そういう意味では、やや古くなっている印象は否めないし(とくに当時のワインの輸送技術に著者はかなり批判的で、白ワインの酸味が輸送中に台無しになってしまう、などと書いているのだが、このへんは今改善されているハズだ)、文体はかなり高踏的、かつペダンティック(そして、今のご時世、大学の先生がワイン道楽三昧などと口にするのも憚られるような空気感さえある)なのだが、レベルは違えど、同じワイン好きとして共感できる部分があり、大変面白く読んだ。
ぼく自身のワイン遍歴もブルゴーニュから始まった。/当時はボルドーのシャトー数があまりに多いと思っていたので、ボルドーよりもとりあえずブルゴーニュをアペラシオン(つまり村単位)で飲みだしたのだった。これなら二十ぐらいだから何とかなると思ったわけだ。
筆者はすぐに「ブルゴーニュはクリマ(区画化された畑)の単位で飲まないと味の違いはわからない」と気づかされるのだが「これなら二十ぐらいだから何となかる」という発想に「わかるッ」とうなづいた。「何とかなる」ってなんだよ、なにを「何とか」するんだよ、という話なのだが、シンプルな知的欲求がそこにはあるのだ。
取り上げられているワインと生産地は、ほぼフランス全域に及ぶ。ブルゴーニュやボルドー、シャンパーニュといった有名な場所だけでなく、南仏やアルザス、もちろん、各地の赤も白も網羅的だ。著者は本書刊行後、フランスのワイン史に関する本をいくつか翻訳している。こちらもチェックしたい。
ロジェ・ディオン
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