東京都交響楽団 朝比奈隆
フォンテック (2008-10-21)
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しかし、そうした老人性の痴呆じみた世界観こそがブルックナーの音楽にぴったりとマッチする面もあるわけで。現代のブルックナー指揮者筆頭であるところのスタニスラフ・スクロヴァチェフスキが、理性を突き詰めたスマートさから、常人には計り知れぬ痴呆じみた忘我の世界へと我々を導くのに対して、朝比奈はその鈍重さによって、忘我の世界へと導くのではないか、と思ってしまう。この演奏のスマートではない印象は、もしかしたら東京都交響楽団の小回りの利かない技術的な部分もあるのかもしれない。しかし、だからこそ、一層の鈍重さな素晴らしさが生まれている、とも言える。
これがもしオーケストラがドイツに複数ある放送交響楽団のどれかであったとするならば、まったく違った演奏になっていたのでは(とくに南西ドイツ放送響とかだったなら……と思うのはミヒャエル・ギーレンの演奏があるせいか)。鈍重なブルックナー演奏といえば、まずはロヴロ・フォン・マタチッチがチェコ・フィルを振ったときの録音が思い浮かぶけれど、マタチッチの豪快さ/野蛮さと違って、朝比奈の指揮はマイルドに重く素晴らしい。
こうした演奏を生で聴けなかったのは残念だったな……とちょっと寂しくもなりますね。自分もこの数ヶ月、在京オーケストラの演奏を聴きにいかなくなってしまったけれど、思い返せばローカルなところでこういう質の高い音楽が演奏されていたわけなのだよ……。
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