新版暗号技術入門 秘密の国のアリスposted with amazlet at 11.02.18結城 浩
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昨年の秋ごろに、情報セキュリティスペシャリストという資格を受けていた。結果は不合格。結構勉強していたし、手ごたえも感じていたのに、全然惜しくもなんともなく落ちていた。それが悔しかったので春にまたリベンジ・マッチをかけようと基礎がための意味で『暗号技術入門』を手にとった。著者は最近は『数学ガール』でも注目を浴びている結城浩。副題には「不思議の国のアリス」とあるが、このへんのキャッチーなネーミングが上手い。
内容は通読できる暗号技術の概説書という感じ。残念ながらこれは私が求めていたものではなかった。この程度なら情報セキュリティスペシャリストの資格の勉強をしているうちに自然と覚えることがらだろう。資格的には、基本情報処理技術者、応用情報処理技術者にチャレンジする人のうち、公開鍵暗号方式やディジタル署名の仕組みがどうしてもわからない! ぐらいのレベルの人にはおすすめかもしれない。情報処理資格の勉強をしていると「この技術ってなんのためにあるの?」と根本的な疑問を抱いてしまうことがあるけれど、そうした問いを具体的なイメージを与えて解決してくれる、という側面は文系大学卒でなんとなくシステムの会社に入った人(私もそのひとりだが)にはありがたいはずだ。
というわけで資格の勉強的にはイマイチ身にならなかったのだがつまらない本ではなかった。情報システムに関わる人以外に、セキュアな通信はどのようにおこなわれているの? なんてことに興味を抱く人はあまりいないだろうが、昨今ではインターネットを使う誰もがこうした技術の恩恵にあずかっているのだ。そうした環境において本書で得られる知識は、専門知識ではなく教養として受け取られても良いと思う。まあ、そうした技術について知らなくてもインターネットができてしまう、という状況はこのメディアが「当たり前のもの」として社会に浸透した、という事実を端的に示してもいるのだが。
あと参考文献には山形浩生の翻訳書が二冊。IT系翻訳もやっていることはもちろん知っていたけれど、こんな仕事もしてたんですね……とこの人のカバーしている領域の広さに敬服したくなるのだった。
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