ヒトラーと第三帝国 (地図で読む世界の歴史)posted with amazlet at 11.02.24リチャード オウヴァリー
河出書房新社
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歴史全般について興味をもち始めている今日この頃、ふと思うのは「どうして歴史の教科書はあんなにつまらなかったのだろう?」ということで、昨年は山川の歴史教科書を大人向けに書き直したモノがよく売れていたらしく、実際私も世界史版を購入したのだけれども読みきれないほど退屈だった(あれを平気で読める人は、よっぽど普段退屈な本を読んでいるに違いない)。なんというか平坦な流れしか書いていない歴史記述は、毒にも薬にもならない。自分が高校生の頃、世界史が好きだったのはやっぱり先生がとてもいい先生だったことが一番大きいのだと思う。雑談が多くて、やたらと雑学を話に盛り込んでくる先生がいて、あれは聞いていて楽しかった。あと、世界史の資料集が面白かったからなのだと思う――授業中先生の話を聞くのに飽きると、資料集を読んで過ごしていた人~、手を上げて~(ハイ!)
で、濃い目の雑学っぽい知識がふんだんに盛り込んであって、かつ、資料集っぽい本があったならそれって歴史本として自分的に最強なんじゃないの? とか思っていたのだが、あったね。河出書房新社の「地図で読む世界の歴史」シリーズ。これ、最強。まず手始めに『ヒトラーと第三帝国』から読んでみたんだけど面白い!
地図は、第二次世界大戦の戦線がどのように拡大していったか~、など書名から当然期待されるものはバッチリおさえられているのはもちろん、第一次世界大戦直後の経済混乱で反ユダヤ的機運が高まってドイツ各地でユダヤ人を虐待したり、シナゴーグを破壊されたその場所、ヒトラー率いるナチ党が各地でどのように支持率をあげていったかの変遷、そして各地でバカ勝ちしていたころの第三帝国の理想主義者たちが掲げた《新秩序》構想……などなど大変幅広く、どれも面白い。これらの資料を読んでると「反ユダヤ主義ってすごく根深くて、なんか不満が高まるとそのはけ口がユダヤ人に向う、っていう流れがずーっとあったんだな」とか思うし(だからユダヤ人の存在は『社会問題』扱いだったのだよね)、《新秩序》構想の壮大さ(ヨーロッパ全土に鉄道網を敷設する、とか、でっかい運河を作ってオーダー川とエルベ川とドナウ川をつなぐ、とか)は工業ユートピアな感じを想起させる。
統計資料では、第二次大戦中のドイツ人の摂取カロリーの表がベストヒットでした。これはもうすごい。戦争が敗色濃厚になっていくとどんどん摂取カロリーが下がっていき、終戦直前は一日に1500kcalぐらいしか食べてない(これは成人男性の一般的な基礎代謝量をごはん1膳分ぐらい下回る)。いや~、そんな風になったら戦意もなくなるよな……。著者のリチャード・オウヴァリーはイギリスの現代史学者で、第三帝国時代のドイツ史の専門家。ここで彼が用いている地図や統計資料は、歴史記述をとても生き生きとしたものとして読ませてくれる。こういう類の本は「歴史=受験で使うもの」的な固定観念を解体してくれるのかもしれない。「地図で読む世界の歴史」シリーズ、他のものも読んでみたい。
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