御厨 貴
中央公論新社
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公文書には、公的に記された出来事の数々が記されている。その一方で、本書で取り上げられている私文書には、公に開かれたスタティックな歴史から削ぎ落とされる、生きた歴史の源が眠っているように思いました。本書の「はしがき」にもありますが、こうしたテキストを読み解くことによって、例えば「維新の元勲を旧知か友人のごとく論評する」こともできるようになる。テキストの向こう側にいるはずの人間を想定して、読み解いていくのは、テキスト読みとして基本的と思われる真摯な態度のひとつでしょう。
昔の日本人の文書ですからコンピューターなんかありません。元々の史料はすべて手書きで、モノによれば字が汚すぎて判読できない……というのもある。そうした困難を乗り越えて研究が進められているわけですが、本書を読むと、なぜ、彼ら研究者がわざわざ、読めない・判らない、の非常にアクセシビリティの惹きつけられるかが少し理解できるような気もします。その理由はとてもシンプルで、単に面白いから、なんでしょうけれど、そうした点でも、本書は単なる歴史読み物、ではなく、歴史家・歴史研究者が日々、どういったテキストを相手にどういう仕事をしているのかを明かすモノです。
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