スキップしてメイン コンテンツに移動

小川明彦 阪井誠 『Redmineによるタスクマネジメント実践技法: チケット駆動開発+テスト工程管理のA to Z』

Redmineによるタスクマネジメント実践技法
小川 明彦 阪井 誠
翔泳社
売り上げランキング: 19,306
Redmineはオープンソースで開発されているBTS(Bug Tracking System)で、もともとはバグが発生したらそれを修正してリリースするまでにどれぐらいかかるか、とか、修正はだれが担当してるか、とか、それと一緒にプログラム・ソースのヴァージョン管理システムとも連携させましょうか、ついでにガント・チャートも出力しちゃったり……! とかいうクッソ意識高い系のシステムであり、本書はそれを応用して、システム開発全般のマネジメントにも使っちゃいましょうよ! というモノ。

この手の技術書ってツールのインストール方法とかヴァージョンが変わると陳腐化されやすい知識から解説がはじまったりするんだけれど、この本にはそういうのがあんまりない。日夜プロセスやメソッドは改善されていくし、ツールは変化していくけれど「こういう事象にはこういう風に使うとイイっすよ!」というアイデア集として使える。「ウチじゃまだExcelを使って進捗表を作ってるんですよ……」という残念な職場にいらっしゃるIT関係者各位は、これを読んだらまるでRedmineが7つ目のドラゴンボールに思えてくるのではないか。

かく言う私の職場も、こうした便利なタスク管理ツールがなく、大部分の人がExcelで進捗更新して(Notes上に貼られた……)、もちろんそんなの更新がめんどうくさいから、リアルタイムな更新なんかみんなしないわけで、一週間に一度ぐらいしかプロジェクト進捗表が更新されない、なんてザラな環境にあったりするのだった。で、それはあまりに邪悪だ……と思って、せめて自分のチームで使う用にだけでもExcelじゃない進捗ツールがあれば……、と思って、ちょっと前にNotesで作り込んじゃったのね。ホントはRedmineとか導入したかったんだけども、自由な職場ではないので「なんか、こんなRedmineってこんな感じだろう(使ったことないけど……)」と想像しながら。

それは新たな邪悪さの温床では……という感じではあるのだが、これが大活躍で。Excelだとみんな更新してくれないけど、Notesでフォーム作って、ボタンを押せばフィールドに日付が入って、自動で作業状況の集計をしてくれる、ってだけで、めちゃくちゃにリアルタイムに情報が集まり、かつ、たまたま業務でイレギュラーなタスクの割り込みがあったときも「だれがいま一番余裕か!?」っていうのもすぐに把握できるようになったんだよ!!! わざわざ、もう「すみません、いま余裕ありますか……」と雰囲気で恐る恐る作業依頼をしにいかなくても良いんだ!!!!!!

本書を手に取ったのは、Excelじゃないとこんなにありがたい感じになるんだ……じゃあ、ホンモノをRedmineを利用したら、どういうことになってしまうんだろう……と思ったから。読んでみたら「俺の考えたRedmineっぽいモノ」とは、結構違ってて「ウワッ、こういう感じで設計すれば、もっと使い勝手良かったじゃん!(次は絶対パクろう)」とか良いネタ本にもなってくれたし、何より、本書の執筆者たちも「作業の進捗がツールで見えるだけで、こんなに楽になることがあるんだ!」という自分と同じユリイカ感を書いてたのも「そうだよね!」と全力で同意したくなった。

人の管理とかをやりはじめたばかりのIT関係者の方々は、これを読むといろんな発見があると思います。Redmineを導入できなくても、ウォーターフォールでも、職場の状況が見えないことで発生ストレスを、どう解決するかのヒントがたくさん含まれているなかなか射程範囲が広い本だと思います。これキッカケにPMBOKとか、ホントにマネジメントっぽい知識体系にもちょっと興味が広がったりもしたよ。

(なお、現在はHerokuでRedmine動かして、個人的にゴニョゴニョとなにかを試しているところです)

