メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番

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メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(DVD付)
ムター(アンネ=ゾフィー)
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 ヴァイオリン奏者のアンネ=ゾフィー・ムターの新譜はメンデルスゾーン生誕200周年にあわせたリリースとなっており、ヴァイオリン協奏曲の再録とピアノ三重奏曲第1番とヴァイオリン・ソナタが収録されたアルバムとなっている。正直、ヴァイオリン協奏曲のほうは名演奏だといえるものを何枚かもっているので今更食指が動かないのだが、リン・ハレル(チェロ)とアンドレ・プレヴィン(ピアノ。ムターの元夫)と組んだピアノ三重奏曲の演奏はとても良かった。





 かつて宇野功芳という音楽評論家がオットー・クレンペラーの演奏を「情熱の凍りづけ」と評したが、この言葉はムターの演奏にもあてはめられる気がする。彼女の演奏はつねに自然な音楽の流れから、大きくブレることはなく、大袈裟なルバートなどは存在しない。このあたりはとてもクールで厳格な様子さえある。しかし、それは単なる外側の殻に過ぎず、内側にはものすごい熱がこもっているように感じられるのだ。それは細やかな音の処理や、音量のダイナミクスの落差、それから激しいヴィブラートによって発露される。叙情的な美しい旋律がたくさん織り込まれたメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番はこれを堪能するためにあつらえ向きな作品であろう。リン・ハレルのチェロも素晴らしいし、それからアンドレ・プレヴィンの端正なピアノにも好感が持てる。プレヴィンは指揮のときでもそうだが、伴奏的な仕事をやらせると本当に素晴らしい仕事をする。


D*1


 個人的な思い出話になってしまうけれど、私はこの作品を大学のオーケストラの納会で2つ上の先輩が演奏しているので初めて聞いた。この演奏がとても印象的であったためか、この作品を聴くたびに「青春の音楽」という感じがする。メンデルスゾーンがこれを書いたのは30歳のときで、彼は38歳で亡くなったため、これはもう晩年の作品といっても過言ではないのだが。


D*2


 件のムターの新譜の話にもどると、これにはライヴ演奏やインタビューを収めたDVDもついてきて、このために4000円近い昨今のクラシックのCDにおける価格破壊とは真逆をいく値段となっている。配信との差別化を図るための戦略なのかもしれないが、これはちょっといただけないと思う。そのうちDVDなし盤が発売されたら良いのだが、こんな値段だったら本当に熱心なムターのファンぐらいしかレジに運ばない気がする。というわけで、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番が収録されたアルバムで、値段の安いものをあげておく。



メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲
ファ(チョン・キョン),トルトゥリエ(ポール) プレヴィン(アンドレ)
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 奇しくもここでもピアノがアンドレ・プレヴィンとなっているのだが、チョン・キョンファとポール・トルトゥリエによる演奏も素晴らしい。この演奏ではトルトゥリエが主体となって全体的な音楽のまとまりを作り出し(なのでチョン・キョンファの燃えるようなヴァイオリンも控えめ)、品の良さと懐の深さが感動的である。




*1:ピアノ三重奏曲第1番。第1楽章。演奏はN響コンサートマスターの篠崎史紀、チェロ首席の木越洋、ピアノはロー磨秀


*2:第4楽章





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