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エロ音楽師たち……。




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 少し筆の勢いが余りすぎて、ながながと小難しいエントリを書きすぎてしまったので、下のエントリを書きながら聴いていたアストル・ピアソラの動画でも紹介してお茶を濁しておきます。ここ10年ほどの間に、ヨーヨー・マやギドン・クレーメルなどによって取り上げられたこともあり、ピアソラの人気はかなり高いものになっております。「アルゼンチン=タンゴ=ピアソラ」というイメージは、ハードコアなアルゼンチン音楽ファンからすれば怒髪天モノらしいのですが、やはり素晴らしい。タンゴの発祥は「飲み屋でお姉ちゃんとダンス兼ペッティングするときの伴奏音楽」らしいのですが、その起源どおり、こんなにエロい音楽は世界的に考えても稀でしょう。



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 ピアソラのバンドで私がもっとも好きなのは、ヴァイオリンのパートです。こういうカサカサとした木片を擦りあわせたような太い音はクラシックの世界ではまず聴けません。弦楽器には女性のイメージが与えられているそうですが、このヴァイオリンの音色を女性に喩えるならば確実に熟女です。それも少しだらしない感じで肉がついちゃってる淫靡さを持つ40代……といった感じでしょうか。一度で良いからそんな女性に暗がりで「ボウヤ……」って呼ばれてみたい。実際に演奏している人はガウチョ臭のするオッサンなのですが……。



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 日本人バンドネオン演奏家、小松亮太も人気が高いですが、やや淫靡さに欠けますね。清潔感があるピアソラなんかピアソラじゃないよ……とか思ったりするんですが、これはこれでカッコ良い。



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