仏文はエロいという幻想を打ち破るために#2

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脂肪のかたまり
脂肪のかたまり
posted with amazlet on 06.10.09
ギー・ド・モーパッサン Guy De Maupassant 高山鉄男
岩波書店
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 「フランス文学は本当にエロいのか」を検証するためにフランスの古典文学を読んでいます。第二回目はモーパッサンの短編小説。前回はモリエールの喜劇でしたが、全然関連性のないセレクト(古本屋にあったから……という理由で)。とても面白かったです。


 お話は普仏戦争の時代にプロイセンに占領された街から、フランスがまだ頑張っている土地へと向かう馬車に乗った人たちのロード・ノベル的なもの。タイトル『脂肪のかたまり(ブール・ド・シュイフ)』は馬車に乗っている若い娼婦のアダ名です。まるまると太っていてとってもセクシー。他の乗客は伯爵だとか修道女だとか商人だとかで「娼婦だなんて、まったく汚らわしいね!」と軽蔑しているのですが、ブール・ド・シュイフちゃんはとても良いコなので持ってきたバスケット一杯の食べ物を同乗者に分けてあげることで仲良くなります。


 でも、途中で立ち寄った宿はプロイセンの軍人によって支配されていて「これ以上旅を続けてはいかん!もっともそこにいる娼婦が人肌脱いでくれれば話は別だがね…ゲヘヘ」と偉い人から言われてしまって旅は中断。まとまりかけていた馬車内の人間関係が乱れてしまうのです。この乱れ方とか人間が本音をぶっちゃけちゃってるところの描写がなんとも面白くて良いです。最初、軍人からの要求に娼婦は「敵の軍人なんかと寝れるもんですか!」と反抗し、周囲は「なんて高潔なんだ!」と褒めたてるわけですが、次の日には「あーあ、アイツが軍人にご奉仕してくれたらさっさと旅が続けられるのになぁ……」とぼやいてたりする。ひどいけど面白い。娼婦と修道女以外はものすごく俗悪な感じで描かれてるから余計に。描写もすごく事細か(もっとも荒廃した街の感じにもその筆力は発揮されてるのですが)で「娼婦可哀想!太ってるけど!!」という気持ちになりました。


 エロさに関しては「けっこうエロい」。直接的なセックス・シーンはないんだけれど、間接的な描き方でそれがされていて下手に直接描くよりよっぽどエロい感じがします。例えば、二階でセックスしてる間に立てる物音を一階で聞いてる……とか。『仁義なき戦い』の金子信雄(勝手なイメージ)みたいなインチキ商人がいるんだけど、それが夜中ゴソゴソ起きだして「どれどれ、娼婦の部屋に誰か行ったりすんのかな?」とドアの鍵穴からピーピングしてるシーンも良いですね。





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