荒俣宏 『異都発掘: 新東京物語』

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異都発掘 新東京物語 (集英社文庫)
荒俣 宏
集英社
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荒俣先生が1985年から1987年ごろに雑誌に寄せた記事を集めた本を読み終える。テーマは東京に当時残されていた過去の遺物(異物)から、秘められた都市の姿を妄想・発掘しようというもの。都市の考古学的なレポートとでも言えるのだろうか。風水の知識を活用しながら東京の建物を評価する企画は『風水先生』とも似た内容になっているが、井上馨による進められるも実現しなかった東京改造計画や、築地本願寺に隠された南方ユートピア思想、あるいは貴族富豪の大邸宅を解放して作られた東京の宅地など、何重にも重ね塗りされた「別な東京」、「あったかもしれない東京」についてイメージを刺激してくれる素敵な本。

80年代中頃のCGで描かれたイメージ図は、なかなか寂しいものがあるが(スーパーファミコンの『スターフォックス』ぐらいのクオリティ)、それでもなお興味深く読めるのは、ひとえに言って荒俣先生の博学と妄想力のなせるわざか。記事が書かれた頃と今の東京ではまた違った風景になっているだろうが、それもまた、すでに失われてしまったものへの憧憬を掻きたてるのだった。とくに64ページに掲載されたお茶の水で、総武線・中央線・丸の内線の旧車両の姿は、ノスタルジーと異世界感とを同居させていて、都市の新陳代謝の速度について驚かざるをえない。

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