものがたくさんある」と言っていたのを思い出しました。


 エロさは「全然エロくない」。第三回目でやっと「エロくない仏文」に出会いました。





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