伊丹十三 『フランス料理を私と』

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フランス料理を私と
フランス料理を私と
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伊丹 十三
文藝春秋
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伊丹十三が辻調の先生に教わりながら本格フランス料理を作って、日本の著名な知識人に振る舞い、対談する……という伝説的な本。Amazonのレビューにも「絶版はもったいない」とあるが、本当にそう。料理写真は全編カラーという豪華さがネックになっているのだろうか、1987年の本なのだが、20年以上経過しても「伊丹十三、早すぎるだろ!」と永遠の時代先走り感を醸し出している。盛り付けの写真などは昔っぽくてあんまり美味しそうに見えないのだけれども、作っているものの「本格具合」が今の『dancyu』以上のスゴさだ。食材もフランスから取り寄せたものを使っているし、その点まったく「使えない料理本」ではあるのだが、耳学問としては大変タメになる。ドレッシングにしてもフランボワーズ酢に、コーン・オイルにくるみオイルを使って作ったりして。2015年現在でも、フランボワーズ酢やくるみオイルなんか売っているのをみたことがないわたしとしては、伊丹十三がどんな世界を見ていたのかが恐ろしくなる。

登場する対談相手は、今となっては「誰これ……」という人が多く、今もよく聞くような名前というと蓮實重彦、槇文彦ぐらいしか生き残ってない感じがある。精神分析や文化人類学の用語や、ロラン・バルトやミシェル・フーコー、イワン・イリイチといった固有名詞が飛び交っているのにも、まあ、時代を感じる、というか、ニュー・アカデミズムの空気感を感じるんだけれども、それ以上に興味深いのは、伊丹十三が対談相手と写っている写真だった。これ、毎回対談相手の自宅に行っているようなのだが、キッチンにしてもダイニングにしてもリヴィングにしても、そこに写っている家具が、もうめちゃくちゃ時代がかっていて、言ってしまえば、思想や料理なんかよりもずっと古臭いのね。当時、最先端の知識人たちでしょう。ひとりぐらい古臭くないセンスの家ががあっても良いと思うんだけど、エヴァーグリーンなのは伊丹十三だけ。そこもまた恐ろしいんだ。

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