はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
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デビッド・アレン
二見書房
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会社員として働きはじめてもう7年目に入ろうとしているところであり、そこそこ自分の仕事のスタイルだとか日々やらなくちゃいけない作業の管理などは自然と身についてしまっている。いまのやりかたに特別なストレスや問題を感じているわけではないのだが、ある日「Getting Thing Done(GTD)」というメソッドの存在を知る。それで、もしかしたら今のやり方よりも優れた方法があるのかも? と自分のスタイルを見直すために本書を手に取った。ちなみに著者のデビッド・アレンはGongの人とは別人である。
これはいわゆるライフハック本のひとつだ。普段そうしたジャンルの本を読んだりしないから、他の本と比べてどうかはわからない。でも、読んで思ったのは、これは大変な名著なのでは、ということ。ライフハック本というジャンルを超えて、読み物としても面白く読んだ。単純に優れたメソッドを紹介するだけではなく、人間の行動・意思決定プロセスをシステマティックに説明しているところが特に興味深かった。ちょうど並行して、二クラス・ルーマンの初期の著作『目的概念とシステム合理性』を読んでいたんだけれど、意思決定プロセスの説明におけるルーマンとアレンに重なる点をいくつか認められると思った。
なぜ、仕事がうまく進まないのか。あるいはどのように意思決定は「おこなわれない」のか。この理由を、両者はともに情報が複雑化しすぎているのだ、とする。やりたいこと、やるべきこと、やれること。職場においてもプライベートにおいても、行動の選択肢は無限のように存在する。やれることのなかには、やらなくてよいことも含まれるだろう。また、どのことから手をつけるのが正解なのか判断するのも悩ましい。時間がたつと、そのものの重要度が変化していったりするわけで、その都度、合理的に判断をおこなおうとしたら大変なストレスになるだろう。仮に仕事AとBとCがあったとして、それらを処理する順番によっても、その後の重要度が変わってくるかもしれない。それでは、いったい、いま、わたしはなにをやればよいのか。
こんなことを言い出すと意思決定など不可能に思われるのだが、そうではない。現に意思決定はおこなわれていて、ビュリダンのロバみたいに決定ができず死んでしまう人は見受けられない。どうやら、決定不可能にみえるものが、どのようにしてか決定可能となるプロセスがあるらしい。ルーマンは、この点をシステム論の言葉を借りながら説明している。たとえば、仕事に対してその目的が与えられる。目的が与えられれば、それに関係のない選択肢は、意味がないものとして中和化される。またシステムの外側にある複雑な環境を分化することも可能だ。世の中にはさまざまな市場があるけれど、それぞれがすべての仕事に関係するわけではない。「この市場の情報は俺には関係ないものだ」として、分化された環境が処理されることで、複雑性が縮減する。ルーマンはこうしたことを目的概念の機能だと言う。
こうした説明はとても当たり前のように見える。ただし、当たり前が可視化されることで、はじめて意識できることもあるだろう。自分の仕事がうまくいかないのはどこにコストが割かれているせいか、とか。アレンによるメソッドも、こうした可視化された当たり前のうえで機能する。目的にひもづいた作業をとにかく洗い出す。そして、それを参照しやすい、複雑でないモノに記録して管理する。作業が終わったら作業リストから削除していく。GTDの基本はこれだけ。重要なのは、行動決定のための情報をあらかじめ整理し、外側にまるごと委託管理することで「次になにをやればよいのか」を悩むコストを減らし、マシンのような逐次処理で済む環境を作ることだ。
本書のやり方を完璧にマネしなくても、自分のやり方で、望ましい環境へと辿りつけるなら問題ない。そうではなく「自分はどうしていっぱいいっぱいで仕事しているのだろう……」と悩んでいる人には一読をおすすめしたい。わたしの職場でもこれをプレゼントして反応を見てみたいメンバーが何人かいる。
目的概念とシステム合理性―社会システムにおける目的の機能について
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馬場 靖雄 上村 隆広 ニクラス・ルーマン Niklas Luhmann
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