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学生時代に一冊も読めなかった洋書を会社員の俺がストレスなく読めるようになるまでの話

当ブログの過去ログを参照したところによれば、割とマジメに英語の勉強をはじめてから丸3年ぐらい経っていたし、インターネットの皆さんは英語の勉強法が好きらしいのでブログ記事にこれまで勉強してきたことをまとめておく。まずは、英語の勉強をはじめたときのわたしが立てた目標だけれど、

  1. 英語の原書(主に邦訳が高価、あるいは邦訳がない研究書)が読めるようになること
  2. できれば、英会話もできるようになりたい

……とこんな感じであった。なお、勉強の方針として「教材は『これ!』と決めたヤツをやりつくすまでやる」というポリシーを立てている。目標のうち、1つ目はほぼ達成できている、と言って良い(2つ目の目標は英語で人とコミュニケーションをとる機会が年に3回ぐらいしかないため、なかなか上達しない)。よって、以下の記述は「英語の研究書を読めるようになりたいが、なにから手をつけて良いかわからない(また、勉強にお金をかけられない)」という大学生などの参考になるかもしれない。

単語の勉強

英文を読もうとして「単語がわからないのでイチイチ辞書をひかなくてはならず、そのストレスで挫折する」というケースは多い(受験英語も怪しいのに、いきなり難しい原書に挑戦して死亡する、など)。よって、ある程度、基礎として単語は固めておいたほうが良い。教材はなんでも良いと思う。自分は学生時代にいきなり意識が高くなって「TOEICの勉強をするぞ!」と意気込んで買って、結局一切使わなかった『DUO 3.0』を使った。
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めちゃくちゃロングセラーな教材だけあって使い勝手は悪くない。掲載されている例文は560個あるが毎日20個ぐらい読んでいくとおよそ4週間で一周できる。これを単語カードなどを作りながら4周ぐらいやった。よくこの教材を使うときは「CDを使え!」という話を読むけれど、別に必須ではないと思う。自分の場合、CDを使うよりも目で読んで頭のなかで音を流すほうが効率が良かったので(一応、CDも買っていた)、ほとんど使わなかった。

発音のトレーニング

英語を読む力をつけるのに、発音もヒアリングも鍛える必要はない。しかし、「今更だけど『DUO』使って英語の勉強はじめたんですよ」という話をしていたら「幾ら例文集を聞いたり、自分で音読しても、発音が矯正されないかぎり、せっかくの音読も間違ったものになってしまうし、そして自分で発音できない音は、おそらく聞き分けることもできず、さらに言えば、正確に発することも聴き分けることもできない単語を幾ら覚えても実際使うことはできない」というアドヴァイスをいただいたので、以下の教材を使って、発音のトレーニングをおこなった。
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この教材は激烈にオススメ。英語の発音を子音と母音に分解して、かなりメカニカルなトレーニングが可能となり、また英語の発音記号も読めるようになる(英語の勉強をしていて、これは受験生時代に使っておくべきだった、と思った教材は唯一これだけ)。一通り読んだら、付属しているCDを聴きながら声に出して練習。1周が25分ほどあるので、かならず1日1セットおこなった。教材にはヒアリングのトレーニング方法(好きな英語の曲を決めて歌詞カードを見ながら300回聴け、とか書いてある。The Smithsを300回聴いた)もマジメにこなした。

実際に原書を読みはじめる

単語の暗記なんか面白い勉強ではないので、そういうのは短期集中でこなして、早いうちに英文を多読するモードに入っていったほうが良い。単語の暗記本だけやっても、例えば分野によって頻出する単語は違うし、そもそもテクニカル・タームなんか絶対英単語教材には載っていないので、実際に読みたい分野の本を読みながら覚えていくしかない。ただし、前述の通り、いきなり難しい本に挑戦すると死んでやる気を失くすので、簡単なもの、そしてある程度興味が持てるものから入っていく。自分は『くまのプーさん』を読んだ。
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児童書だろ、と思ってナメていても、最初はスラスラ読めなかった。まず、受験のときのように「後ろから訳していく」みたいなことをやっているといつまで経っても、読むスピードはあがらないから、それは禁じる。自分が理解できるスピードで前から読んでいくのに慣れていくことが重要と思われる。受験での長文問題みたいに制限時間はないので、じっくりやっても良い。これを繰り返していると、頭のなかで「英語 → 日本語 」の変換してから意味がやってくる読み方から「英語 → 意味」という読み方ができるようになる。
The Adventures of Tom Sawyer (Penguin Classics)
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『プーさん』のあとは「そうだ、せっかくだから米文学の古典も読んでみたい」と思って『トム・ソーヤーの冒険』を読んだ。これはちょっとした失敗事例として取り上げておく。南部訛りの音を会話文に落とし込んだりしている箇所がまず読めない。そもそも、多読の訓練教材に小説を選ぶのは微妙だと思った。自分の得意分野の英語論文だとか、淡々とした英文をたくさん読んだ方が良い気がする。とくに日本人が書いている英文は、難しくないのでたくさん読めて良い。

Kindle買え

ここから勉強法ではなく「英文を読むのに慣れてきたので、快適に読みたい」という人向けのお話。洋書を読むなら紙で読むより、Kindleで読む方が圧倒的に快適だ。知らない単語があったら、タッチするだけで意味がポップアップされる辞書機能が最高。読書スピードが向上するので、洋書はKindleでしか買いたくない。専門書もかなり電子化されているのでコンテンツにも困らない。
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2015.4.16 追記

初心者向けの英文読書練習用の教材としてNHKラジオ講座テキストの「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」はなかなか良さそう。簡単な英語でできた小話みたいなのが毎月何本か載っている。単語の意味は後ろのページにまとめて載っているので辞書を引く手間も省けてストレスが少ない。ストレスがあると勉強も続けるのが難しくなるので、こういうので数をこなして「読み通したぞ!」という自信をつけていくのが大事だと思う。Kindle版も出てるので便利。NHKの英語講座は(テレビもラジオも)内容も結構面白いし、ちゃんと受信料を払って活用すると良いと思う。

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