出演:東海大学や昭和音楽大学でヴィオラ・ダ・ガンバと音楽療法を教えておられる志水哲雄の古希記念演奏会を聴きにいく。普段なかなかこうした古楽を聴く機会にめぐりあわず、ガンバという楽器そのものを間近で見たのもこれが初めてだったが(エンドピンがついてないことにもこの日気づいた)コンサートのタイトルどおり楽しい演奏会であった。演奏されたのは17世紀なかばから18世紀初頭にかけての作曲家の楽曲群で、思想家でいうならライプニッツやニュートンの同時代の音楽である。
志水哲雄
福沢宏
三村国広
須藤岳史
染川みかほ
小池香織
鬼澤悠歌
原澄子
上薗未佳(クラヴサン)
曲目:
- M. マレ 《組曲 ホ短調》(ガンバ曲集第2巻)
- 同 《3台のガンバのための組曲 ト長調》(ガンバ曲集第4巻)
- 同 《シャコンヌ ト長調》 (ガンバ曲集第1巻)
- A. フォルクレ 《3台のガンバのための アルマンド、クーラント、サラバンド》
- F. クープラン 《コンセール第12番 イ長調》
- M. コレット 《ガンバ独奏・合奏による協奏曲 “フェニックス” ニ長調》
音楽史と思想史を比べることになんの意味があるのか、と問われると、モゴモゴと口ごもりそうになるけれど、そうした思想家たちが生きていた時代、フランスの宮廷ではこのような音楽が演奏されていたことを想像すると想像図が少し豊かにできるのではなかろうか。また思想史が古代ギリシャから語られるのに対して、西洋音楽史が語られるのはせいぜい9世紀ぐらい、もっと話を限定して、J. S. バッハから始めてしまうなら、音楽史の短さと性急さを感じてしまったり(バッハからたった200年ほどでシェーンベルクに到達してしまうのだから)。
演奏内容についてアレコレ書くほどにはモノを知らない。しかし、同じ門下だった演奏家でも当たり前のように、それぞれで個性が違っていることはわかる。後半のプログラムで演奏されたマレとフォルクレの3台のガンバのための作品では、後者はまだ大学院生を含んだ若い演奏家によって、前者はすでに国内外で活躍している演奏家たちによって演奏された。結果として、前者のそれぞれのクセやアクが強くでた共演よりも、後者のまだ個性が花開く前の演奏のほうが、整った音楽として聴こえた。どちらが優れた演奏であったか、という話ではない。同じ楽器なのにまったく違った音を鳴らせる演奏家の多様性に、音楽の奥深さを感じてしまうのだった。
最後のほうはジンときてしまいましたね。70歳の「先生」をトップにして、愛弟子たちが伴奏をつとめるという構図が。アンコールもパッヘルベルのカノン、とド直球な泣かせにかかる曲でねえ……。70歳といえばカエターノ・ヴェローゾやポール・マッカートニーと同い年、ということになるが、やはり音楽を続けている人は若い、と思う。
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