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DCPRG/ALTER WAR&POLYPHONIC PEACE @リキッドルーム




FRANZ KAFKA’S AMERIKA
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DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
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再活動開始後のDCPRGの東京でのワンマン・ライヴは無遅刻無欠席記録を継続している俺である(といっても、まだ三回だが)。とくに新曲とかを期待しているわけでもないのだが、今回はアート・リンゼイがゲスト参加する、ということでやはり見ないわけにはいかないだろう……。内容については前回までとほぼ一緒で「ジャングル・クルーズにうってつけの日」から入るセットリストだったけれど(ライヴハウスでの公演ということで、遅いテンポの曲は演奏されず)毎回魅力的なゲストが用意されてしまうと行かずにはいられないかもしれない。ゲスト商法? とでも言えば良いのであろうか。バンドの状態は極上と言って良く、当初の予想通り、ライヴ回数を重ねることでどんどん良くなっている。





ゲストのアート・リンゼイは「あくまでゲスト、お客さん」という扱い。まあ、アート・リンゼイであるし、いつもの芸風を披露してくれれば良いかな、と思っていたけれど期待を裏切らず無邪気な感じで「チュギョーン」とか「ジャシジャシジャシ」とかパーカッシヴなギターを弾いていた。正直いてもいなくても……状態だが、水色のギター持ってステージに現れたアート・リンゼイの姿を拝んだときにはやっぱり感動したし、そのパフォーマンスのブレなさにはホンモノ感を放ちまくっている。アート・リンゼイとは聴いたことない曲をやっていたが、あれは新曲だったのだろうか?





正規メンバーでは、千住宗臣のマンマシーンなドラム・ソロが今回も最強に強まっている。メロディアスなソロではないのだが、手数の密度をどんどん高めていくブラスト具合が圧巻。序盤は丈青のブチキレまくった時期のキース・ジャレット状態なソロも良かったし、類家心平のアルトゥーロ・サンドバルとかあのあたりのソ連→キューバ系トランペッターのごとき超絶スポーティーな演奏も小気味好い。また、大村孝佳のソロも前回よりずっと良かった。この人は一応メタル界から参戦、ということになっているが、実はいろんなカラーを持っている人なのだなあ、と感心する。最初期DCPRGの大友良英が担っていた空気の変え方を、まったく違った形で実現しているようにも思われる。人選として大正解なのであろう。旧メンバー陣は言わずもがなの演奏。津上さんの、二拍三連(だったかな)でリズムに噛み合わさずに、高速でソロを取るところとかカッコ良すぎて死んだ。あとショルキーでのソロは何度観ても笑ってしまうなあ……。野村マンのサックスの人は、超高速なフレーズを打ち出しまくる人に挟まれて大変だと思うけれど、グローヴァー・ワシントンJrみたいなスムースなソロを取っていて、そういう色の出し方は悪くないので、頑張れっ、と思った。





野外→ホール→ライヴハウス、と演奏空間が変わってきていて一番感覚が違うのはベースの鳴り。ライヴハウスでの低音は、空間に広がっていくのではなく、塊としてドシンとくる。これは好き嫌いが別れるところだろうけれど、ダンス・ミュージックとしては正解、でも、正直リスニング向きではなくて、新宿文化センターのほうが音は聴きやすかったと思う。でも楽しそうに踊っているカップルとかを目の前にいるのは楽しいもので、そういうラヴ&ピースな雰囲気とポリリズム大虐殺な戦争状態が一緒くたに味わえるのは良い。





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