コルネーリウス・タキトゥス『ゲルマーニア』

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ゲルマーニア (岩波文庫 青 408-1)
コルネーリウス・タキトゥス
岩波書店
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 タキトゥスによる西暦九八年の書物。ローマ時代の歴史書のなかではカエサルの『ガリア戦記』と並ぶ書物、と言われるだけあって、かなり面白かった。『ガリア戦記』が書かれたのは紀元前五〇年代のことだから、おそよ一五〇年の差があるため「同時代の本」とは一概に言うことはできないけれども、当時の「異国情緒」に対する憧憬には共通するものがあるように思う。





 タキトゥスはゲルマーニー(ゲルマーニア地方に住む各種部族)のことを、基本的には「ローマとは比べ物にならないくらい野蛮で、劣ったもの」として描いているのだが、ある部分では「ゲルマーニーは、もしかしたら俺たちローマ人が忘れてしまったサムシングを持っているのかもしれない……」的に評価するところもある。例えば、ゲルマーニーの婚姻の風習について「ローマでは、婚姻が乱れきっていて、重婚なんかしほうだいだけれども、アイツらは基本的に一夫一妻制。その慎ましさがいいよねー」みたいに書いている。この意識が実に面白い。いつの時代も今あることを批判して、古きものを良しとする人はいたのだなぁ、と思ってゲラゲラ笑いながら読んだ。





 全体は二部に分かれており、前半はゲルマーニアの土地や習俗についての記述、後半はゲルマーニアに住む諸族についての詳細な記述となるが、断然面白いのが前半部分(後半も、ローマから距離が離れれば離れるほど、その部族についての説明が、抽象的なものとなり、スカンジナビア半島の諸族にいたれば、頭が人間だが体は獣の人が住んでいることになっているなど、最高)。ここにはローマ人たちが「高貴なる野蛮人」と評したゲルマーニーたちのおもしろおかしい風習の記述が満載である。





 例えば、彼らには新月のとき、あるいは満月のときに集会を開いて、会議や裁判をする、という決まりごとがあったらしい。しかし、そういう決まりごとがある、ということがわかっているにも関わらず、その決まった日に、彼らが集まることはない。そのため「第二日、あるいは第三日も、集まる彼らの躊躇のために費やされる」。どうやら、ゲルマーニーの人々は相当に気の長い人で、しかもすごくいい加減な人だったらしい。また、成年(=戦士)と認められた男子が公衆の面前に姿を見せる際は、いかなるときも剣や盾などの武装をフルに着用することがマナーであったそうである。飲み会のときも基本フル武装。時間にはルーズなのに、そういうところを守っていないとダメらしい。





 まぁ、今から一九〇〇年ほど前の民族について知ったところで、現実に役立つことなど一切ないのだが、最近はこういう本が一番安心して読んでいられる気がする。





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