コメント

このブログの人気の投稿

石野卓球・野田努 『テクノボン』

テクノボン posted with amazlet at 11.05.05 石野 卓球 野田 努 JICC出版局 売り上げランキング: 100028 Amazon.co.jp で詳細を見る 石野卓球と野田努による対談形式で編まれたテクノ史。石野卓球の名前を見た瞬間、「あ、ふざけた本ですか」と勘ぐったのだが意外や意外、これが大名著であって驚いた。部分的にはまるでギリシャ哲学の対話篇のごとき深さ。出版年は1993年とかなり古い本ではあるが未だに読む価値を感じる本だった。といっても私はクラブ・ミュージックに対してほとんど門外漢と言っても良い。それだけにテクノについて語られた時に、ゴッド・ファーザー的な存在としてカールハインツ・シュトックハウゼンや、クラフトワークが置かれるのに違和感を感じていた。シュトックハウゼンもクラフトワークも「テクノ」として紹介されて聴いた音楽とまるで違ったものだったから。 本書はこうした疑問にも応えてくれるものだし、また、テクノとテクノ・ポップの距離についても教えてくれる。そもそも、テクノという言葉が広く流通する以前からリアルタイムでこの音楽を聴いてきた2人の語りに魅力がある。テクノ史もやや複雑で、電子音楽の流れを組むものや、パンクやニューウェーヴといったムーヴメントのなかから生まれたもの、あるいはデトロイトのように特殊な社会状況から生まれたものもある。こうした複数の流れの見通しが立つのはリスナーとしてありがたい。 それに今日ではYoutubeという《サブテクスト》がある。『テクノボン』を片手に検索をかけていくと、どんどん世界が広がっていくのが楽しかった。なかでも衝撃的だったのはDAF。リエゾン・ダンジュルースが大好きな私であるから、これがハマるのは当然な気もするけれど、今すぐ中古盤屋とかに駆け込みたくなる衝動に駆られる音。私の耳は、最近の音楽にはまったくハマれない可哀想な耳になってしまったようなので、こうした方面に新たなステップを踏み出して行きたくなる。 あと、カール・クレイグって名前だけは聞いたことあったけど、超カッコ良い~、と思った。学生時代、ニューウェーヴ大好きなヤツは周りにいたけれど、こういうのを聴いている人はいなかった。そういう友人と出会ってたら、今とは随分聴いている音楽が違っただろうなぁ、というほどに、カール・クレイグの音は自分のツ...

土井善晴 『おいしいもののまわり』

おいしいもののまわり posted with amazlet at 16.02.28 土井 善晴 グラフィック社 売り上げランキング: 8,222 Amazon.co.jpで詳細を見る NHKの料理番組でお馴染みの料理研究家、土井善晴による随筆を読む。調理方法や食材だけでなく食器や料理道具など、日本人の食全般について綴ったものなのだが、素晴らしい本だった。食を通じて、生活や社会への反省を促すような内容である。テレビでのあの物腰おだやかで、優しい土井先生の雰囲気とは違った、厳しいことも書かれている。土井先生が料理において感覚や感性を重要視していることが特に印象的だ。 例えば調理法にしても今や様々なレシピがインターネットや本を通じて簡単に手に入り、文字化・情報化・数値化・標準化されている。それらの情報に従えば、そこそこの料理ができあがる。それはとても便利な世の中ではあるけれど、その情報に従うだけでいれば(自分で見たり、聞いたり、感じたりしなくなってしまうから)感覚が鈍ってしまうことに注意しなさい、と土井先生は書いている。これは 尹雄大さんの著作『体の知性を取り戻す』 の内容と重なる部分があると思った。 本書における、日本の伝統が忘れらさられようとしているという危惧と、日本の伝統は素晴らしいという賛辞について、わたしは一概には賛成できない部分があるけれど(ここで取り上げられている「日本人の伝統」は、日本人が単一の民族によって成り立っている、という幻想に寄りかかっている)多くの人に読んでほしい一冊だ。 とにかく至言が満載なのだ。個人的なハイライトは「おひつご飯のおいしさ考」という章。ここでは、なぜ電子ジャーには保温機能がついているのか、を問うなかで日本人が持っている「炊き立て神話」を批判的に捉え 「そろそろご飯が温かければ良いという思い込みは、やめても良いのではないかと思っている」 という提案がされている。これを読んでわたしは電撃に打たれたかのような気分になった。たしかに冷めていても美味しいご飯はある。電子ジャーのなかで保温されているご飯の自明性に疑問を投げかけることは、食をめぐる哲学的な問いのように思える。

2011年7月17日に開催されるクラブイベント「現代音楽講習会 今夜はまるごとシュトックハウゼン」のフライヤーができました

フライヤーは ナナタさん に依頼しました。来月、都内の現代音楽関連のイベントで配ったりすると思います。もらってあげてください。 イベント詳細「夜の現代音楽講習会 今夜はまるごとシュトックハウゼン」