松平敬/トマス・タリス:40声のモテット《スペム・イン・アリウム》

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松平敬「タリス:40声のモテット (一人の歌手による多重録音)」(iTunes Music Store)


 昨年発表された一人多重録音による無伴奏合唱曲集『MONO=POLI』が記憶に新しい、松平敬の新譜がiTunes Music Storeで配信されています。今回はトマス・タリスの《スペム・イン・アリウム(御身よりほかにわれはなし)》。タリスは16世紀イングランドの作曲家であり、この作品は彼が書いた40もの声部を用いた合唱曲です。松平は今回の録音でもこの作品を一人多重録音にてレコーディングしています。この作品については数年前、都内のギャラリーで40個のスピーカーのひとつひとつから各声部を再生し、マルチ・サラウンド環境にて作品の鑑賞をおこなうというインスタレーションがおこなわれていました。残念ながらその展示は見にいけなかったのですが、それからずっと気になっていた作品だったので、松平の新譜がでたことで念願かなって聴ける機会を得た、という気分です(もちろん、これまでに録音がなかった曲ではないのですが……しかし、一人多重録音によるものはこれが初めてでしょう)。





 しかし、これはとんでもない作品です。編成の大きさが否が応でも醸し出す荘厳なイキフンと長い残響に痺れてしまう。もともとルネサンス音楽に詳しいわけではないので和声感が斬新に聞こえる瞬間があるのも楽しい。バロック音楽とはまったく違ったすごい世界観が、16世紀には鳴り響いていたんだなあ、という感慨も強くあります。この録音を聴いて、40個のスピーカーを使ったインスタレーションを体験できなかったことが一層悔やまれるようにも思いました。なお、iTMS以外の高音質音源配信サイトでは、各声部のミックス前音源が非圧縮形式で配信されるそうです。つまりこの音源を使えば自分でミックスも可能ですし、40個のスピーカーを使ったインスタレーションの再現も可能、ということでしょう。iTMS版には全40声部の通常音源のほかに、声部を8つのグループにわけてミックスした音源も収録されています。この特異な音響世界が、どのように構成されているのか。その仕組みは、こうした解剖学的な(?)音源を聴くと理解できるかもしれません。





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